成績表に書けない才能

深渡 ケイ

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第27話:最後の面談

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 第3進路室のドアは、開けた瞬間に紙の匂いがした。

 机の上だけじゃない。床にも、椅子の背にも、ファイルが積まれている。付箋が飛び出し、クリアファイルの角がぶつかって、軽い音を立てた。

 相沢陸は鞄を下ろす前に立ち止まった。

「……なにこれ」

 桐生静は椅子に沈み、ペンを回す手を止めない。

「最後の面談週間。三年全員分。あと二次募集の追加。あと、外部連携の提案書。昼までって言われたやつ、覚えてる?」

「覚えてる。忘れられるわけないだろ」

 陸は机の端に置かれた紙束を一枚持ち上げた。裏に赤字がびっしりだ。

「これ、同意書?」

「そう。保護者サインが要る。端末貸与の誓約書も。紛失したら弁償、って文言が刺さるけど、刺さるからって外せない」

 陸は眉をしかめたまま、紙を戻した。

「……教頭のやつ?」

 静は「教頭」と言わずに、視線だけで廊下の方を示した。壁越しに、あの圧がまだ残っているみたいに。

「学校の条件。守らないと『第3』ごと切られる」

 陸は椅子を引いて座りかけ、やめた。紙の山に触れた指先が、少しだけ震えた。

「切られるって、俺らのせい?」

「違う」

 静は即答した。言い切ったあと、ペン先で資料の端を揃える。

「数字の話。進学実績の話。学校の看板の話。……それに、私が目立ちすぎた」

 陸は鼻で短く笑った。

「目立つなって、無理だろ。こんな部屋作っといて」

 静は笑わない。

「無理なら、別の形にする。今ある形を守るために、手続きは全部通す」

 陸は鞄から筆箱を出し、机の空いている角に置いた。

「何すればいい」

 静は紙束を二つに分け、陸の方へ滑らせた。

「この面談予約表。空き枠に名前入れて、担任のところに確認取りに行って。印鑑が要るやつは付箋つけてる」

 陸は紙束をめくり、そこに並ぶ名字を眺めた。知らない名前も、知ってる名前も混ざっている。進路欄の空白が目に刺さる。

「……最後の面談って、もう決まってるやつの確認じゃないの」

「決まってる子は確認。決まってない子は、今日で決める」

「今日で?」

 静は椅子の背にもたれず、前のめりのまま言った。

「期限がある。二次募集の出願も、就職票も、通信の願書も。『考えます』で終わらせると、明日には選択肢が減る」

 陸は黙って頷いたが、目は落ち着かない。

「ミオ先輩は?」

 静の手が一瞬止まった。ペン先が紙に触れず、空中で止まる。

「二次の学校に見学入れた。母親には連絡した。……圧は強い」

「働け、って?」

「そう」

 静は答えたあと、ペンを置き、机の引き出しを開けた。中から封筒を二枚出し、陸の前に置く。

「これ、ミオの調査書申請。職員室に持ってって、事務に回して。急ぎって言って」

 陸は封筒を手に取った。

「急ぎって言ったら、嫌な顔されるやつだ」

「される。けど、やる」

 陸は唇を結んだ。

「……俺が行くの?」

「行ける?」

 問い返しはしない。静の声は淡々としていた。できるか、できないか。そこだけ。

 陸は封筒を鞄に入れず、胸の前で持った。

「行く。嫌な顔されても、行く」

 静は小さく頷いた。

「ありがとう。戻ったら、次は電話。見学の時間、本人に合うか確認する」

「本人って、ミオ先輩?」

「そう。あと、シキ」

 陸の目が上がった。

「シキ……あいつ、今日も来るの?」

 静は机の端に置かれたスマホを見た。画面は伏せてある。通知は見えない。それでも、沈黙が答えみたいだった。

「今夜の漫喫、早めたいって連絡が来た」

 陸の指が封筒を強く握る。

「家、やばいの?」

 静は言葉を選ばない。選んで薄める時間がない。

「居場所が揺れてる。だから、揺れてる間にルートを作る。就労支援の窓口も、住まいの相談も、繋げる。学校だけじゃ無理なところは外に出す」

 陸は顔をしかめた。

「でも、外に出すって言ったら、教頭が……」

「言う」

