成績表に書けない才能

深渡 ケイ

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第13話:清掃員みたいな才能

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 放課後の廊下は、部活の声が遠くなっていく時間だった。

 三階の端、第三進路室の前だけは妙に静かで、床が一段だけ光っている。

 相沢陸が足を止めた。

「……ここ、さっきまで砂っぽくなかった?」

 桐生静は、廊下の端にしゃがみ、指先で床をなぞった。指に粉はつかない。

「誰かが拭いたな。しかも二度拭き」

「二度拭きって分かるんすか」

「乾き方が違う。雑巾の筋が残ってない」

 陸が顔をしかめた。

「怖。職人っすね」

 そのとき、階段のほうから金属の音が近づいてきた。バケツの取っ手が揺れる音。モップの柄が壁に軽く当たる音。

 女子生徒が、清掃用具を抱えたまま廊下に現れた。制服の袖は肘までまくって、手袋をはめている。髪は後ろでまとめて、額の汗を手首で拭った。

 深谷チカだった。

 静が立ち上がる。

「深谷。今、ここ拭いた?」

 チカは一瞬だけ目を上げた。返事はしない。代わりにバケツを床に置き、雑巾を絞り直した。水が落ちる音がやけに大きい。

 陸が小声で言う。

「深谷って、教室で見ないっすよね。いるのはいるけど」

 静はチカの手元を見た。雑巾の折り方がきっちり四つ折りで、角を揃えている。

「なんでそこまで丁寧にやる」

 チカの口が動いた。

「……汚いの、嫌い」

「汚いのが嫌いで、授業は捨てる?」

 チカの手が止まった。雑巾を床に置いたまま、指先だけが小さく震えた。

「……授業は、汚くないじゃん」

「汚くない。でも逃げてる」

 陸が慌てて割って入る。

「先生、言い方」

 静は目をそらさない。

「今のままなら、出席と評定で詰む。卒業が先に危ない」

 チカは雑巾を持ち上げ、また拭き始めた。拭く速度が上がる。逃げ道を作るように、床だけを見ている。

 静は一歩近づいた。

「深谷。第三進路室、来い」

「……やだ」

「やだ、で済むのは中学まで」

 チカが顔を上げた。目が乾いている。泣く前の目じゃない。怒っている目でもない。ただ、何かを守っている目だった。

「先生たち、どうせ、数字しか見ない」

 静の頬がわずかに動いた。笑いではない。

「それは正しい。だから私は数字も作る」

 陸が目を丸くする。

「先生……」

 静は続けた。

「深谷の『丁寧さ』を、成績表に書けないなら、別の書類にする。履歴書とか、推薦状とか、実習評価とか。現実的に使える形に変える」

 チカは口を引き結んだ。

「……そんなの、嘘じゃん。掃除してるだけ」

「嘘じゃない。掃除を『してるだけ』で、廊下を一段だけ光らせられるやつは少ない」

 陸が廊下の光る部分を指さした。

「マジで、ここだけ床が新品みたいっすよ」

 チカは視線を外した。けれど手は止まらない。雑巾が床を滑る音が規則正しい。

 静はバケツの中を覗いた。水が濁っていない。何度も替えている。

「水、何回替えた」

「……三回」

「今日は何時からやってる」

「……昼休みから」

 陸が声を裏返した。

「昼休み!? 飯は?」

 チカは肩をすくめた。

「……あとで」

 静は廊下の先、職員室の方向を一瞬だけ見る。人の気配がある。覗き見の気配。監視が強くなっているのを肌で感じる。

「深谷。ここでやるな。目立つ」

 チカの眉が動いた。

「目立っていい。汚いのが嫌」

「目立つと、叩かれる」

「……誰に」

 静は答えを濁さない。

「『成果が見えない』って言う大人に。今の学校は、掃除が丁寧でも点数にならない。点数にならないなら、いないのと同じ扱いをされる」

