【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです

早奈恵

文字の大きさ
37 / 42
舞台裏

姫君の肖像〈王妃side〉

しおりを挟む
 クラウンの婚約者の事も、第二王子派の動きもひと段落。

 まだ不穏分子の洗い出しは続いていたけれど、今現在私ができることは無くやっと一息ける。

 そんな平和な午後のことだった。



「王妃殿下、マイティー様の姿絵が到着致しました」

「あら、楽しみにしていたの。早くこっちに持っていらっしゃい」



 現在は隣国の王宮に住まうマイティー殿下。

 その肖像画を待ち兼ねていた私は機嫌よくそう言った。

 殿下の母であるコンシール侯爵令嬢とは面識はなかったが、殿下の祖母コンシール夫人は典型的な美人だし、コンシール侯爵と隣国の国王もそこそこ悪くない顔立ちだ。

 きっと殿下も凛とした美人だろうと、私はワクワクしていた。



「こちらでございます」



 目の前に大きな絵画が運ばれ、静々と布が取り払われる。

 そして私は固まった。



「こ、この御方おかたが……マイティー殿下……?」

「……左様でございます」



 目眩がした。

 いや、決してブスでもデブでも無い。

 人の美醜という点では何ら問題は見当たらない。



 きらめく蜂蜜色の金髪。

 海のような青緑色の瞳は切れ長の三白眼さんぱくがん



 何と言うか……中性的?



 凛々りりしくキリリと直線的な眉。

 鼻は高く、形は良いが存在感がある。

 面長おもながで細っそりとした頬。

 何でもよく噛めそうなアゴ。

 細く弧を描いた唇。

 楽器演奏向きな大きな手に長い指。



 どう考えても手にしたカップが小振りに見える。

 ソファーのサイズにも違和感が……。

 遠近法?

 いや、違うと思う。

 ハッキリ言えば……。



 雄々おおしい……。



 きっと女性にモテるだろう。

 彼女を男装させて二人を並べたら……。

 息子にあらぬ噂が流れそうで怖くなる。

 確実に受けはクラウンだ。



 しかも彼女は護身術の腕も良いらしい。

 私にはマイティー妃の尻に敷かれる我が子の姿が見えた。

 物理的に……。



「クラウン……ごめんなさい……母を許して……」



 グレイシアを捨ててルーザリアを好んだクラウンだ。

 きっと彼の好みは、小柄で可憐で儚げで……。

 守ってあげたくなるような美少女だろう。

 決して女騎士のほうが似合いそうな、守ってくれるタイプでは無いはずだ。

 クラウンが国王として求められる仕事は唯一、妃と世継ぎを作る事だけなのに……。



「そうだわ! ──クラウンには直接会うまでサプライズにいたします。ですからそれまで、決してマイティー殿下の容姿については他言たごんしないように」



 この場にいる者全員を見渡し念を押す。

 そしてもう一度肖像画に目を戻した私は、何事もなかったようにそっと布を掛け、王妃の寝室のクローゼットに運ぶよう言いつけた。

 大丈夫。

  きっと何とかなるわ。

 私は心の中で呪文のように何度も唱えた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。 実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。 どうして貴方まで同じ世界に転生してるの? しかも王子ってどういうこと!? お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで! その愛はお断りしますから! ※更新が不定期です。 ※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。 ※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!

悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。

三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

真実の愛とやらの結末を見せてほしい~婚約破棄された私は、愚か者たちの行く末を観察する~

キョウキョウ
恋愛
私は、イステリッジ家のエルミリア。ある日、貴族の集まる公の場で婚約を破棄された。 真実の愛とやらが存在すると言い出して、その相手は私ではないと告げる王太子。冗談なんかではなく、本気の目で。 他にも婚約を破棄する理由があると言い出して、王太子が愛している男爵令嬢をいじめたという罪を私に着せようとしてきた。そんなこと、していないのに。冤罪である。 聞くに堪えないような侮辱を受けた私は、それを理由に実家であるイステリッジ公爵家と一緒に王家を見限ることにしました。 その後、何の関係もなくなった王太子から私の元に沢山の手紙が送られてきました。しつこく、何度も。でも私は、愚かな王子と関わり合いになりたくありません。でも、興味はあります。真実の愛とやらは、どんなものなのか。 今後は遠く離れた別の国から、彼らの様子と行く末を眺めて楽しもうと思います。 そちらがどれだけ困ろうが、知ったことではありません。運命のお相手だという女性と存分に仲良くして、真実の愛の結末を、ぜひ私に見せてほしい。 ※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開は、ほぼ変わりません。加筆修正して、新たに連載します。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

婚約破棄された令嬢は、幸せになると決めました~追放先で出会った冷徹公爵が、なぜか溺愛してくる件~

sika
恋愛
名家の令嬢・アイリスは、婚約者の王太子から「平凡すぎる」と婚約破棄を突きつけられる。全てを奪われ、家からも冷たく追放された彼女がたどり着いたのは、戦場帰りの冷徹公爵・レオンの領地だった。誰にも期待しないようにしていたアイリスだったが、無愛想な彼の優しさに少しずつ心を開いていく。 やがて、笑顔を取り戻した彼女の前に、あの王太子が後悔と共に現れて——。 「すまない、戻ってきてくれ」 「もう、あなたの令嬢ではありません」 ざまぁと溺愛が交錯する、幸福への再生ストーリー。

処理中です...