 静は頷いた。

「『学校の責任範囲外だ』って。『余計なことをするな』って。だから、書類で殴る。連携の同意書、誓約書、管理計画。条件を全部揃えて、文句を言わせない形にする」

 陸は封筒を持ったまま立ち上がった。

「……それ、殴ってるの?」

「殴ってる」

 静はさらっと言い、積み上がったファイルの一番上を開いた。中には、面談メモがぎっしり挟まっている。

「陸。面談、見てて気づいたことある?」

「え?」

「『この子はこれができる』って、成績表に書けないやつ。メモして。言葉にするの、手伝って」

 陸は口を開きかけて、閉じた。自分の中に、思い当たる顔がいくつも浮かぶ。

「……わかった」

 静は机の上の小さなメモ帳を陸に投げるように渡した。陸は受け取り、ぱらっと開く。

「書けるかな」

「書ける。お前、もう見てる。見てるやつは書ける」

 静の言い方は、励ましじゃない。確認に近い。現実の作業としての「言語化」。

 廊下の向こうで、誰かの足音が止まった気がした。ドアの前で、短く咳払い。視線が刺さるような気配だけが残り、また遠ざかる。

 陸はドアを見たまま言った。

「……監視?」

「気にするな。気にしたら手が止まる」

 静は資料の端を叩いて揃えた。

「昼までに提案書の体裁を整える。面談は午後から詰める。ミオの件は今日中に母親の同意を取る。取れないなら、別の道も用意する」

 陸は喉の奥で短く息を吐いた。

「別の道って、何」

「通信。定時。就職。家から出られるなら寮のある職業訓練も。『不合格』で終わりにしない」

 陸は小さく頷き、ドアノブに手をかけた。

「職員室、行ってくる」

「行け」

 静は顔を上げずに言った。

 陸がドアを開けると、廊下の冷たい空気が入り込んだ。封筒を胸に抱え、歩き出す。数歩先に、職員室の方向。視線の影がどこかにある気がしても、足は止めない。

 背後で静の声が飛んできた。

「戻ったら、シキに電話する。先に番号、メモしとけ」

 陸は振り返らずに手を上げた。

「了解」

 ドアが閉まり、第3進路室はまた紙の匂いだけになった。

 静はスマホを手に取らず、まず、提案書の一枚目に日付を書き入れた。ペン先が紙をかすめる音が、やけに大きく響く。

 次に鳴るのは、電話か、ノックか――静は机の上の資料をもう一段、崩れないように積み直した。


 職員室から戻った陸の手には、朱肉の匂いが染みていた。

「事務、通った。嫌な顔はされた」

「される仕事だ」

 静は封筒を受け取り、机の山の隙間に差し込んだ。視線は次の書類へ移る。

「提案書、あと表紙だけ?」

「名簿の並び、これでいいのか」

 陸が指でなぞると、静はすぐに頷いた。

「出席番号順。誰が見ても逃げ道がない形にする」

「逃げ道って……」

「『管理できないから無理』って言わせない」

 陸は唇を噛み、椅子の背に鞄を掛けた。ドアの向こう、廊下の気配が落ち着かない。誰かが通るたび、足音が一瞬遅くなる。

 ノックが二回。

「どうぞ」

 ドアが少しだけ開いた。隙間に見えたのは、見慣れない制服じゃない。ブレザーの袖が少し擦れて、肘のところが白くなっている。

「……桐生、いる?」

 低い声。レオだった。

 髪は短くなっていた。前に来たときより、頬が少しこけている。だが目は逃げていない。逃げないように、固めているようにも見えた。

 静は椅子から立ち上がらない。座ったまま手で椅子を引き、向かいの席を示した。

「座れ。久しぶりだな、レオ」

 レオは一瞬だけ陸を見た。

「……誰」

「相沢。二年。手伝い」

「へえ」

 レオは椅子を引く音を立てずに座った。机の上の紙の山を見て、鼻で笑う。

「相変わらず、戦場だな」

 静はペンを置いた。

「中退届、まだ預かってる」

 レオの肩がわずかに動いた。笑いが消える。

「……それ、まだ効くの」

「効く。出してないからな。だから今日は、出すか、出さないかを決める」

 レオはポケットからスマホを出し、机に置いた。画面は割れていない。ケースだけが擦れている。

「決めるって言われてもさ」

「言われなくても期限が来る。卒業まで一年切ってる。今のままなら出席日数が足りない」

「脅し?」

