成績表に書けない才能

深渡 ケイ

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第9話:嘘つき優等生

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 陸がファイルを抱えて廊下に出た背中を、静は扉のガラス越しに見送った。

「落とすなよ」

 小さく言うと、陸は振り返らずに手だけ上げた。階段のほうから、朝のチャイム前のざわめきが押し寄せてくる。

 静が机の上を整える。写真、時間記録、数値メモ。黒川が嫌うのは「気持ち」だ。なら「数字」で殴るしかない。

 ノックが二回。控えめで、きっちりした間隔。

「どうぞ」

 扉が開いて、制服の襟元まで完璧に整えた女子が入ってきた。髪も、鞄の持ち方も、姿勢も。教室に貼られる模範写真みたいな生徒だった。

「失礼します。西園ユナです」

「西園。三年一組だな。……進路室、初めてか」

「はい。あの、ここ……第三、ですよね」

「そう。進路の相談なら座れ」

 ユナは椅子に腰を下ろす。膝の上に手を置く。指先が揃っている。静はその指の爪の際に、薄い赤みを見つけた。

「担任は佐伯か」

「はい」

「佐伯に言えなかった話?」

 ユナの視線が机の角に落ちた。返事までの間が、妙に長い。

「……言える話です。たぶん」

「たぶん、が付くなら言えない側だな」

 ユナの唇が一度だけ結ばれて、ほどけた。

「私、成績は……大丈夫です。模試も、今のところ」

「知ってる。学年上位。推薦も視野。だからここに来た理由が気になる」

 ユナは鞄から手帳を出した。薄い。中身は付箋だらけで、色が規則正しく並んでいる。

「私、予定は守れます。提出も、遅れたことないです」

「うん」

「でも、最近……」

 言いかけた瞬間、ユナの肩が小さく跳ねた。息が、浅くなる。喉の奥で空気が引っかかるみたいな音がした。

 静は立ち上がらず、声の高さだけ落とした。

「西園。今、息が速い。口じゃなく鼻で吸えるか」

 ユナは首を横に振った。指が手帳の端を強く掴む。紙がくしゃっと歪んだ。

「無理、です……っ」

 静は机の引き出しから紙コップを出し、何も入れずにそっと机の端に置いた。

「それに向けて、ゆっくり吐け。吸おうとするな。吐く」

 ユナはコップを見て、戸惑いながら口を近づけた。息がコップの内側に当たって、かすれた音がした。二回、三回。肩の上下が少しずつ小さくなる。

 静は時計を見るふりをして、急かさない。廊下の足音が遠ざかるのを待つ。

「……すみません」

「謝るな。体の反応だ」

 ユナが額の汗を袖で拭った。袖口の内側がすでに少し湿っている。

「教室で、なった?」

「いえ。トイレで……一回。保健室は……行ってません」

「行けばいい。だが、行けない理由がある」

 ユナは笑おうとした。口角だけが動いて、目が動かない。

「……優等生が保健室って、噂になりますから」

「噂が怖い?」

「怖いです。崩れたって思われるのが」

 静は椅子に腰を下ろし直した。

「崩れるのは、もう始まってる。噂か、倒れるか。どっちがマシだ」

 ユナの喉が小さく鳴った。手帳のページが一枚、勝手にめくれる。そこに「推薦 面接練習」「英検」「委員会」「模試復習」とびっしり書かれていた。

「家のことも、あります」

「家?」

「母が……私の成績を、親戚に送ってるんです。写真に撮って。『うちの子は大丈夫』って」

 静は眉を動かさない。言葉だけ切る。

「やめてって言ったか」

「言いました。でも、『誇りなんだから』って」

 ユナの指先がまた揃う。今度は揃え直す動作が早すぎて、落ち着かなかった。

「父は単身赴任で……帰ってきません。母は、私が落ちたら……」

「落ちたら?」

 ユナはその先を飲み込んだ。唇が白くなる。

 静は机の上の紙を一枚だけ引き寄せた。真っ白なコピー用紙だ。

「西園。現実の話する。今のまま全部守ると、どこかで体が止まる。止まったら、成績も推薦も、まとめて落ちる可能性が上がる」

 ユナの目が、静の手元に吸い寄せられる。

「じゃあ、どうすれば……」

「選ぶ。削る。隠す。交渉する。手段はある」

「……隠す?」

「過呼吸のことを、全員に言う必要はない。だが、必要な人には言う。担任か、保健室か、どっちかは味方にする」

「担任に言ったら……『甘えるな』って言われそうで」

「佐伯は数字が好きだ。『甘え』って言うより『管理しろ』って言うタイプ」

 ユナの肩が少し落ちる。まだ緊張は残っているが、息は戻っている。

「管理……」

 静は白紙の中央に線を一本引いた。