 陸が唇を噛んだ。

「……それ、今の第三と同じっすね」

 静は短く息を吐いた。

「そう。だから、道を増やす。深谷の掃除を、点数じゃなくて評価に変える道を」

 チカは雑巾を止めた。手袋の指先が濡れて光る。

「……評価って、なに」

「例えば、ビルメンテナンス。清掃会社。ホテルの客室整備。病院の環境整備。全部、丁寧さが仕事になる」

 チカが小さく首を振る。

「……そういうの、底辺って言われる」

 陸が反射で言い返しかけて、言葉を飲み込んだ。静が先に言う。

「言われる。現実に言うやつはいる。だから、条件を選ぶ。資格、時給、勤務時間、正社員登用。『言われても生活が回る』を先に作る」

 チカは唇を開けたまま固まった。言い返すはずの言葉が、宙にぶら下がる。

 静は声を落とす。

「深谷。授業を捨てた理由は、今ここで聞かない。聞いたら、逃げ道がなくなる顔してる」

 チカの喉が動いた。

「……分かんないくせに」

「分かんない。だから聞く場所を変える。第三進路室で。今、五分だけ」

 チカはバケツの取っ手を握り直した。指の節が白くなる。

「……五分で終わらせて」

「終わらないこともある。けど、帰りたいなら帰っていい。縛らない」

 陸が慌てて言う。

「俺、お茶入れます。先生、いつもの薄いやつでいいっすか」

「薄いって言うな」

「だって薄いじゃないっすか」

 静が廊下の奥を指した。

「深谷、用具は倉庫に戻せ。ここに置くな」

 チカは一瞬だけ反発する顔をしたが、バケツを持ち上げた。水が揺れて、床に一滴落ちそうになって、落ちない。腕がブレない。

 陸がそれを見て、呟いた。

「……すげえ」

 チカが倉庫に向かう背中に、静が言う。

「深谷。第三に来たら、まず出席の話をする。そこは逃がさない」

 チカは振り返らずに言った。

「……分かった」

 倉庫の扉が閉まる音がした。

 静は第三進路室の鍵を回した。扉がきしむ。中は狭い。机の上には面談記録のファイルが積まれ、陸がつけている一覧表がクリップで留められている。

 机の端に、黒川教頭から回ってきた通達メモが裏返しに置かれていた。「年度末までに」とだけ、太いペンで書かれた文字が透けて見える。

 陸がその紙を見ないように、急いで湯を沸かし始めた。

「先生、深谷って……就職っすか」

 静は椅子を引き、座らずに立ったまま言う。

「就職も進学も、いったん並べる。本人の『嫌』を材料にする」

「嫌を材料?」

「嫌が強いほど、守りたいものがある。そこから条件を作る」

 扉の外で足音が止まった。軽い咳払い。誰かが通り過ぎる気配。覗いているのか、ただの通行か、判別できないくらいの間。

 静は扉のガラス窓に目をやり、カーテンを少しだけ引いた。

「……監視、露骨っすね」

「慣れるな。鈍る」

 陸が湯呑みを二つ並べる。三つ目を迷ってから、もう一つ出した。

「深谷の分も」

 静は短く頷いた。

 廊下から、バケツの金属音が戻ってくる。今度は軽い。水を捨ててきた音だ。

 深谷チカが、第三進路室の前で立ち止まった。ノックが一回。弱い。

 静が扉を開ける。

 チカは入らずに、靴のまま敷居の線を見た。

「……ここ、土足?」

「土足。掃除するなよ」

 チカが小さく笑いかけて、すぐ消した。

「……五分」

「座れ。五分で済むように、最初に聞く。名前と、今の出席日数」

 チカが椅子に腰掛ける。背筋が伸びる。手袋を外し、指先を揃えて膝に置いた。

「深谷チカ。……欠席、多い」

「多い、じゃ数字が出ない。何日」

 チカの視線が机の端のファイルに落ちた。そこに並ぶ名前のラベル。誰かの人生が紙になっている。

「……数えてない」

「じゃあ数える。陸、出席簿持ってこい」

 陸が立ち上がり、棚を開けた。紙の擦れる音。

 チカが小さく言った。