「事実」

 静は淡々と返した。机の引き出しから一枚の出席状況表を出し、レオの前に置く。

 レオは見ない。目線を紙の端に置いたまま、指で机を二回叩いた。

「俺、学校来るとさ。息できなくなるんだよ」

 陸が小さく息を呑んだ。静は「そうか」とも「大丈夫」とも言わない。

「来られない理由は分かった。じゃあ、来られる形に変える。今の選択肢は四つ」

 レオが顔を上げる。

「四つもあんの」

「ある。ただし全部、楽じゃない」

 静は紙をもう一枚出した。通信制のパンフ、定時制の募集要項、就労支援の窓口メモ、そして在籍のままの特別課題の案内。

 レオはパンフを指で弾いた。

「通信って、家でやるやつ?」

「基本はそう。スクーリングがある。レポート提出もある。サボれば落ちる」

「じゃあ無理じゃん」

「無理にするか、工夫するかだ」

 レオは笑ったようで、笑っていない。

「工夫ね。お前、なんでもそれで押し切るよな」

 静は返す。

「押し切らない。選ぶのはお前」

 レオが椅子の背にもたれた。天井を見て、舌打ちを飲み込む。

「中退したら、働くしかない?」

「働くか、職業訓練か。どっちにしても、未成年で高卒資格なしは選べる仕事が狭い。面接で落ちる確率も上がる」

「資格ってそんな効く?」

「効く。現場の人間も、最初のふるいは紙でやる。中身を見る前に落とされる」

 陸が口を挟む。

「……でも、レオ先輩、手先器用じゃん。前、見た。あの……」

 レオが陸を睨む。陸は言葉を引っ込めた。

「俺の何を見たんだよ」

 陸は喉を鳴らした。

「第19話……じゃなくて、前に第3に来たとき。ノートの端、ずっと描いてた。ロゴみたいなやつ。線、きれいだった」

 レオは一瞬だけ目を逸らした。机の上のスマホを指で回す。

「落書きだろ」

 静が言葉を繋ぐ。

「落書きを、仕事に近づける方法はある。デザイン系の専門、職業訓練校、通信で資格を取りながらバイト。どれも簡単じゃないが、ゼロよりはマシだ」

 レオは鼻で笑った。

「専門って金かかるじゃん」

「かかる。奨学金もあるが借金だ。給付は条件が厳しい。親の同意も要る場合がある」

 レオの指が止まった。

「親、無理。話したくない」

 静は頷かず、否定もしない。

「じゃあ親抜きで動ける範囲から詰める。まず在籍を切らさない。次に出席日数の穴を、別の形で埋められるか確認する。学校の規定と県の規定、両方ある」

 レオが目を細める。

「そんな裏技あるの」

「裏技じゃない。制度。使うには条件があるし、学校が嫌がる」

 陸が思わず言った。

「教頭が……」

 静が陸を一度だけ見て、止めた。レオも察したように口角を上げる。

「偉い人、嫌がるんだ」

「嫌がる。だから書類で通す。今はそれしかない」

 レオは机の上の出席状況表をようやく手に取った。数字を見て、眉間が寄る。

「……こんなに欠けてんのか」

「欠けてる。埋めないと卒業はない」

 レオは紙を戻し、静の目を見た。

「じゃあさ。俺がここに来る理由、もう一個ある」

 静は「言え」と急かさない。沈黙が一拍だけ落ちた。

 レオは声を落とした。

「バイト先、切られた」

 陸が口を開けたまま固まる。静は頷かない。状況を聞く。

「理由は」

「シフト入れないって。俺、夜になると……寝れなくて、朝起きれなくて。遅刻して。二回目で終わり」

「収入は今、ゼロ?」

「ゼロ」

 レオは笑ってごまかそうとしたが、喉の奥で引っかかった。

 静は机の端に置いたメモを引き寄せ、ペンを取る。

「生活費は」

「家にいるから、飯はある。けど、いるだけで文句言われる」

「『働け』?」

 レオは眉を上げた。

「なんで分かるんだよ」

 静はペン先を止めたまま言う。

「最近その台詞が多い。学校にも家庭にも余裕がない」

 レオは息を吐き、椅子の脚を小さく鳴らした。

「で。俺、どうすりゃいい」

 静はメモを見せるように、机の上に置いた。

「今日決めるのは二つ。中退届を出すか、出さないか。出さないなら、今週の面談で『在籍継続の計画』を作る。出すなら、就労支援と職業訓練の窓口に繋ぐ。どっちも私が動く。ただし、どっちもお前が来ないと進まない」