「左に『やること』右に『やめること』。今日から決める」

 ユナは首を振った。

「やめられません。委員会も、塾も、英検も……全部、必要で」

「必要かどうかは、誰が決めた」

「……私です」

「嘘」

 ユナの瞳が揺れた。静は淡々と言う。

「母親の顔が浮かんだだろ」

 ユナは視線を逸らした。逸らした先が扉の方だった。廊下に誰かが立っているわけでもないのに、音を気にするような目だった。

「……私、期待されてるんです。弟も、まだ小さくて。家の空気、私が崩したら」

「崩すのは、もう始まってる」

 静は線の右側に、短く書いた。

「保健室」

 ユナが目を丸くする。

「やめることに、保健室?」

「今週一回、保健室行け。『体調管理』でいい。理由は『呼吸が乱れることがある』まで。診断名はいらない」

「でも、記録に……」

「保健室の記録は成績表に載らない。推薦の調査書にも基本書かれない。ただし、欠席が増えれば載る」

 ユナの指がコップに触れた。さっきの空っぽのコップ。

「欠席、したくないです」

「欠席しないための保健室だ」

 ユナは小さく頷いた。頷き方が、許可をもらうみたいだった。

 静は左側に書く。

「睡眠 6時間」

 ユナが反射で言う。

「無理です。今、4時間です」

「だから倒れる。6時間取れないなら、どれか捨てる」

「捨てたら、落ちます」

「落ちない捨て方がある。例えば英検、今回じゃなく次回。委員会は副委員長に仕事を渡す。塾は回数を減らして自習にする」

 ユナの眉が寄った。

「そんなの……先生、わかってない。塾、減らしたら不安で……」

「不安は消えない。だが金と時間は増える。不安をゼロにする方法はない」

 ユナは唇を噛んだ。噛み方が、怒りに近い。

「……私だけ、弱いみたいじゃないですか」

 静はユナの手帳を指差した。

「その手帳、弱い人が作るか?」

 ユナは一瞬、言葉を失った。手帳を閉じる音が、やけに大きく響いた。

「……でも、完璧に見せないと」

「誰に」

「みんなに。先生にも」

「俺に完璧を見せる必要はない。ここは第三だ。崩れてる奴が来る」

 ユナの肩がわずかに震えた。笑いにも泣きにもならない息が漏れる。

「……第三って、落ちこぼれが来る場所って、聞いてました」

「学校の呼び方だ。黒川教頭はそういう枠が好きだ。数字で分けられるからな」

 ユナが顔を上げた。

「教頭……」

「教頭は『実績』が欲しい。お前が倒れたら実績が消える。だから、倒れない方法を作る。これは俺の仕事でもある」

 静は白紙をユナの方へ滑らせた。

「今日、ここで決める。まず一個だけ。今週、何を減らす」

 ユナは紙を見つめ、指先で線をなぞった。沈黙が長い。廊下の向こうで、誰かが「教頭来るぞ」と囁く声がした気がした。静は耳を動かさない。

 ユナが、やっと言う。

「……英検の単語、毎日一時間やってました。……三十分にします」

「よし。浮いた三十分は?」

「……寝ます」

「寝ろ。次。保健室はいつ行く」

「……今日、昼休み」

「佐伯には俺から話す。『体調管理で保健室を使う』って。詳細は言わない」

 ユナが強く首を振る。

「やめてください。担任に知られたら……『推薦に響く』って、もっと詰められる」

「推薦に響くのは倒れることだ。詰められたら、詰め返す材料を作る」

 静は机の端にあったメモ帳を取り、短く書く。

「睡眠時間/過呼吸回数/保健室利用」

「記録……」

「数字にすると、佐伯は納得しやすい。黒川もな」

 ユナはその言葉に、背筋を固めた。

「教頭に、知られますか」

「知られる可能性はある。だから、見せ方を選ぶ。『メンタルが弱い』じゃなく『体調の自己管理ができている』にする」

 ユナは目を伏せた。まつ毛が震えて、落ち着かない呼吸が一度だけ戻りかける。静はすぐに言う。

「今、また速くなりそうだ。吐け」

 ユナは頷き、コップに向けて息を吐いた。今度はさっきより早く整う。

「……先生」

「何だ」

「私、嘘つきです。平気なふりして。『大丈夫』って言って。……それで、みんな安心して」

「安心させるための嘘は、コストが高い。払える範囲にしろ」

 ユナは紙を握りしめた。指の赤みが濃くなる。

「払えなかったら?」

「払えなくなる前に、分割にする。ここに来い。朝でも昼でも」

「……朝は、委員会の準備が」

「じゃあ昼。五分でもいい」

 ユナは小さく頷いた。さっきの「たぶん」と同じ調子で。

 静は立ち上がり、扉のほうへ視線を向けた。廊下の気配が近づいている。革靴の音が、一定のリズムで。

 黒川の歩き方に似ていた。

 静は声を落とす。