「……先生、ほんとに数字作るんだ」

 静は湯呑みをチカの前に置いた。湯気が上がる。

「作る。じゃないと、ここが消える」

 チカが湯呑みに触れた。熱さに一瞬指を引っ込めて、また触れ直す。逃げない。

「……消えたら、どうなるの」

 静は椅子に座った。真正面から見た。

「深谷がここに来る理由が、学校から消える。だから今、五分を使って、消えない形にする」

 扉の外でまた足音が止まり、今度は明らかに立ち止まったまま動かない。

 陸が出席簿を持って戻り、声を潜めた。

「……先生、外、誰か」

 静は出席簿を開いたまま、扉のほうを見ずに言った。

「気にするな。深谷、今から質問する。答えられるところだけでいい。だけど、黙るなら黙るでいい。黙った分、別の方法を探す」

 チカが息を吸った。掃除のときより、ゆっくり。

「……質問、なに」

 静がペンを握り、紙に先に線を引いた。

「まず。深谷が『汚いのが嫌』って言った汚さは、床のことだけじゃないだろ」

 チカの指が膝の上で、きゅっと握られた。

 扉の外で、咳払いがもう一度。

 静はペン先を止めずに、次の線を引く。

「次。明日、昼休み。私と陸で校外に出る。ハローワークの窓口、予約取れるか確認する。深谷も来るか」

 チカが顔を上げた。

「……制服で?」

「制服で。学校の許可は取る。取れなきゃ放課後にする」

「……教頭、許すの」

 静の目が細くなる。

「許させる。『数字』を持っていく」

 陸が出席簿のページを押さえながら、深谷を見る。

「深谷、来たほうがいい。外の人は、点数より手の動き見ることある」

 チカは湯呑みを両手で包んだ。湯気で指先が少し赤くなる。

「……五分、もう過ぎた」

 静は時計を見ない。

「過ぎた。延長するなら、深谷が決めろ」

 チカはしばらく黙って、窓の外の薄暗い校庭を見た。グラウンドの砂が風で舞って、照明に浮いている。

 その砂を、チカは見てしまったみたいに目を細めた。

「……明日、行く」

 静がペンを紙に走らせる音が、小さく部屋を満たした。

「よし。じゃあ次。出席を戻す計画を立てる。現実は厳しい。だから道を増やす」

 扉の外の足音が、ようやく遠ざかっていった。


 翌日の昼休み。校舎の一階は、購買に向かう足音でざわついていた。

 深谷チカは端の壁際に立ち、廊下の流れを見ている。手には小さなメモ帳。ペン先で、床に描かれた見えない線をなぞるみたいに動かしていた。

 相沢陸が弁当袋をぶら下げて寄ってくる。

「深谷、飯は?」

「あと」

「昨日もそれ言ってた」

 チカは購買の列を見たまま言う。

「今、先」

 陸がため息をついて、静のほうを見る。

 桐生静は、職員室の出入口に近い位置で立っていた。腕時計を一度見て、スマホをポケットに戻す。許可を取りに行くタイミングを測っている顔だ。

「先生、今日……外、ほんとに行けるんすか」

「行けるようにする。『第三が勝手に動いた』って言われないようにな」

 その言葉のすぐ後、職員室の中から視線が刺さった。扉のガラス越しに、教員の誰かがこちらを見ている。静は見返さない。

 チカが急に歩き出した。

「そこ、危ない」

 陸がきょとんとする。

「え、俺?」

 チカは陸の足元を指さした。廊下の床に、購買の紙袋が落ちている。人の流れで蹴られ、つるっと滑りそうな位置だ。

「今、誰か踏む」

 陸が拾おうとした瞬間、前から走ってきた一年生が紙袋を踏み、足を取られた。

「うわっ……!」

 転びかけた肩を、チカが横から支えた。体を入れる位置が迷いなく、ぶつからない角度だった。

 一年生が目を丸くする。

「す、すみません……」

「いい。ここ、通るな」

 チカは紙袋を拾い、壁際のゴミ箱へ投げ入れない。口を押さえて、静かに落とす。ゴミ箱の縁に当たる音すら小さい。

 一年生が去ると、陸が言った。