 レオが唇を舐めた。

「来る、ってここに?」

「ここか、外の窓口か。選べ」

 レオは机の端のパンフに指を置いた。通信制の文字をなぞり、すぐ離す。

「……在籍、残したらさ。俺、また逃げたら?」

 静は即答しない。紙の山の向こう、閉じたドアを見た。廊下の足音がまた一瞬止まって、遠ざかる。

 静はレオに戻る。

「逃げるのは止められない。止めたいなら、逃げても戻れる形にする。連絡手段、面談日、課題の量、バイトの時間。全部、現実に合わせて削る」

 レオが小さく笑った。

「削るって言うと、楽になるみたいだな」

「楽にはならない。死なない程度にする」

 陸の手が机の端を掴んだ。レオはその手を見て、目を細める。

「お前、怒ってんの?」

 陸は言葉に詰まり、静を見る。静は陸に答えさせるように黙った。

 陸はゆっくり言った。

「怒ってない。……羨ましいだけ。逃げても戻れるって、言ってもらえるの」

 レオの眉が動いた。

「羨ましいって、何だよ」

 陸は視線を落とした。

「俺、逃げる前に諦めるから」

 静が短く言う。

「陸。今それ言うなら、面談のときに自分に言え。今日はレオの話だ」

 陸は頷いた。レオは沈黙を挟んで、静に言った。

「……出さない。中退届。まだ出さない」

 静は引き出しを開け、封筒を取り出した。中退届が入っている封筒だ。机の上に置くが、開けない。

「分かった。じゃあ次。今週、何曜日ならここに来られる」

 レオはすぐ答えない。スマホを取って画面を見た。予定は空白だらけのはずなのに、指が迷う。

「……火曜。午前なら」

「火曜午前。四限前、十時半。ここ。遅れてもいいが、来る。連絡は入れる」

 レオは頷いた。

 静は予定表に書き込み、次の紙を差し出す。小さな同意書だった。

「これ、外部窓口に繋ぐための同意。署名だけ。親の欄は空ける。今はお前の分だけで動けるところから行く」

 レオはペンを受け取り、ためらってから名前を書いた。字は乱れていない。むしろ丁寧すぎるくらいだった。

 書き終えた瞬間、レオはペンを置き、ぽつりと言った。

「……俺さ。卒業したいって言ったら、笑われる?」

 静は紙を受け取り、ファイルに挟んだ。顔を上げる。

「笑うやつはいる。学校にも、家にも。だから先に条件を揃える。笑わせない形にする」

 レオは口を開き、閉じた。代わりに椅子から立ち上がる。

「火曜、来る」

「来い」

 レオがドアに手をかけたとき、廊下から別の足音が近づいた。規則正しい、急がない音。職員の革靴だ。

 レオが一瞬、固まる。静は低く言った。

「レオ。顔上げろ。ここはお前が来ていい場所だ」

 レオは顎を上げ、ドアを開けた。廊下の空気が流れ込み、誰かの視線が刺さった。

 レオはそれを無視して歩き出す。

 静は机に戻り、面談予定表の次の枠に指を置いた。そこには、まだ空欄がひとつ残っている。

 スマホが震えた。画面には、短い通知。

「今夜、早めで。場所、いつもの」

 静は画面を伏せ、陸を見た。

「次、シキ。電話する。陸、外の音、聞いとけ」

「……誰か来る?」

「来るかもしれない。来たら、止める」

 静は受話ボタンを押した。呼び出し音が一回、二回と鳴る。


 呼び出し音が三回鳴って、切れた。

 静はすぐかけ直さない。スマホを伏せ、机の上の予定表に指を置いたまま止まる。

「出ないな」

 陸がドアの方を気にしながら言った。

「出ない時は、出ない」

 静はもう一度だけ発信し、今度は短く言った。

「桐生。今、学校。折り返せ」

 切って、スマホをポケットに入れる。

 その瞬間、ドアがノックもなく開いた。

 レオが戻ってきた。呼吸が少し速い。廊下で何か言われたのか、目の奥が硬い。

「……今、戻っていい?」

 静は顎で椅子を示した。

「座れ。何があった」

 レオは座らず、立ったまま机の端に指を置いた。紙の山がわずかに揺れる。

「さっき、職員に呼び止められた。『いつまでフラフラしてる』って」

 陸が「誰だよ」と言いかけて飲み込む。静は名前を聞かない。

「それで」

 レオは鼻で息を吐いた。