「西園。今から教室戻れるか」

 ユナは紙を畳んで手帳に挟んだ。息を一度整えてから立ち上がる。

「はい。戻ります」

「廊下で誰かに会っても、説明はいらない。『進路相談』で十分」

 ユナは扉に手をかけ、振り返った。

「先生、これ……続けたら、私は……」

 静は答えを断定しない。ただ、選べる道だけを増やす。

「続け方を変えれば、倒れる確率は下がる。ゼロにはならない。だから記録して、削って、味方を作る」

 ユナは短く息を吐いた。さっきのコップに吐く呼吸と同じ速さで。

「……わかりました」

 扉が閉まる直前、廊下から低い声が聞こえた。

「第三は、今日中に報告を――」

 黒川の声だった。言葉の続きは扉に遮られたが、圧だけが部屋に残る。

 静は机の上の白紙をもう一枚取り出し、ユナの名前を書いた。次に、陸が持っていった報告書の控えを視界の端で確かめる。

 ノックがまた鳴る。今度は乱暴で、間が短い。

 静は息を吐き、椅子を少しだけ前に引いた。

「どうぞ」


「どうぞ」

 静が言い終える前に、扉が押し開けられた。

 黒川教頭が入ってくる。スーツの襟を直しながら、部屋の中を一瞥した。机の上の白紙、コップ、写真束の端。視線が短く走るだけで、片づけの甘さを指摘される気がした。

「桐生先生」

「おはようございます」

 黒川は椅子に座らない。立ったまま、窓の外の校庭を見るふりをして言った。

「第三進路室は、落ちこぼれの受け皿だ。そういう位置づけで設置している。分かっていますね」

 静は机の上のファイルを揃えた。音を立てない。

「分かってます。だから来た子は受けます」

 黒川が振り向いた。

「“来た子”?」

「今、三年一組の西園が来ました」

 黒川の眉がわずかに動く。名前の重さが、そのまま眉に乗る。

「西園ユナ? 学年順位の上の生徒ですよ。あなたの部屋に来る必要はない」

「必要があったんでしょう」

「必要なら一進路室で足ります。あなたのところは——」

「落ちこぼれの場所、ですか」

 静が言葉を先回りすると、黒川は一瞬だけ口を閉じた。すぐに、整った声で続ける。

「そうです。限られた資源の配分です。上位層は上位層で、大学実績につながる指導がある。第三が触ると、余計な不安を与える」

「余計かどうかは、本人が決めます」

 黒川は机の端の空の紙コップに視線を落とした。

「……保健室ごっこでも始めたんですか」

 静はコップを手に取って、裏返した。何も出ない。

「過呼吸の対処です。五分で戻しました」

 黒川が鼻で息をした。

「過呼吸。そんなもの、受験期には誰でもある」

「誰でもあるなら、誰でも対処を教えたほうがいい」

 黒川の目が細くなる。

「桐生先生。あなたはいつも、線引きを壊す」

「線引き、崩れてるのはそっちです。上位の子が倒れたら実績が消える。第三で早めに止めたほうが、学校に得です」

 黒川の口元がわずかに歪む。笑いではない。

「学校に得、ね。あなたが口にすると皮肉に聞こえる」

「皮肉じゃない。現実です」

 黒川は静の机の上の束を指で叩いた。写真の角が揺れる。

「壁画の件。提出は?」

「陸が今、持って行ってます」

 黒川の視線が扉へ向く。

「相沢ですか。あなたの“助手”」

「雑務を手伝ってもらってます」

「第三が火種になっている、と私は言いましたね」

「火種は、放置すると燃えます。消したいなら、水を用意する」

 黒川は机の束を見下ろし、指先で一枚をずらした。静がすぐに戻す。

「形式変更は、もう伝えたはずです。写真の添付は不要。結論だけを書け、と」

「結論だけだと、また『根拠がない』って言われます」

「誰に」

「あなたに」

 黒川は瞬きを一つした。静はその隙を逃さない。

「根拠が嫌なら、数字だけ出します。時間記録、材料費、復旧範囲。これなら文句ないでしょう」

 黒川は口を開きかけて、閉じた。代わりに言う。

「あなたは、いつも正面から殴りに来る」

「殴ってない。扉を増やしてるだけです」

 黒川が一歩、静の机に近づく。声を落とす。

「西園の件。担任に余計なことを言うな。佐伯は今、推薦枠の調整で神経を尖らせている」

「佐伯には、体調管理で保健室を使う程度で伝えます」

「それも余計だ」

 静は目を逸らさない。

「黙って倒れたら、もっと余計です」

 黒川の顎がわずかに上がった。

「あなたは、優等生まで“第三の案件”にする気ですか」

「第三の案件じゃない。“学校の案件”です」

 黒川が、初めて椅子に座った。座る音が重い。

「言い方を変えましょう。あなたの部屋は、数字にならない努力を救う場所だ。そう自分で言っていた」

「言いました」

