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第3章 聖戦
1.知らない過去
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「ユウト様いいんです。警戒心があるのは良いことですし、私の娘を守ろうとしてくださったのですもの。感謝こそすれ…えぇ」
アンナはひたすら間違いを詫びる僕にそう告げるとヨロヨロと部屋を出ていってしまった。
本当に申し訳ないことをしたけれど、アンナとメイが親子だなんて思いもよらなかったのだ。
「メイどうしよう。アンナさん、ショック受けてたよね」
「あはは。ユウト様気にしなくていいですよ!母には良い薬です」
「でもさ、何でメイはお粥を食べなかったの?」
「人参…嫌いなんですよねぇ。子供の時からどうしてもダメで大人になっても克服出来なかったんですよ」
「そ、そんな理由?全然話さなかったのは?」
「私と母はいつもあんな感じです。私が女騎士になった事がいまだに気に入らないんですよ」
「そうなんだ」
ユウトは脱力した。
犯人かも知れないと疑っていた事柄が全て親子喧嘩の延長だったとは。
「ユウト様、すみません。伝えておけば良かったですね。リオルド様から聞いているかと思ってました」
「ん?リオルドから?どうして」
「え、だって母はリオルド様の乳母だったんです。リオルド様の母上レティ様は早くにお亡くなりになったので、サニー様が嫁がれるまで母がリオルド様の母親代わりみたいなものだったんですよ」
ーーーそっか。だからアンナさんやメイは使用人なのに他の人のようにリオルドを恐れていないんだ。
レティが亡くなった後幼いリオルドは孤独だったのでは無いかと想像していたが、魔女とも交流がありアンナやメイも側にいたと知りユウトは少し安心した。
「私は一時期リオルド様と姉と弟のように育ったんです。母は当時メイド兼乳母でしたから忙しくて…私は弟が出来たみたいで嬉しくて色々付いていきましたね。剣の練習とか」
メイが舌を出しておどけた。
なるほど剣の練習に付いていく内に自分も剣を扱うようになり女騎士になったのか。
気付いたら自分の娘が剣を振り回していたのか。アンナさんの気持ちを考えると複雑なものがある。
「元々はね、あんな人じゃないんです。昔から生真面目ですけどね…もっと笑ったり感情を出す人でしたよ。王子の乳母になり、大出世してメイド長まで登り詰めたので。他の使用人に舐められない為にはあのスタイルが一番いいと判断したみたいですね。それがすっかり板についちゃって今や鉄のメイド長ですよ」
「そっか、アンナさんはアンナさんで大変なんだね。僕も実は初対面は怖かったんだ。えへっ」
「そうでしょう?まぁ、城の執事も中々決まらなかったり決めてもすぐ辞めたりで、母がその業務を代行することもあるので、威厳とかとにかく大事にしてるみたいです」
ーーーそんなに王家に貢献してる人に疑いをかけるなんて、本当にとんでもないことをしてしまったぞ。
「今度お詫びの品をあげようかな…」
「えぇ?いりませんよ。大ショックは受けてましたけどすぐ持ち直しますって!気にしなくていいですよ」
「メイは娘だから…あ、ところで1つ聞いてもいいかな?」
「はい」
「最初に怖いと思ったのはアンナさんのクリスへの対応を見たからなんだ」
「えぇ、わかります。あれは不思議ですよね」
「クリスにはあたりが強いよね?」
「うーん。最初はそんな事無かったんですよ。クリス様はあの通り明るくて爽やかな方ですし使用人にも好かれてます。母との関係も良好でした。多分1年くらい前からかなぁ?」
「一年前?」
「はい、ちょうどリオルド様にも誰かお相手を…という話が出る少し前くらいから母はクリス様に冷たくなりました。リオルド様はそのう…クリス様が結婚されてからもクリス様への態度は特別なものだったと思います…」
メイが言いにくそうにしている。
僕と結婚する前のリオルドとクリスはそれほどに使用人から見ても仲が良いでは済まされない何かがあったのだろうか。
「メイ、僕は真実が知りたいよ。気にせずに話して」
「はい…。リオルド様はクリス様が結婚されてからも冗談めかして口説いたり誕生日などは贈り物をされていました。王や王妃は何度も注意していましたが効力は無く…。クリス様も上手く交わすだけではっきりと拒絶をした事は無かったです。アーノルド様が何を考えていたのかは良くわかりません…」
ふーん。
この前はとうの昔にクリスの事は諦めたような口振りだったけど1年前まではクリスをかなり好きだったようだ。
しかも平行して未亡人とも遊んでいたんだな。
「うん、それで?」
「1年前に王の方からリオルド様も結婚するように強く言われました。王族の結婚適齢期も過ぎていましたし…。そのあたりからですね、母がクリス様に冷たくなったのは」
「リオルドの結婚の妨げになると思ったのかな?」
「それもあると思いますが…。あの人は鼻が効くんです。私からはこれ以上は言えません。もしだったらリオルド様に聞くのが良いかと思います」
「リオルドに?」
ユウトは驚いた。
どうやらアンナがクリスに冷たいのは何かがあった訳では無くアンナの第六感が働いた結果のようだ。
だが、リオルドの直属の部下であるメイはその理由に見当がついており、その理由も自己判断で話せる内容では無いのでリオルドに聞いてほしいと言う。
「そっか、メイに色々聞いてごめんね。話ずらかったよね。今度リオルドに直接聞いてみるよ」
「あの、でも、リオルド様は本当にユウト様を好いていらっしゃいます!過去の事は過去、なので」
「うん、メイ分かったよ。まだ体が弱ってるんだから休んで、ね?」
ーーーそんなに必死にフォローしなきゃいけないような何かが二人の間にあるのか?