「で、思った。俺が残ったら、家が壊れる」

 静は動かない。レオの言葉が落ちた床を見ているみたいに、目線だけが低い。

「辞めたら?」

 静が聞く。

 レオは喉を鳴らし、言葉を絞り出す。

「辞めたら……俺が壊れる」

 陸が椅子に座ったまま、背筋を伸ばした。静はようやくレオを見る。

「どっちも壊れる、って言うなら、壊れ方を選べ」

 レオの眉が跳ねた。

「なにそれ」

「現実。『壊れない選択』は今ない。だったら、壊れ方を小さくする」

 レオは机を指で叩いた。さっきより強い。

「小さくって、どうやって測るんだよ」

 静は机の引き出しから、白紙のメモを一枚出して、レオの前に置いた。

「書け。残るメリットとデメリット。辞めるメリットとデメリット。口で言うと感情に飲まれる」

 レオは笑いそうになって、笑えない顔のままメモを睨んだ。

「そんなの、答え出るの?」

「出ないかもしれない。でも、出ないなら出ないなりに、条件を作る」

 陸が小さく言う。

「条件?」

 静が頷く。

「たとえば『在籍は残す、家にいる時間を減らす』。たとえば『辞めるなら、次の所属を先に決める』。所属が切れた瞬間、人は転びやすい」

 レオが舌を出して引っ込めた。

「所属って、学校とか」

「学校でも、バイトでも、訓練でも、支援でも。名札がある場所」

 レオはメモを手に取った。ペンを握るが、書かない。

「家が壊れるってさ」

 静は黙って待つ。レオは息を吸って吐いた。

「母親が、俺を見ると怒る。怒るっていうか……壊れそうになる。俺が家にいるだけで、あいつ、声が上ずるんだよ」

「金の話か」

「金も。あと、世間体。親戚に言われたって。『高校辞めた子がいる家』って」

 陸が机の端を見つめる。静は、淡々と確認を重ねる。

「父親は」

 レオの口角が歪む。

「いない。いるけど、いない」

「分かった」

 静はメモに短く書く。「家庭圧・金・世間体」。

 レオが静の手元を見て、苛立ったように言う。

「それ、書いたら何が変わるんだよ。母親が優しくなるわけじゃないだろ」

「優しくならない」

 静は即答した。

「だから、母親を変える案じゃなくて、お前が潰れない案を作る」

 レオが一歩、机に近づく。

「じゃあさ。俺が『残る』って言ったら、桐生が守ってくれんの?」

 静は視線を逸らさない。

「守れない部分がある。家の中までは入れない。学校の中も、全ては無理だ。教頭の条件もある」

 その言葉に、レオの肩が小さく落ちた。陸が悔しそうに唇を噛む。

 静は続ける。

「でも、道は増やせる。家以外の居場所、支援の窓口、学校の規定の範囲内での出席の組み立て。書類で通す。話は聞く。連絡は取る。そこまで」

 レオは声を荒げない。荒げる力がないみたいに、低く言う。

「……結局さ、決めるの俺?」

「そう」

 静は一拍も置かない。

「決めるのはお前。責任もお前。私が背負うと、お前は一生誰かの許可待ちになる」

 レオが目を細めた。

「責任って言葉、嫌い」

「好きで使ってない」

 静はメモをレオの方へ押した。

「でも、返す。返さないと、お前の人生が誰かの持ち物になる」

 レオはメモを睨み、ペン先を紙に当てた。小さく、短く書く。

「残る:卒業の可能性」

 次に、少し間を空けて書く。

「残る:母がキレる」

 陸が息を止めた。レオは続ける。

「辞める:家が静かになる」

 ペンが止まる。紙の上で小さく震えた。

「辞める:俺が終わる」

 静はその言葉を拾い上げない。代わりに、静は質問を変える。

「『終わる』って、何が終わる」

 レオは唇を噛んだ。目が泳いで、机の角を見る。

「……俺、もう自分のこと、説明できなくなる。どこ行っても『辞めたやつ』って言われる。自分でもそう思う」

 静は頷かない。ペンを取り、レオのメモの余白に線を引く。

「じゃあ『辞める』を選ぶなら、条件を付ける。『辞めたやつ』じゃなくて『次に行ったやつ』にする」

 レオが顔を上げる。

「次って?」