「西園は数字の塊です。偏差値、内申、模試。数字になっている」

 静は指で机を二回叩いた。

「数字になってるのは、結果だけです。裏のコストは出てない。睡眠四時間、息が止まりかける。そこが崩れたら、数字も崩れる」

 黒川は静を見つめたまま、何も言わない。静は続けた。

「落ちこぼれか優等生か、ってラベルで分けるから歪む。倒れる前に手を打つか、倒れてから欠席日数を数えるか。どっちがあなたの好きな“数字”ですか」

 黒川の目が、ほんの少しだけ泳いだ。だがすぐ戻り、硬く言った。

「あなたは、私を悪者にしたいのか」

「悪者にする気はない。あなたは学校を守る。俺は生徒を守る。重なるところだけ拾う」

 黒川は息を吐き、背もたれに体重を預けた。

「桐生先生。あなたのその言い方は、いつか孤立しますよ」

「孤立しても、仕事はします」

 黒川は立ち上がり、扉へ向かう。取っ手に手をかけて、振り返った。

「今日中に、壁画の報告は決着させる。第三が余計な波を立てないように」

「波が立ってるのは、現場です。見ないようにしても、消えません」

 黒川は返さず、扉を閉めた。

 閉まった瞬間、静の肩の力が少しだけ抜けた。だが椅子に座らない。すぐに机の上の白紙を取り、先ほど書いた「西園ユナ」の下に短く追記する。

「昼 保健室」

 次に、別の名前も書く。

「竹内サラ 朝5分」

 扉の外が騒がしい。早足の足音が近づいて、止まる。

 ノック。今度は小さく、遠慮がち。

 静は顔を上げた。

「どうぞ」

 扉が開きかけたところで、廊下の向こうから別の声が飛んだ。

「相沢! 教頭室、今すぐ!」

 静の目が扉の隙間に向く。入ってきた影は、制服の袖を握りしめて立ち尽くしていた。

 静は声を落とす。

「……陸じゃないな。誰だ」

 影が一歩だけ中に入る。かすれた声。

「先生。提出、間に合わなくて……」

 静は椅子を引き、相手の顔が見える位置まで身を乗り出した。

「名前」

「竹内、サラです」

 静は頷き、机の上の紙を指で押さえた。

「朝五分の約束、守ったな。座れ。まず、今日の時間を数字にしよう」


 廊下の端で、陸は壁に背をつけたまま立っていた。

 教頭室の扉は閉まっている。中から聞こえる声は抑えられていて、言葉までは届かない。けれど、間の取り方だけで分かる。黒川の声だ。

 陸はファイルの角を握り直した。紙が擦れる音が、妙に大きい。

「相沢」

 扉が開き、黒川が顔を出した。

「入って」

 陸は喉を鳴らしてから、教頭室に足を踏み入れた。部屋の空気が重い。机の上に、陸が持ってきた報告書のファイルが置かれている。表紙の角が、きっちり揃っていない。

 黒川は椅子に座り、ファイルを指先でトントンと叩いた。

「桐生先生が作ったのか」

「俺も手伝いました」

「“手伝った”」

 黒川はページをめくる。写真、時間、材料費。数字が並ぶ。

「余計なものが多い。形式を変えると言ったはずだ」

 陸は口を開いたが、すぐ閉じた。静の顔が浮かんだ。結論だけだと、また根拠を求められる。だから全部入れた。

 黒川が目を上げる。

「あなたは、第三に何を求められている」

「……雑用です」

「雑用が、学校の火種になっている」

 陸の指が机の縁を掴む。

「火種って、壁画のことですか」

「壁画だけではない。第三が“例外”を増やすほど、他が歪む」

 陸は息を吸って、言った。

「例外が、必要なやつもいます」

 黒川の眉がわずかに上がる。

「あなたが言うのか。相沢」

 陸は黙った。言い返す言葉が、喉の奥でつかえて出ない。

 黒川はファイルを閉じた。

「報告書は受理する。ただし、次から形式を守れ。桐生先生にも伝えなさい」

「……はい」

「もう一つ」

 黒川の声が低くなる。

「第三に出入りする生徒の情報が、妙に広がる。噂が立てば、学校全体に影響する。あなたも口を慎め」

 陸の背中に汗がにじむ。

「誰も、言ってません」

「言っていなくても、見られている。第三は見られる場所だ」

 黒川は立ち上がり、扉を開けた。

「戻りなさい」

 陸は頭を下げて出た。廊下の空気が、少しだけ軽い。けれど足は重いままだった。

 第三進路室の前まで来ると、扉の向こうから声が聞こえた。静の声と、女の子の声。短い応酬。

「今日、何を削る」

「……英検、三十分にします」

「寝ろ」

 陸は足を止めた。

 優等生の声だ。柔らかいのに、どこか擦れている。

 扉が開いて、西園ユナが出てきた。制服の襟は相変わらず綺麗だ。髪も乱れていない。けれど、目だけが落ち着いていない。廊下の端、掲示板、階段、誰かの影を探すみたいに動く。

