【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです

早奈恵

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舞台裏

断てない想い〈クラウンside〉

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 私は今、混乱している。

 あのパーティーの日の出来事を私はまだ受け入れられない。



 ルーザリアが罪を犯していた?

 嘘だ……。

 そんな事を信じろと言われても簡単には無理だ。



 母上には何度も掛け合ったが、彼女と面会は許可できないと言われた。

 フールとルーザリアが結託して、私を王太子の座から引きずり落とそうとしているなどあり得ない。

 なぜならルーザリアは王太子妃として私と共に、下町で貧困に喘ぐ人々により良い暮らしをと……それを実現したいと言っていた。

 そう言ったら、母上は鼻でわらった。



「あの娘の言葉を鵜呑うのみになどするから、苦労して婚約させたグレイシアに逃げられるのです」

「何をおっしゃるのですか? あれは私が婚約破棄したのであって、逃げられたのでも捨てられたのでもありません」


 大体、何だって私がルーザリアをいじめていた女と結婚しなければならないのだ。

 あんなに可愛らしい女性に、平気で酷い仕打ちができるような冷血女など、本来なら投獄して鞭打つくらいはしても良いところだ。

 それをパール侯爵やフォックス公爵を離反りはんさせないために、何もとがめられないとは口惜くちおしい……。



「クラウン……。分かっていると思いますが、今回の事はおおやけになりません」

「……はい」

「あなたとあの準男爵の娘が恋人のように振る舞っていたことも、あの場でグレイシアに婚約破棄を言い渡したことも──すべてがおとり捜査の一環であると発表されています」

「…………」



 母上は返事がない事が不服そうな、恨みがましい目でこちらを見てきた。



「それから。グレイシアとの婚約解消は、時期を見計らって公示こうじしますから、それまでは口外しないようにね?」

「はい……」



 母上は重々しく頷いた。

 今日の所はこれ以上話しても無駄か……。



「最後に。あなたの新しい婚約者はもう既に選定済みです。今は訳あってどなたか明かせないけれど、そう遠くない内にヴィクターとグレイシアの婚約と共に発表します」

「は!? 新しい婚約者!? ヴィクターとグレイシアが婚約?」

「そうです。あなたはヴィクターに感謝しなくてはいけませんよ? この事以外にも、あの子に助けてもらう事がたくさんありますから……」

「それより、新しい婚約者とは……?」

「当たり前でしょう。まさかあの準男爵の娘風情を妃にできると思ったのですか?」

「いえ、あの、それは……」

「先日までなら、グレイシアが許すなら、あの子を公妾こうしょうにとも思ったのですが……それもあなたの無謀なおこないで完全に選択肢から消えました」

「そんな……」

「それに調査の内容を見るに、どの道公妾こうしょうにもなれないくらいの品格だったようだけれど……」

「母上、それは言い過ぎでは?」



 思わず声を荒げてしまってまずいと思う。

 母上を怒らせ過ぎたと後悔した。



「とにかく! あの娘の事はもう忘れなさい」



 こうなったら交渉はもう無理だ。

 でも、素直に『はい』とは言えなかった。



「せめて、もう一度だけでも会わせてください」

「あの娘はあなたの他にも、懇意にしていた男性が複数いたのですよ? 証拠もあります。それでも信じられないのですか?」



 その調査書には目を通したが、やはり現実味が無く、私には受け入れられないものだった。

 覇気はきなく母上の向かいに腰掛け黙り込んでいると、母上は何やら急ぎの手紙に目を通していた。

 俯いたままチラリと見られ、何だろうと私は首を傾げる。



「……一度だけ。そう約束できますか?」

「え?」

「ここに、貴族議員の一人からルーザリアへの面会許可を求める手紙が来ています」

「誰ですか?」

「バスタード伯爵よ」

「バスタード伯爵……彼女からは聞いた事がない名前です」

「多分、彼女の父親の関係者でしょう」



 何となく腑に落ちないが、母上の言った一度だけの面会のほうが重要だ。



「それで?」

「彼の面会の立会人という立場でなら、彼女に会う事を許可します」

「本当ですか!?」

「ですが、伯爵の邪魔をしてはいけませんよ?」

「はい、感謝します母上」


 私はやっと、ルーザリアに会える事になった。
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