「職業訓練。就労移行は年齢で難しい場合もあるが、若者サポートステーションみたいな窓口はある。自治体の相談もある。今夜は無理でも、今週中に予約を取る。辞める前に」

 レオは鼻で笑った。

「また書類で殴るの?」

「殴る」

 静は淡々と返す。

 陸が口を挟む。

「でも、レオ先輩が残るって選ぶなら、家の圧はどうすんの。帰るんだろ」

 静は陸を見る。

「だから家以外の時間を作る。学校じゃなくてもいい。図書館、公共施設、バイト、訓練。……ただし、無許可で夜にふらつくのは危ない。そこは線を引く」

 レオが不意に笑った。

「線引き、うるさいな」

「線がないと落ちる」

 静は引かない。

「レオ。家が壊れるって言うなら、壊れ方を具体化しろ。何が起きる」

 レオは口を開けて、閉じた。しばらくして言う。

「……怒鳴り合いになる。物が飛ぶ。俺が出てくって言う。母親が泣く。近所が見る」

 静は頷かずにメモに書く。

「物が飛ぶなら危険。避難先が必要。泊まれる場所はあるか」

 レオは首を横に振る。

「ない」

 静は机の端に置いてあった電話機に手を伸ばしかけ、止めた。今ここで電話をかければ、廊下の耳に届く。黒川の影が、また条件を増やす。

 静は声を落とす。

「じゃあ、今日決めるのは一個にする。中退届はまだ出さない。その代わり、火曜の面談は母親も呼ぶ。呼べるか」

 レオの目が鋭くなる。

「無理。来るわけない」

「来ないなら電話でいい。スピーカーで繋ぐ。逃げ道は作るが、話は避けない」

 レオが首を振った。

「俺、母親の声聞くと、頭が真っ白になる」

 静はそのまま言う。

「じゃあ、第三者を入れる。スクールカウンセラー。外の相談員。お前だけで受け止めるな」

 レオは黙った。ペンを握り直し、メモの端を折り曲げる。

「……桐生。俺さ、残るって言ったの、嘘になるかもしんない」

「嘘でもいい」

 陸が驚いて静を見る。静は続ける。

「嘘でもいいから、火曜まで持たせろ。その間に、辞めるルートも残るルートも整える。整えた上で、お前が選べ」

 レオの喉が動いた。

「選んだら、もう戻れない?」

「戻れるように作る。戻れない部分は先に言う。中退届を出したら、この学校の在籍は終わる。戻るなら別の学校か、別の制度だ」

 レオは目を閉じ、短く息を吐いた。

「……分かった。火曜、来る。母親は、俺からは言えない。桐生が言えるなら、言って」

 静は頷いた。

「言う。その代わり、同意は取る。お前の口から『連絡していい』って言え」

 レオは小さく頷いた。

 そのとき、廊下でまた足音が止まった。ドアの向こうで、誰かがわざとらしく書類をめくる音を立てる。見張りのような間。

 陸がドアを見て、声を潜める。

「……聞かれてる」

 静は目を上げない。

「聞かれて困る話はしてない。制度の話と、予定の話だ」

 レオが小さく笑った。

「大人って、そうやって戦うんだ」

「戦ってるのは、時間だ」

 静はレオの折り曲げたメモを指で戻し、まっすぐに伸ばした。

「持ってけ。今日書いたやつ。家で見返すな。見返すと飲まれる。火曜、ここで続きをやる」

 レオはメモを受け取り、ポケットに突っ込んだ。

「……桐生」

「何」

 レオは言いかけて、やめた。代わりに、ドアへ向かう。

「火曜、十時半」

「遅れても来い」

 レオが出ていくと、廊下の足音がまた動いた。遠ざかるのか、近づくのか、判別がつかない。

 静はスマホを取り出し、画面を見る。未読の通知が一つ増えていた。

『もう着いた。入口で待ってる』

 静は立ち上がり、椅子の背に掛けた上着を掴んだ。

「陸。次、シキ。外に出る」

 陸が目を見開く。

「今? 昼までに提案書――」

 静は机の山の一番上に、提出用の封筒を置いた。朱肉の匂いがまだする印鑑が押されている。

「ここまで整えた。あとは出すだけ。……出すのは、戻ってからでも間に合う」

「間に合わなかったら?」

 静はドアノブに手をかけ、振り返らずに言った。

「その時は、その時の戦い方をする」

 ドアが開き、廊下の空気が流れ込む。

 静は足を踏み出した。入口で待っているという「今夜」を、昼のうちに引き寄せるために。