「今の、反射神経すご」

 チカは廊下を見回して、今度は掲示板前で立ち止まる生徒の群れを見た。通路の真ん中が詰まり、後ろがつかえている。

 チカは掲示板に近づき、画鋲が一つ緩んでいるのを見つける。指で押し込み、紙をたわませないように四隅を揃えた。

 それでも群れは動かない。

「……ちょっと」

 チカが声をかけると、男子が振り返った。

「なに、掃除女」

 笑いが二、三人から漏れる。

 チカは顔色を変えない。視線を掲示板から廊下の床へ移し、指先で床の白線を示した。

「ここ、通路。見たいなら、壁に寄って」

「は? うざ」

「寄らないと、後ろが詰まる」

 男子が鼻で笑う。

「誰が困んだよ」

 チカは一拍おいて言った。

「困るのは、急いでる人。あと、ぶつかって喧嘩になる」

「喧嘩? お前がビビってんじゃん」

 陸が一歩出かけたが、静が袖を軽く引いた。静は動かず、チカに任せる。

 チカは男子の目を見たまま、声を少しだけ落とした。

「じゃあ、今ここで止まって。後ろ、押されるから」

「押されねーし」

 その瞬間、後ろから「すみませーん、通して!」と声が飛んで、群れの背中が押された。男子がよろけて前の女子にぶつかり、女子が「ちょっと!」と声を荒げる。

「だから言った」

 チカはそのまま、掲示板の横に立ち位置をずらした。壁に寄る見本を、言葉じゃなく体で見せる。群れが渋々、壁側へ寄っていく。通路が一本通った。

 静が小さく息を吐く。

 陸が目をぱちぱちさせた。

「……深谷、交通整理みたい」

 チカはメモ帳に何かを書いた。短い矢印を二つ。

「ここ、昼は危ない。掲示板、位置が悪い」

「それ、先生に言うの?」

「言っても、変えない」

「じゃあなんで書くの」

 チカはペンを止めずに言う。

「変える場所、探す」

 陸が笑いかけて、途中で止めた。笑ったら、からかいになる気がした。

 そのとき、背後から軽い拍手みたいな音がした。

「おー、またやってる。廊下のママ」

 別の男子がスマホを向ける。

「動画撮っとこ。『清掃員みたいな才能』ってやつ」

 周りがくすくす笑う。誰かが「就職先ここじゃん」と言った。

 チカの肩が一瞬だけ硬くなった。けれど振り返らない。振り返ったら負けだと決めている背中だった。

 陸が口を開く。

「お前ら——」

 静が先に言った。声は大きくないのに、通る。

「撮影禁止。校則読め」

 男子がスマホをひらひらさせる。

「先生、これくらい」

「これくらい、が一番面倒になる。消せ」

「はぁ?」

 静は近づかない。距離を詰めずに、言葉だけで止める。

「消さないなら、生活指導に回す。今、校内は揉め事に敏感だ。誓約書って知ってるか」

「……あー、あの」

 男子の顔色が少し変わる。最近の停学の噂がよぎったのが分かった。

 スマホが下がる。

「消せばいいんだろ」

 静は頷かない。視線を外さない。

「今」

 男子が舌打ちして、画面を操作する。周りの笑いが引っ込む。空気が冷えて、別のざわめきに溶けた。

 チカがやっと振り返った。静ではなく、スマホを持つ男子に向けて。

「……撮るなら、足元も撮って」

 男子が眉をひそめる。

「は?」

 チカは床の一点を指した。濡れた靴跡が、購買前から続き、曲がり角まで伸びている。雨の日の名残で、滑りやすい。

「そこ、滑る。さっきの一年生、転びかけた」

「知らねーし」

「知ってから言って」

 男子が言い返す前に、通りかかった女子が「え、ほんとだ」と足を止めた。別の生徒が「やべ、ここツルツル」と言って、壁に手をついた。

 チカは雑巾を持っていない。なのに、動き出した。近くの清掃用具入れを開ける。中の雑巾を一枚取り、バケツは使わず、濡れ跡の端から端まで、足の流れに逆らわない方向に拭き取っていく。