 陸と目が合った瞬間、ユナは反射で笑った。

「相沢くん。おはよう」

「……おはよう」

 ユナは笑いを保ったまま、声を小さくした。

「ここ、誰にも言わないでね」

「言わない」

「うん。ありがと」

 そう言って、ユナは足早に去ろうとする。だが二歩目で、ほんのわずかに膝が揺れた。陸は思わず声をかけた。

「西園、平気?」

 ユナは止まらない。振り返りもしないまま、肩だけで答えた。

「平気だよ」

 その「平気」が、第三の扉の前で一度だけ途切れた。息が、引っかかる音。

 ユナは廊下の窓際に寄り、カーテンの影に半身を隠す。胸元を押さえ、口を開けないまま息を吐こうとしている。

 陸は近づきかけて、止まった。噂。見られている。黒川の言葉が刺さる。

 静が扉の隙間から顔を出した。

「西園」

 ユナは首を横に振った。大丈夫、という合図。けれど指先が震えている。

 静は廊下に出て、距離を詰めすぎない位置で立った。

「吐け。吸うな」

 ユナは唇を結び、頷いた。肩が上下する。制服のリボンが微かに揺れる。

 陸は壁に手をついた。自分の息まで浅くなる。

「……優等生も、こんなんなるのかよ」

 口から漏れた声は、自分でも驚くほど小さかった。

 静が陸を一瞥した。

「優等生だから、なる」

「え」

「倒れたら終わるって思ってる。落ちこぼれは“落ちても元から”って言われる。優等生は“落ちたら裏切り”になる」

 陸は唇を噛んだ。自分がいつも言われてきた言葉が、別の形で刺さる。

 ユナの呼吸が少し落ち着く。だが、顔色はまだ白い。

 ユナは静にだけ聞こえる声で言った。

「……家、帰りたくない」

 静は頷きも首振りもしない。ただ現実の選択肢を並べる口調で言う。

「今日は帰るしかない。だが、帰り方は選べる。寄り道して落ち着いてから帰る。保健室に寄って記録を残す。担任に“体調管理”だけ通す。全部、今日できる」

 ユナは目を閉じ、短く息を吐いた。

「母が、今日、模試の結果見る日で……」

「結果を見せる時間を、ずらせ」

 ユナが目を開ける。

「ずらす?」

「夕飯の後にする。風呂の後にする。理由は何でもいい。“今は頭が痛い”でいい。嘘だと思うなら、“今は呼吸が乱れる”でもいい」

 ユナの喉が動く。言い返したいのに、言葉が出ない顔だった。

「……怒られます」

「怒られる確率は高い。だが、怒られても倒れない確率も上げられる」

 ユナは笑いそうになって、やめた。

「先生、ほんと、夢ない」

「夢は守るために現実がいる」

 ユナは視線を落とし、制服の袖口を掴んだ。

「私、怖いんです。落ちるのが。怒られるのが。……息が止まるのが」

 静は声をさらに低くした。

「怖いなら、記録しろ。怖さが来た時間、場所、前に何があったか。次に同じ条件が来たとき、先に手を打てる」

 ユナは小さく頷いた。頷き方が、やっと自分の意思になった。

 廊下の向こうから、教師の声が飛ぶ。

「西園! 次の時間、委員会の掲示物どこ!」

 ユナの肩がびくりと跳ねた。反射で「はい!」と返しそうになって、喉で止まる。

 陸がその場で固まる。静は言った。

「返事する前に、一回吐け」

 ユナは唇を結び、息を吐く。間を作ってから、声を出した。

「……今、持って行きます」

 言い終えた瞬間、ユナは静を見た。助けを求めるというより、許可を確認する目だった。

 静は短く言う。

「行け。昼、保健室。五分でいい」

 ユナは頷き、走らずに歩き出した。背筋はまっすぐだ。けれど歩幅が小さい。

 陸はユナの背中を見送りながら、ぽつりと言った。

「俺、ずっと思ってた。優等生って、楽してるって」

 静は扉に手をかけたまま、陸を見た。

「楽してる奴もいる。地獄で保ってる奴もいる。見分けるのが仕事だ」

「……俺らは?」

「お前は、地獄を知ってる側だ。だから、見える」

 陸は笑えなかった。喉が詰まる。

「でも教頭、第三は見られてるって。俺、さっき釘刺されました」

「刺されるのは想定内だ」

「想定内でやってんの、怖くないんすか」