ユウトは今までクリスの件は所詮リオルドの横恋慕なのだと思っていた。
それこそがユウトの勘違いだったのだろうか。
ーーーコンコン
ドアをノックする音と共に「俺だ」というリオルドの声が扉越しに聞こえた。
アンナの時と同じようにユウトがドアを開けると、リオルドが「ユウト待たせたな」と言って柔く笑った。
ユウトも微笑み返したつもりだが顔がひきつっていたのかもしれない。リオルドは不思議そうに首を傾げてから部屋の中に入ってきた。
「ユウト、メイよく聞いてくれ。メイに毒を盛った犯人が発見された」
「えっ」
ユウトは驚き、メイも手で口を覆っている。
「誰なの?」
「ローゼマリー・ダンテが自ら服毒して死んでいるのが発見された。遺書があり自分が犯人だと…筆跡は間違いないらしい」
「ローゼマリーさんが…」
「ただ、おかしな点もある。これから応接間にて王から話がある。本来はメイにも聞いてほしいが今は療養が先だ。後でクロードが説明に来る」
ーーーローゼマリー、魅惑的なダンテ公爵家の未亡人。
舞踏会で僕に絡んできた人であり、リオルドの元愛人。あのローゼマリーが??
「ユウトはすぐに一緒に来てくれ。皆急いで集まっている」
「うん、わかった。じゃあ、メイまたね」
「ユウト様、くれぐれもお気をつけて」
リオルドの後ろを歩いていると廊下の向こう側からアンナがワゴンを押してこちらに向かってきた。
すれ違う時アンナは二人に頭を下げた。
リオルドはそのまま通過したが、ユウトは先程の事が頭をよぎりペコリと頭を下げた。
アンナが運ぶワゴンにはまたフードカバーの被せられた食器が置かれていた。
人参がどうしても食べれない娘の為に粥を作り直したのだろう。
2人は喧嘩ばかりしているが娘は母を良く理解しているし、母もまた娘を心配しているのだ。
喧嘩すら出来ない関係の方が余程脆いのかもしれない。
そんな事を考えながら足早に歩くリオルドの後ろ姿を見つめていた。
アンナはひたすら間違いを詫びる僕にそう告げるとヨロヨロと部屋を出ていってしまった。
本当に申し訳ないことをしたけれど、アンナとメイが親子だなんて思いもよらなかったのだ。
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「あはは。ユウト様気にしなくていいですよ!母には良い薬です」
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「人参…嫌いなんですよねぇ。子供の時からどうしてもダメで大人になっても克服出来なかったんですよ」
「そ、そんな理由?全然話さなかったのは?」
「私と母はいつもあんな感じです。私が女騎士になった事がいまだに気に入らないんですよ」
「そうなんだ」
ユウトは脱力した。
犯人かも知れないと疑っていた事柄が全て親子喧嘩の延長だったとは。
「ユウト様、すみません。伝えておけば良かったですね。リオルド様から聞いているかと思ってました」
「ん?リオルドから?どうして」
「え、だって母はリオルド様の乳母だったんです。リオルド様の母上レティ様は早くにお亡くなりになったので、サニー様が嫁がれるまで母がリオルド様の母親代わりみたいなものだったんですよ」
ーーーそっか。だからアンナさんやメイは使用人なのに他の人のようにリオルドを恐れていないんだ。
レティが亡くなった後幼いリオルドは孤独だったのでは無いかと想像していたが、魔女とも交流がありアンナやメイも側にいたと知りユウトは少し安心した。
「私は一時期リオルド様と姉と弟のように育ったんです。母は当時メイド兼乳母でしたから忙しくて…私は弟が出来たみたいで嬉しくて色々付いていきましたね。剣の練習とか」
メイが舌を出しておどけた。
なるほど剣の練習に付いていく内に自分も剣を扱うようになり女騎士になったのか。
気付いたら自分の娘が剣を振り回していたのか。アンナさんの気持ちを考えると複雑なものがある。
「元々はね、あんな人じゃないんです。昔から生真面目ですけどね…もっと笑ったり感情を出す人でしたよ。王子の乳母になり、大出世してメイド長まで登り詰めたので。他の使用人に舐められない為にはあのスタイルが一番いいと判断したみたいですね。それがすっかり板についちゃって今や鉄のメイド長ですよ」
「そっか、アンナさんはアンナさんで大変なんだね。僕も実は初対面は怖かったんだ。えへっ」
「そうでしょう?まぁ、城の執事も中々決まらなかったり決めてもすぐ辞めたりで、母がその業務を代行することもあるので、威厳とかとにかく大事にしてるみたいです」
ーーーそんなに王家に貢献してる人に疑いをかけるなんて、本当にとんでもないことをしてしまったぞ。