 拭く順番が妙だった。角からではない。人が踏む位置から先に消していく。通路を完全に塞がないように、半分ずつ。

 陸が小声で言う。

「……効率じゃなくて、人の流れ優先してる」

 静が答える。

「動線。止めると苛立つ。苛立つと、余計な衝突が起きる」

 陸が喉を鳴らした。

「掃除って、心理戦なんすか」

「現場は全部そうだ」

 チカが拭き終えると、濡れ跡は消えた。床が乾くのを待たず、雑巾を用具入れに戻し、手を洗いに行くでもなく、手袋をはめ直した。

 さっきの男子が気まずそうに言った。

「……別に、転べとか思ってねーし」

 チカは歩きながら返す。

「思ってなくても、起きる」

 その言葉が、男子の口を閉じさせた。

 陸が追いかける。

「深谷、さっきの、なんで『足元も撮って』って言ったの」

 チカは少しだけ間を置いて言う。

「笑うなら、全部見せればいい」

「全部?」

「床だけじゃない。人も」

 静が後ろから言う。

「深谷。今のは、記録になる」

 チカが振り向いた。

「……なにが」

 静はポケットから小さなメモを出した。陸が昨日作った面談記録の簡易フォームだ。項目の中に「具体行動」「安全配慮」「周囲への影響」がある。

「『危険予測』『誘導』『衝突回避』『作業手順』。言葉にする。提出できる形にする」

 チカが眉を寄せる。

「そんなの、誰が読むの」

「読む人がいる場所へ持っていく。学校の外だ」

 静の視線が職員室のほうへ流れた。ガラス越しの影がまた動く。誰かが立ち上がった気配。

 静はそれを無視して、チカに近づきすぎない距離で言った。

「昼休み、外に出る。許可は今から取りに行く。黒川に通す」

 陸が息を止める。

「……今からっすか」

「今しかない。今日中に決着、って圧が来てる」

 チカが小さく笑った。笑ったというより、口角が引きつっただけだ。

「先生も、汚いの嫌い?」

 静は即答しない。代わりに、職員室の扉に手をかけた。

「嫌いだ。だから拭く。拭ける範囲を増やす」

 扉が開く音がして、職員室の空気が流れ出た。中の会話が一瞬止まり、こちらに視線が集まる。

 静は振り返らずに言う。

「深谷、ここで待て。陸、時間を記録。何分で許可が出るかも『数字』だ」

 陸が頷き、スマホのストップウォッチを押す。

「了解」

 チカは廊下の真ん中に立たず、壁際に寄った。通路を空ける。誰もぶつからない場所を選んで、静の背中を見送った。

 静が職員室に入った瞬間、扉の向こうから低い声が聞こえた。

「また第三か」

 チカの指が、手袋の上からメモ帳を強く押さえた。

 陸が囁く。

「深谷。行ける。たぶん」

 チカは返事をしない。その代わり、廊下の先に落ちている小さな消しゴムのカスを見つけて、靴の先で踏まない位置に寄せた。誰にも気づかれないくらいの動きで。

 職員室の中で、誰かが椅子を引く音がした。次に、聞き慣れた硬い声が、扉越しにかすかに混じる。

「……外部に頼る前に、まず校内の秩序を——」

 陸がチカの横で、息を飲んだままストップウォッチを見つめ続けた。


 職員室の扉が開いて、桐生静が出てきた。

 歩幅がいつもより小さい。手には外出許可の紙。印鑑の朱が乾ききっていない。

 相沢陸がストップウォッチを止める。

「九分四十二秒」

 静が紙をひらりと見せた。

「出た。ギリ」

 深谷チカが紙の朱を見つめる。

「……ほんとに、出るんだ」

「出ないと困る人間がいるからな」

「先生?」

 静は答えずに歩き出した。

「行くぞ。昼休み終わるまでに、一本目」

 陸が慌ててついていく。

「一本目って、何本回るつもりなんすか」

「見せたいのは仕事だ。窓口だけじゃ足りない」

 校門を出ると、冬の風が頬を刺した。チカが手袋の指を握り直す。

 静は駅前のハローワークではなく、まずホテルのほうへ向かった。古いビジネスホテル。外壁はくすんでいるが、玄関前のタイルは妙に整っている。

「ここ?」

 チカが小さく言う。

「泊まるとこじゃん」

「泊まるとこは、誰が保ってる」

 静が自動ドアをくぐる。

 ロビーは狭い。消毒液の匂いが薄く漂う。フロントの横に「客室清掃スタッフ募集」の紙が貼られていた。

 陸が目を丸くする。

「ガチで求人ある」

 静はフロントに声をかけた。

「すみません。学校の進路指導で。以前お電話した桐生です」

 フロントの女性が顔を上げ、すぐに奥へ声をかけた。

「主任ー、昨日の件の」

 奥から出てきたのは、黒いベストの女性だった。名札に「客室管理 佐伯」とある。

「桐生先生? どうぞ。時間、短めでいいですか」

 静が頷く。

「昼休みなので。生徒二人、見学だけ」

 佐伯がチカの手元を見る。手袋。爪。袖口。視線が一瞬で上下する。

「……清掃、やってる子?」

 チカが反射で言う。

「学校の、廊下だけ」

 佐伯が小さく笑った。

「廊下だけで、その手はならない。雑巾の使い方、知ってる手」

 チカが言葉を失う。自分の手袋を見た。

 静が言う。

「深谷。これが現場の目だ。見てるのはテストじゃない。手と段取り」

 佐伯が手を叩く。

「じゃ、客室一つだけ。今、ちょうどチェックアウト後で空きがある。撮影はなしね」

「はい」

 エレベーターに乗ると、チカが壁のボタン周りを見た。指紋の残り方まで見ている。

 陸が小声で言う。

「深谷、落ち着け。顔怖い」

「見てるだけ」

「いや、見過ぎ」

 三階で降りる。廊下はカーペットで、足音が吸われる。佐伯が鍵を開けた。

「入る前に。ここ、仕事で一番大事なの何だと思う?」

 陸が手を挙げかけてやめた。

 チカが言う。

「……汚れを取る」

 佐伯が首を振る。

「惜しい。『事故を起こさない』。次が『クレームを出さない』。汚れはその手段」

 静がチカを横目で見た。

「動線と安全、って言ってたな」

 チカは唇を噛む。

 部屋に入ると、ベッドが二つ。窓際のテーブル。ユニットバス。見慣れた“整ってる”空間が、作られる前の乱れで残っていた。シーツの皺。コップの水滴の輪。バスの鏡の曇り跡。