 第3進路室を出た瞬間、廊下の空気が硬かった。

 静が鍵を掛けようとした手が止まる。斜め向かいの壁際に、学年主任が立っていた。腕に書類を抱え、視線だけをこちらに向ける。

「桐生先生」

 静は鍵を回しきってから振り返った。

「今、外に出る。昼までに封筒は出す」

「……教頭が探してますよ」

 主任の声は抑えているのに、単語だけが刺さる。

「探させておけ」

 静は歩き出す。陸が半歩遅れてついてくる。

 主任は追ってこない。ただ、背中に言った。

「今日、面談週間です。余計な動きは――」

 静は止まらない。

「面談の一部だ」

 階段を下り、昇降口へ向かう途中で、陸が小声で言う。

「今の、絶対“余計な動き”って意味だよな」

「そう」

「なんで出るの」

「シキが入口で待ってる。今夜の話を昼にする」

「……昼に?」

「夜に放っておくと、選択肢が減る」

 昇降口の自動ドアを抜けると、冬の冷気が頬を刺した。校門のあたりに、人影がひとつ。制服ではない。パーカーのフードを深く被り、手をポケットに突っ込んでいる。

 静が近づくと、その影が顔を上げた。

 シキだった。目の下が濃い。笑ってもいないのに口元が乾いている。

「……来た」

「来た。早いな」

「早くしたいって言っただろ」

 シキは視線を陸に移した。

「誰」

「相沢。手伝い。話、聞かせたくないなら下がらせる」

 陸が慌てて首を振る。

「俺、離れる。校門の向こうで待つ」

 静が頷く前に、陸は数歩離れた。だが耳だけはこっちに残しているような背中だった。

 静はシキに言う。

「今夜、漫喫。何が起きる」

 シキは答えない。代わりに、ポケットから紙を出した。くしゃくしゃのレシートみたいな紙。静が受け取ると、家賃の督促だった。

「……これ、今朝来た。母親、見た瞬間、出てった」

「家に?」

「帰ってこない。電話も出ない」

 静は紙を折り、シキの手に戻した。

「今日の夜を早めたい理由は」

 シキが唇を噛む。

「家に、いられない。あそこにいると……俺、変なことしそう」

 静は一歩だけ近づいた。声を落とす。

「今、手首見せろ」

 シキが一瞬むっとして袖を引くが、静は目を逸らさない。シキは渋々、袖を少し上げた。新しい傷は見えない。だが、古い線がいくつも残っている。

 静は袖を戻させた。

「今夜の前に、今日の昼で動く。区の相談窓口に繋ぐ。未成年なら児相も選択肢。嫌なら、まずは若者の相談。どっちにしろ、今日予約を取る」

 シキが鼻で笑った。

「役所とか、動くの遅いじゃん」

「遅い。だから今日取る。今日取らないと来週になる」

 シキは視線を落とし、靴先で砂を蹴った。

「学校、こんなことしていいの?」

 静は即答した。

「学校は嫌がる。だから私がやる。お前は同意するだけ」

 シキが顔を上げる。

「同意って、また紙?」

「紙。口約束だと、誰も守らない」

 シキは肩を落とし、吐く息が白くなった。

「……わかった」

 静がスマホを取り出した、そのとき。

「先生!」

 遠くから声が飛んだ。校舎側。誰かが走ってくる足音。陸が振り返り、顔色を変えた。

 学年主任が、今度は早足で近づいてきていた。手に持っているのは、封筒。静の机に置いた提出用の封筒と同じ色だ。

「これ、机の上に……出すなら今すぐ出して。教頭が、昼休み前に会議入れた」

 静は封筒を受け取らない。視線を主任の背後に置いた。校舎のガラスに、誰かの影が映っている。動かない影。

「会議は勝手に入れろ」

 主任が声を潜める。

「桐生先生、ほんとに……。第3、潰されますよ」

 静はようやく封筒を受け取った。封を指で押さえ、角を整える。

「潰されないように、条件を揃えてる」

 主任はシキに気づき、眉を寄せた。

「その子は……三年?」

 シキが一歩引く。静が前に出る。

「面談対象。外部連携の候補。だからここにいる」

 主任の目が細くなる。

「候補、増やすんですか」

「増える。現実が増えてる」

 主任は言い返せないまま、封筒を見た。