 静は扉を開け、陸に先に入れと顎で示した。

「怖い。だから、証拠を残す。数字と記録と、味方」

 部屋に入ると、机の端に置きっぱなしの空の紙コップが見えた。さっきユナが息を吐いたやつだ。

 その横に、静が書いた紙がある。「西園ユナ 昼 保健室」。

 陸はその文字を見つめた。

「……俺も、記録ってやつ、つけたほうがいい?」

 静は椅子に座らず、机の引き出しから新しいメモ帳を出して投げた。陸が慌てて受け取る。

「今日から。『いつ逃げたくなったか』でもいい。逃げたくなるのは、弱さじゃない。条件だ」

 陸はメモ帳を開いた。白いページが眩しい。

 その瞬間、第三の扉がまたノックされた。今度は遠慮のない連打。

 静が目線だけで陸に「黙れ」と合図し、扉に向かう。

「どうぞ」

 扉が開く。担任の佐伯が顔を出した。眉間にしわを寄せ、手にプリントの束を持っている。

「桐生先生。西園のことで、ちょっと」

 陸の胸が一段、沈んだ。ユナの「誰にも言わないでね」が、耳の奥で鳴り続ける。

 静は表情を変えずに言った。

「入ってください。数字で話します」


 佐伯は入ってくるなり、プリントの束を机に置いた。

「西園のことで、どういうつもりですか」

 静は椅子を勧めない。佐伯も座らない。立ったままの距離が、そのまま圧になる。

「どういうつもり、とは」

「第三に来させる必要がない。あの子は今、推薦のラインに乗ってる。余計なことを言われて崩れたら——」

「崩れかけてました」

 静が短く切る。佐伯の眉が動く。

「何が根拠です」

 静は机の端のメモを引き寄せ、裏返したまま置いた。見せない。

「本人の体調です。詳細は本人の許可が要る」

 佐伯が一瞬、言葉を失う。次に出た声は低い。

「許可? 君は担任を外す気か」

「外さない。使う。だから、必要な範囲で共有する」

 佐伯は唇を薄くした。

「必要な範囲、ね。第三はいつもそう言って、勝手に動く」

 静は視線を外さずに言った。

「勝手に動いたら、教頭に潰されます。俺もそれは困る」

 佐伯が鼻で笑った。

「黒川の顔色も見てるのか」

「見ないと生徒が潰れる。あなたも同じでしょう」

 佐伯の肩が少しだけ上がった。怒鳴りはしない。だが、机の縁を叩く指が速い。

「で。西園に何を吹き込んだ」

 静は淡々と言った。

「保健室を使う。睡眠を増やす。英検の勉強時間を減らす」

「減らす? 今、英検落とせば推薦の印象に——」

「落ちても死なない計画を作ってます」

 佐伯が顔をしかめる。

「そんな言い方、あるか」

「ある。本人が『落ちたら終わり』で息が止まりかけてる。終わりじゃないって、手順で示す」

 佐伯はプリントの束を持ち上げた。

「推薦の手順は厳密だ。内申、欠席、検定、活動実績。数字だ。君の“手順”は現実を知らない」

 静は机の引き出しから別の紙を出した。白紙に、ペンで二つの丸を書く。

「これが今のあなたの世界。『合格』と『失敗』だけ」

 佐伯が睨む。

「……何が言いたい」

 静は丸の外側に、もう一つ小さな丸を描いた。

「『撤退』。ここを作る。失敗する前に引く。引いても戻れる場所を作る」

 佐伯の目がその小さな丸に止まる。だがすぐに言う。

「撤退なんて、優等生に教える言葉じゃない」

「優等生こそ撤退を知らない。撤退できないから倒れる」

 静は紙を佐伯に突き出さず、机の上に置いたままにした。押し付けない距離。

「あなたに頼みたいのは一つ。西園が昼休みに保健室へ行く。委員会の呼び出しを一回止めてください」

 佐伯が即答する。

「無理だ。委員会は今、文化祭の資料まとめで——」

「じゃあ代わりを立てる。副委員長、誰です」

 佐伯が口をつぐむ。名が出せない沈黙。

 静が続ける。

「副委員長が機能してないなら、それも問題だ。西園一人に背負わせるのは指導の欠陥になる」

 佐伯の頬が引きつった。

「言い方がきついな」

「現実がきつい」

 廊下のチャイムが鳴り、遠くで教頭の声が響いた気がした。「推薦枠の進捗——」という単語だけが耳に刺さる。