 佐伯は入口で立ち止まった。

「まず、見る。触らない。何が危険か」

 チカの視線が床に落ちる。カーペットの端に、髪の毛が一本。コインみたいなものが落ちている。濡れたタオルが椅子にかけられている。

「……あれ、コイン。踏むと滑る」

 佐伯が頷く。

「正解。あと、タオル。濡れたまま触ると手袋が汚染される。次の部屋に持っていく」

 陸が眉をひそめた。

「汚染って言い方、病院みたい」

「ホテルは小さい病院だよ。胃腸炎もインフルも来る。客は言わない」

 佐伯が手を伸ばし、持ってきたペンでチェック表を示した。項目が細かい。ベッド下、リモコン、ドアノブ、スイッチ、ポットの口。

 チカが覗き込む。

「……こんなに」

「クレームはここから来る。見える汚れより、触る汚れ」

 静が口を挟む。

「深谷の『人が触るところ優先』と同じだ」

 佐伯が笑う。

「先生、よく見てる。で、次。段取り。清掃は早いだけじゃダメ。早くて、同じ品質」

 陸が腕を組む。

「でもこれ、時間かかりそう」

 佐伯が即答する。

「一部屋、目標二十五分。繁忙期は二十。新人は三十五。遅いと、チェックインに間に合わない。間に合わないと、フロントが燃える」

 陸が口を開けた。

「二十……」

 チカが小さく言う。

「……無理」

 佐伯はチカのほうを見た。

「無理って言う子、だいたい伸びる。無理って分かってるから」

 静が言う。

「現実を見てる。いい」

 佐伯が続ける。

「ここから先は、実際の動き。見るだけね」

 佐伯は一気に動いた。ゴミ袋を二重にして口を結ぶ。リネンをまとめる手が速いのに、音がしない。濡れたものと乾いたものを分け、手袋を替えるタイミングが決まっている。

 チカの目が追いつかない。視線だけが忙しい。

 陸が囁く。

「早送りみたい」

 佐伯がベッドの角を整えながら言う。

「早い人は、手が早いんじゃなくて、迷わないの。迷わないために、手順がある」

 チカが思わず口を挟む。

「……順番、決まってる?」

 佐伯が頷く。

「決める。自分で。うちは基本は教えるけど、最終的にはその人の最短を作る。監督になる人は、全員の最短を作る」

「監督……?」

 静がチカに言う。

「現場監督。清掃の。『自分がやる』から『人ができるようにする』に上がる」

 チカが眉を寄せる。

「……そんなの、高学歴の人がやるやつじゃないの」

 佐伯が笑った。

「学歴より、現場の信用。時間守る、事故起こさない、嘘つかない。あと、報告できる。これ」

 佐伯がチェック表を指で叩く。

「書けない人は上がれない。書ける人が上がる。だから先生が連れてくる子、ありがたい」

 陸が静を見る。

「先生、外部協力ってこういう……」

 静は小さく頷いた。

「学校の評定じゃなくて、現場の評価を取りに行く」

 チカが部屋の隅を見た。カーテンの裾。埃が溜まりやすい角。そこを佐伯が最後に指でなぞり、白い布で一度だけ拭う。

「……最後、そこ?」

 佐伯が答える。

「最後にやる。途中でやると、また落ちるから。『やった感』は意味ない」

 チカが喉の奥で小さく息を吸った。胸のあたりが、じわっと熱くなる。言葉が出ない代わりに、視線が揺れた。

 静が気づいて、わざと淡々と言う。

「深谷。これが仕事だ。『掃除してるだけ』じゃない」

 チカが小さく頷く。頷き方が、いつもより深い。

「……ここ、静か」

 佐伯が手を止める。

「静かなのは、客が安心するから。あと、チームが揉めないから。音はストレスになる」

 陸が口を尖らせる。

「俺、家でドタドタ歩くから怒られる」

 チカが初めて陸を見て言った。

「……怒られて当然」

「ひど」

 佐伯が笑い、静も口元だけ動かした。

 静が腕時計を見る。

「時間だ。佐伯さん、ありがとうございました」

 佐伯が名刺を差し出した。

「見学だけじゃもったいない。職場体験、受け入れできる。学校の許可が要るなら書類出すよ」

 静が受け取る。

「助かります。こちらも必要書類まとめます」

 チカが名刺をじっと見た。

「……職場体験って、私でも?」

 佐伯が即答する。

「条件はある。遅刻しない。連絡できる。あと、手荒れ対策は自分で。続けるなら皮膚科も行く。仕事は体を壊したら終わり」

 静が言う。

「現実だ。けど、条件が分かれば対策できる」

 チカは名刺から目を上げた。うまく言葉にできないまま、喉の奥が詰まる。息を飲む音だけが小さく出た。

 陸が気づいて、わざと軽く言う。

「深谷、顔赤いっすよ。風邪?」

 チカが首を振る。早く。

「……違う」

 静が出口へ促す。

「次、ハローワーク。求人票を見て、時給と時間と正社員登用の欄を読む。夢じゃなく条件で選ぶ」