「今度お詫びの品をあげようかな…」
「えぇ?いりませんよ。大ショックは受けてましたけどすぐ持ち直しますって!気にしなくていいですよ」
「メイは娘だから…あ、ところで1つ聞いてもいいかな?」
「はい」
「最初に怖いと思ったのはアンナさんのクリスへの対応を見たからなんだ」
「えぇ、わかります。あれは不思議ですよね」
「クリスにはあたりが強いよね?」
「うーん。最初はそんな事無かったんですよ。クリス様はあの通り明るくて爽やかな方ですし使用人にも好かれてます。母との関係も良好でした。多分1年くらい前からかなぁ?」
「一年前?」
「はい、ちょうどリオルド様にも誰かお相手を…という話が出る少し前くらいから母はクリス様に冷たくなりました。リオルド様はそのう…クリス様が結婚されてからもクリス様への態度は特別なものだったと思います…」
メイが言いにくそうにしている。
僕と結婚する前のリオルドとクリスはそれほどに使用人から見ても仲が良いでは済まされない何かがあったのだろうか。
「メイ、僕は真実が知りたいよ。気にせずに話して」
「はい…。リオルド様はクリス様が結婚されてからも冗談めかして口説いたり誕生日などは贈り物をされていました。王や王妃は何度も注意していましたが効力は無く…。クリス様も上手く交わすだけではっきりと拒絶をした事は無かったです。アーノルド様が何を考えていたのかは良くわかりません…」
ふーん。
この前はとうの昔にクリスの事は諦めたような口振りだったけど1年前まではクリスをかなり好きだったようだ。
しかも平行して未亡人とも遊んでいたんだな。
「うん、それで?」
「1年前に王の方からリオルド様も結婚するように強く言われました。王族の結婚適齢期も過ぎていましたし…。そのあたりからですね、母がクリス様に冷たくなったのは」
「リオルドの結婚の妨げになると思ったのかな?」
「それもあると思いますが…。あの人は鼻が効くんです。私からはこれ以上は言えません。もしだったらリオルド様に聞くのが良いかと思います」
「リオルドに?」
ユウトは驚いた。
どうやらアンナがクリスに冷たいのは何かがあった訳では無くアンナの第六感が働いた結果のようだ。
だが、リオルドの直属の部下であるメイはその理由に見当がついており、その理由も自己判断で話せる内容では無いのでリオルドに聞いてほしいと言う。
「そっか、メイに色々聞いてごめんね。話ずらかったよね。今度リオルドに直接聞いてみるよ」
「あの、でも、リオルド様は本当にユウト様を好いていらっしゃいます!過去の事は過去、なので」
「うん、メイ分かったよ。まだ体が弱ってるんだから休んで、ね?」
ーーーそんなに必死にフォローしなきゃいけないような何かが二人の間にあるのか?
ユウトは今までクリスの件は所詮リオルドの横恋慕なのだと思っていた。
それこそがユウトの勘違いだったのだろうか。
ーーーコンコン
ドアをノックする音と共に「俺だ」というリオルドの声が扉越しに聞こえた。
アンナの時と同じようにユウトがドアを開けると、リオルドが「ユウト待たせたな」と言って柔く笑った。
ユウトも微笑み返したつもりだが顔がひきつっていたのかもしれない。リオルドは不思議そうに首を傾げてから部屋の中に入ってきた。
「ユウト、メイよく聞いてくれ。メイに毒を盛った犯人が発見された」
「えっ」
ユウトは驚き、メイも手で口を覆っている。
「誰なの?」
「ローゼマリー・ダンテが自ら服毒して死んでいるのが発見された。遺書があり自分が犯人だと…筆跡は間違いないらしい」
「ローゼマリーさんが…」
「ただ、おかしな点もある。これから応接間にて王から話がある。本来はメイにも聞いてほしいが今は療養が先だ。後でクロードが説明に来る」
ーーーローゼマリー、魅惑的なダンテ公爵家の未亡人。
舞踏会で僕に絡んできた人であり、リオルドの元愛人。あのローゼマリーが??
「ユウトはすぐに一緒に来てくれ。皆急いで集まっている」
「うん、わかった。じゃあ、メイまたね」
「ユウト様、くれぐれもお気をつけて」
リオルドの後ろを歩いていると廊下の向こう側からアンナがワゴンを押してこちらに向かってきた。
すれ違う時アンナは二人に頭を下げた。
リオルドはそのまま通過したが、ユウトは先程の事が頭をよぎりペコリと頭を下げた。
アンナが運ぶワゴンにはまたフードカバーの被せられた食器が置かれていた。
人参がどうしても食べれない娘の為に粥を作り直したのだろう。
2人は喧嘩ばかりしているが娘は母を良く理解しているし、母もまた娘を心配しているのだ。
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