 佐伯は息を吐き、プリントの束を胸に抱えた。

「……分かった。昼休みは一回、委員会の用事を外す。だが、保健室に行ったことは記録に残る」

「残していい。欠席にならない」

「欠席が増えたら——」

「増やさないための保健室です」

 佐伯は扉へ向かいながら、振り返る。

「西園のこと、俺に全部隠すな。担任は責任を取る立場だ」

 静は頷いた。

「本人が許せる範囲で、共有します。俺が勝手に暴露はしません」

 佐伯が去ると、部屋の空気が少し軽くなった。

 陸がようやく息を吐いた。

「……こわ。担任って、あんな感じなんすね」

「佐伯は正しい部分もある。数字は現実だ」

 静は机の紙を片づけ、陸のメモ帳に目をやった。

「書いたか」

 陸は首を振った。

「まだ白いっす」

「白いなら、今日の一行。『教頭室で胃が縮んだ』」

 陸が渋い顔をして、ペンを取った。書き始めたところで、扉が控えめにノックされる。

 静が言う。

「どうぞ」

 ユナが顔を出した。昼休みの終わりが近い時間なのに、息が少し乱れている。手には保健室の小さなカード。角が湿っている。

「先生……行ってきました」

 静はカードを見て、頷いた。

「よし。座れ。五分で終わらせる」

 ユナが椅子に座る。陸が気まずそうに立ち上がろうとすると、静が顎で止めた。

「陸はいていい。話を聞いて困る内容は言わない」

 ユナは一瞬ためらい、頷いた。視線が床に落ちる。

 静は紙を一枚出し、上にこう書いた。

「失敗しても死なない計画」

 ユナが顔を上げる。

「……死なない、って」

「言葉が嫌なら変える。『詰んでも戻れる計画』」

 ユナは小さく息を吐いた。笑いでも泣きでもない。

「私、詰んでるんですか」

「詰みかけ。だから今作る」

 静はペン先で紙を叩く。

「まず、成績は才能の一部だ。全部じゃない」

 ユナの眉が寄る。

「でも、私の価値って、成績しか……」

 静は否定しない。代わりに、具体を置く。

「今日、保健室に行けた。委員会の呼び出しに即答しなかった。息を整えてから返事した。これ、才能だ。自己管理。切り替え」

 ユナはカードの角を指で擦った。

「……そんなの、当たり前です」

「当たり前にできない人間が、今この部屋に何人いると思う」

 陸が小さく咳払いした。

「……俺、できない側っす」

 ユナが一瞬だけ陸を見る。視線がぶつかって、すぐ逸れる。

 静は紙に線を引いた。三列。

 左に「最悪」、真ん中に「現実」、右に「次の一手」。

「西園。まず最悪を言え。口に出せ。頭の中で膨らむと止まらない」

 ユナの喉が動く。

「……英検、落ちる」

「次」

「模試、下がる」

「次」

「推薦、外れる」

 静はそこで止めない。

「次」

 ユナの指がカードを握り潰しそうになる。

「母が……怒る」

「怒る、で済むか」

 ユナの口が開きかけて、閉じる。息が浅くなる。静が言う。

「吐け」

 ユナは頷き、短く息を吐いてから、絞り出した。

「……家の空気が、壊れる。私のせいって言われる」

 静はペンを置かない。

「現実。英検が落ちたら、どうなる」

 ユナは目を閉じて考える。声が少しだけ落ち着く。

「……次の回、受け直せます」

「費用」

「……七千円くらい」

 静がすぐに言う。

「家計に響くなら、校内の補助はない。だが、回数を減らして一回で受かる確率を上げる手もある。今の勉強法は?」

 ユナが答える。

「単語一時間、長文三十分、リスニング二十分……」

「削る」

 ユナが反射で言う。

「削ったら落ちます」

「削っても落ちないように変える。単語は量じゃなく回転。長文は毎日じゃなく隔日で精読。リスニングは通学中に置き換え。時間を増やすんじゃない。配置を変える」

 ユナの目が、紙の線を追う。静の言葉が、手順になって入っていく。

「……配置」

 静は右の列に書く。

「通学中:リスニング/夜:単語20分×2/長文:隔日」

「これ、やれば……」

「受かる保証はない。だが倒れる確率は下がる」

 ユナが唇を噛む。