 廊下に出ると、ホテルの静けさが戻った。エレベーターを待つ間、チカがぽつりと言った。

「……ああいうの、できる人、いるんだ」

 静が言う。

「いる。深谷も、できる側だ。問題は、学校がそれを点にしないこと」

 陸が唇を噛む。

「点にできないなら、どうすんすか」

 静はホテルの自動ドアの向こう、街の雑踏を見た。

「点にする場所へ連れていく。今日みたいに」

 外に出ると、風がまた強かった。チカは手袋を握り直し、歩き出す。

 その背中は、さっき廊下で笑われていた時より、ほんの少しだけ真っ直ぐだった。


 ハローワークの掲示板は、紙の匂いがした。

 求人票の列が、数字で埋まっている。時給、交通費、シフト、社会保険、正社員登用。

 桐生静はカウンターの端で、担当者から渡された資料を受け取った。相沢陸は横でメモを取っている。深谷チカは、求人票の前から動かない。

 指先が、紙の端をそっと押さえる。めくり方が丁寧すぎて、逆に時間がかかる。

 静が言う。

「深谷。見るのは三つ。時給、勤務時間、登用。好き嫌いは後でいい」

 チカが小さく頷く。

「……時給、千百」

「高校生のバイトじゃない。社会保険の有無も見ろ」

 陸が口を挟む。

「これ、ホテル客室清掃。正社員登用あり、って書いてある」

 チカの目がその行に止まった。

「……登用、あり」

 静が言う。

「あり、は約束じゃない。けど、枠がある会社を選べば確率は上がる」

 チカが紙を胸の前で握りしめる。熱がまだ残っているみたいな手つきだった。

 陸が時計を見る。

「先生、学校戻る時間……」

「戻る。外出許可は時間厳守だ。遅れたら次が潰される」

 帰り道、チカはほとんど喋らなかった。歩く速度だけが少し速い。胸の中の熱を、風で冷ましたいみたいに。

 校門の前で静が言う。

「深谷。今日のまとめ。求人票、コピーして渡す。家に持ち帰って話せ」

 チカが一瞬、足を止めた。

「……話す、って」

「家庭の了承は要る。職場体験も、就職も」

 陸が小さく言う。

「……家、厳しい感じ?」

 チカは答えず、紙を鞄に押し込んだ。押し込み方が荒い。

 静が続ける。

「反対されたら、理由を持って来い。感情じゃなく、条件と数字で返す」

 チカの喉が動く。

「……数字で、返せば、勝てる?」

「勝てるとは言わない。引き分けに持ち込める」

 チカはそれ以上言わず、校舎へ入っていった。

 ***

 放課後。第三進路室の窓は薄く曇っていた。

 静は机の上に求人票のコピーを並べる。陸が面談記録の欄に「ホテル見学」「担当者名」「求人票番号」を書き込んでいく。

 扉がノックされた。

「……入るよ」

 チカが入ってきた。顔色が昼より白い。鞄の口が開いたまま。

 静が椅子を指す。

「座れ。話せる分だけでいい」

 チカは座らず、立ったまま鞄から紙を出した。くしゃっと折れ目がついている。

「……これ、見せた」

 陸が息をのむ。

「家に?」

 チカが頷く。目線が床に落ちる。

「母に。そしたら……笑った」

 静は反応を急がない。ペンを置き、両手を机の上に出した。

「何て言われた」

 チカの口が開く。声が細い。

「『あんた、そんな底辺の仕事が似合うって言われて嬉しいの?』って」

 陸が思わず言う。

「……底辺って、何だよ」

 チカが陸を見ないまま続ける。

「『掃除なんて誰でもできる』って。『ホテルで人のゴミ片付けるとか惨め』って」

 静が言う。

「母親は、何を守りたい」

 チカが眉を寄せる。

「……知らない」

「深谷の体裁か、家の体裁か、生活か。どれだ」

 チカの肩が小さく揺れた。

「……父が、そういうの嫌い。『女はちゃんとしたとこに嫁げ』って。母は、父の前で私の進路の話するの怖い」

 陸が唇を噛む。

「じゃあ、父親が——」

「父は、今日いなかった」

 チカが紙を握り直す。指先が白い。

「母が言った。『偏差値の低い高校行った時点で恥なのに、仕事まで恥にするの?』って」

 静が静かに言う。

「言葉が雑だな」

 チカがかすかに笑う。笑ってない。

「……そういう人」

 陸が机を叩きかけて、手を止めた。

「先生、あれっすよ。説得しましょうよ。ホテルの主任さん呼んで」

 静が首を振る。

「外部の大人を連れていけば勝てる、って話じゃない。家の中は別のルールで動く」

 陸が黙る。

 チカが言った。

「母は、私が働くのも嫌がる。『家のことしなさい』って。弟の世話とか。だから私、授業サボって……家に戻ってた」

 静は目を細めた。責める目じゃない。計算する目だ。

「家事の負担がある。出席が落ちる。卒業が危ない。そこに『底辺』のレッテル。……深谷、今の家で、何が一番現実的に困る?」