「推薦、外れたら?」

 静は即答しない。代わりに、紙の真ん中に別の文字を書く。

「一般」

 さらに書く。

「公募推薦/指定校以外」

 ユナの目が揺れる。

「一般は……怖いです。全部、点数で」

「今も点数で生きてる」

 ユナが言い返す。

「でも、推薦なら……“落ちても”って言われない」

 静は右の列に、もう一つ書いた。

「併願」

 ユナが小さく首を振る。

「併願って、親が嫌がります。“逃げ”って」

 静は頷く。

「嫌がる確率は高い。だから交渉材料を作る。数字で」

 ユナが静を見る。

「また数字」

「お前の家は数字で動く。なら数字を使う」

 静は紙の端に書く。

「睡眠6時間→過呼吸回数減→欠席ゼロ→内申維持」

 ユナはその矢印を見て、少しだけ肩を落とした。

「……母に言っても、信じない」

「信じさせるんじゃない。先に実績を作る。二週間、記録。過呼吸が起きた時間、睡眠、食事。減ったら、その紙を見せる」

 ユナがカードを机に置いた。

「……二週間、耐えればいいんですか」

「耐えるじゃない。試す。合わなきゃ変える」

 陸がぽつりと言った。

「西園って、めっちゃちゃんとしてるのに……」

 ユナの肩が跳ねる。反射で背筋が伸びる。完璧の鎧が戻りかける。

 静が陸を見た。

「言い方」

 陸が慌てて手を振る。

「ごめん。バカにしてない。ほんとに……地獄なんだなって」

 ユナは目を伏せたまま、声だけ出した。

「……地獄って言わないで。私、まだ頑張れるから」

 静はそこで「無理するな」とは言わない。代わりに、紙をユナの前に押し出す。

「頑張るなら、頑張り方を決めろ。今日の“死なない計画”、お前が書く」

 ユナがペンを取る。手が少し震える。だが書き始める。

「……英検、単語は通学中。夜は二十分を二回。長文は隔日」

 静が頷く。

「睡眠は」

「六時間……無理なら、五時間半」

「いい。現実的に」

 ユナは書き足す。

「過呼吸が来たら、トイレか保健室で吐く。記録する」

 静が言う。

「母への交渉は?」

 ユナのペンが止まる。

「……言うタイミング、夕飯の後。『今は頭が痛い』でずらす」

「嘘が嫌なら?」

 ユナが小さく言う。

「……『呼吸が乱れる』」

 静はそれ以上踏み込まない。ユナが自分で選んだ言葉を、紙に残させる。

 チャイムが鳴った。昼休みの終わり。

 ユナが紙を手帳に挟もうとして、手が止まった。

「先生。これ、持って帰ったら……母に見られます」

「見られたくないなら、ここに置け。コピーして渡す手もある。どっちがいい」

 ユナは迷って、紙を静に差し出した。

「……ここに置きます。私の手帳、母、勝手に見るから」

 静は受け取って、引き出しに入れた。

「次は明日。昼、五分」

 ユナが立ち上がる。扉へ向かい、振り返った。

「先生。もし、私が……落ちたら」

 静は言い切らない。ただ、次の一手だけを置く。

「落ちたら、別の道を出す。今は、そのための材料を集めろ」

 ユナは頷き、教室へ戻っていった。

 扉が閉まると、陸が静の引き出しを見た。

「……あの紙、ほんとに役に立つんすか」

「役に立つかは、続けたら分かる」

 静は机の上のファイルを手に取った。壁画の報告書の控えだ。角が少しだけずれている。

 廊下の遠くで、黒川の声がまた響く。

「今日中に——」

 静はその声を無視せず、飲み込んでから言った。

「陸。教頭室、また呼ばれるかもしれない。呼ばれたら、言うことは一つ」

「……何を」

「『第三は火種じゃない。消火班だ』って」

 陸は苦い顔をして、でも頷いた。

「言えるかな」

「言えなくてもいい。記録だけは残せ」

 静は陸のメモ帳を指で叩いた。

「次、誰が来るか分からない。扉が鳴ったら、今日はもう逃げない」

 ノックが、また鳴った。今度は、ためらいのない一回きり。

 静が顔を上げる。

「どうぞ」


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