 チカが答える前に、ドアの外で足音が止まった。紙が擦れる音。誰かが通り過ぎるふりをして、聞いている。

 陸が視線を泳がせる。

 静は声量を変えない。

「困るのは、卒業できないことだ。次がなくなる」

 チカの喉が鳴った。

「……でも、家に逆らったら、居場所がなくなる」

 静が言う。

「逆らうか従うか、二択にするな。第三の選択肢を作る」

 チカが顔を上げた。

「第三?」

「職場体験を『就職』にしない。まず『見学』と『体験』だけ。家には、学校のプログラムとして説明する。本人のわがままじゃない形にする」

 陸が頷く。

「学校の行事っぽくするってことっすね」

 静が続ける。

「それでも反対なら、次。『家計』の話を避けずに出す。時給と勤務時間、交通費。弟の世話の時間。家事分担。数字で交渉する」

 チカが唇を噛んだ。

「……母、数字嫌い。感情で来る」

「感情で来るなら、こちらも感情を捨てる。条件だけ言う。怒鳴られたら、引く。次の機会を作る」

 チカが小さく首を振る。

「そんなの……ずるい」

「ずるくていい。生き残るほうが先だ」

 陸が声を落とす。

「深谷、家、出るとかは……」

 チカが即座に言った。

「無理。金ない」

 静が言う。

「今は出ない。出る話は最後だ。まず学校を出る。次に働く場所を作る。その順番」

 チカの目が潤んだように見えたが、瞬きを増やして押し戻した。

「……私、今日、ホテルで……」

 言いかけて、言葉が詰まる。胸の熱が、家の言葉で冷やされて、また戻ってきたみたいに。

 静が促す。

「何だ」

 チカは拳を握った。

「……嬉しかった。『手が仕事してる』って言われたの。初めて」

 陸が黙って頷く。

 チカが続ける。

「でも家では、恥って言われる。……じゃあ、私、どこで生きればいいの」

 静はすぐに答えない。机の求人票を一枚、チカのほうへ滑らせた。

「ここで生きる。って決めるのは、まだ早い。けど、候補は増やせる」

 チカの指が紙の上に触れた。折れ目のついた自分の紙より、まっすぐな紙。

 静が言う。

「明日、母親に電話していいか」

 チカの目が跳ねた。

「……やめて。余計こじれる」

「電話じゃなくてもいい。面談の案内文を出す。学校の形式で。『進路相談』として」

 陸がすかさず言う。

「そうだ、学校からの紙って強いっすよ。うちも親、紙には弱い」

 チカが苦笑いしかけて、すぐ消した。

「……母、紙見ても、父に見せない」

 静が言う。

「父に見せる必要はない。母親とだけ、まず合意を取る。弟の世話の時間も含めて」

 チカが小さく言う。

「……私のこと、守る気ないよ」

 静が言葉を選ぶ。

「守り方が下手なだけの親もいる。守る気がない親もいる。どっちかは、会って確かめる」

 ドアの外で、また足音が遠ざかった。聞き耳が離れた気配。

 静は机の端に置いた通達メモを、裏返しのまま指で押さえる。年度末までに。五件。

「深谷。職場体験の受け入れ先、書類を作る。学校に出す。許可が降りれば、母親に『学校の活動』として提示できる」

 チカが息を吸う。

「……許可、降りるの」

 静が答える。

「降ろす。第三は今、成果を出せって言われてる。外部連携は『成果』になる」

 陸が小声で言う。

「教頭が、数字欲しがってるのは、こういう時だけ助かるっすね」

 静が陸を見て、短く言う。

「油断すんな。数字のために切られるのも同じだ」

 チカが紙を胸に抱えた。

「……私、明日、家でまた言われたら」

 静は椅子を引き、立った。

「言われたら、ここに来い。逃げ場所としてじゃなく、作戦を立てる場所として」

 チカが頷いた。小さい頷き。

 静がドアに手をかける。

「陸、記録。今日の面談、家庭反対。次のアクションは『保護者面談案内文』と『職場体験申請』」

 陸がペンを走らせる。

「了解」

 静が振り返り、チカに言った。

「深谷。明日、母親に渡す文面、今夜作る。お前は弟の世話の時間、正確に書いて持ってこい。嘘は要らない。数字だけ」

 チカが紙を握りしめたまま、かすかに頷いた。

「……分かった」

 第三進路室の外、廊下の向こうでチャイムが鳴った。部活へ向かう足音が増える。

 静は扉を少しだけ開け、廊下の流れを確認してから言った。

「じゃあ次。母親を呼ぶ前に、校内の許可を取りに行く。ここで詰まったら全部止まる」

 陸が立ち上がった。

「俺も行きます。記録係」

 チカは立ち尽くし、扉の隙間から見える廊下の人の流れを見た。

 自分が整えたはずの動線が、今日も勝手に歪んでいくのを見ているみたいだった。


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