「……とにかく、これ、出してください。黒川先生が“紙が揃わないなら閉める”って」

 静は封筒を脇に挟み、シキに向き直った。

「シキ。今、時間あるな」

「……あるけど」

「区役所に電話する。ここで」

 シキの目が揺れる。

「ここで? 学校の前で?」

「逃げ道を塞ぐ。今日やる」

 シキは唇を噛み、頷いた。

 静が発信しようとした、その横から、別の声が割って入る。

「桐生」

 静の背中が一瞬固まる。振り向くと、レオが校門の内側に立っていた。さっき帰ったはずなのに、戻ってきている。手には例のメモ。角が折れて、握りしめられている。

「レオ、どうした」

 レオは主任の存在を見て、一瞬目を細めた。だが逃げない。静の方へ歩いてくる。

「火曜まで待てない」

 主任が眉をひそめた。

「あなた、授業――」

 レオは主任を見ない。静だけを見る。

「俺、決めた。残る。……でも条件、つける」

 静はスマホを下ろし、レオに向き直った。

「言え」

 レオはメモを広げた。風で紙が揺れるのを、指で押さえる。

「条件一。家で揉めそうになったら、俺、逃げる。外に出る。止めないで」

 主任が反射的に言う。

「そんなの、非行――」

 静が切る。

「続けろ、レオ」

 レオは頷き、次を言う。

「条件二。学校、毎日は無理。来れる日を決める。火曜と木曜の午前。そこは絶対来る」

 静は短く言う。

「具体的に」

「十時半。さっき言った時間。あと、木曜も同じ。無理なら連絡する」

 静が頷く。レオは息を吸う。

「条件三。母親に、桐生から電話していい。俺が横にいるときだけ。スピーカーで。俺、逃げない」

 その言葉が落ちた瞬間、陸が校門の向こうで小さく息を吐いた。シキも、レオの方を見ている。

 静はレオの目を見る。

「条件四は?」

 レオは一瞬迷ってから言った。

「……中退届は、桐生が持ってて。俺に渡すな。持ってたら、勢いで出す」

 主任が口を開けた。

「それは規則上――」

 静が主任に視線を向ける。

「規則は“提出されたら受理”。提出されてない。保管は問題ない」

 主任は言葉を探して、見つけられない。背後のガラスに映る影が、少しだけ動いた気がした。

 静はレオに戻る。

「分かった。残る。ただし“残る”は籍だけじゃない。課題もやる。最低限、単位に必要な分は」

 レオが頷く。

「やる。……全部は無理。でも、必要な分はやる」

 静は言う。

「じゃあ、今ここで確認する。レオ、お前が選んだのは“条件付きで残る”。誰に言われた?」

 レオは一拍置いて、首を振った。

「……誰にも」

「自分で言ったな」

「言った」

 静は封筒を持ち直した。

「よし。火曜十時半。ここ。母親への連絡は、その場で。逃げる条件は“危険回避”。遊びの逃げは許さない」

 レオが口を尖らせる。

「分かってる」

 静はシキにも目を向けた。

「シキ。今の聞いたな。お前も“今日やる条件”を一個決めろ」

 シキがレオを見て、目を逸らしたまま言う。

「……今日、役所に電話する。逃げない」

 静は頷いた。

「よし」

 主任が静の脇の封筒を見て、焦ったように言う。

「桐生先生、封筒……」

「出す」

 静は即答した。封筒の角を叩き、主任に渡す。

「職員室経由で出せ。受領印をもらって、写しをここに持ってこい」

 主任が驚く。

「私が?」

「あなたが出した方が早い。教頭に止められても“預かった”と言える」

 主任は唇を噛み、封筒を受け取った。逃げるように校舎へ戻っていく。

 静はその背中を見送らず、レオとシキの間に視線を置いた。

「二人とも。完璧にはならない。家は今日も揺れる。学校も揺れる。……でも、今、選んだ」

 レオが小さく言う。

「選んだって言っても、明日変わるかもしんない」

「変わる」

 静は否定しない。

「変わったら、その時また条件を作る。条件を作れる限り、道は残る」

 レオはメモを握り直し、ポケットにしまった。

「……じゃあ、俺、帰る。家、顔だけ出す」

 静は頷く。

「危なくなったら、連絡。夜は勝手に消えるな」

 レオが背を向ける前に、陸が一歩近づいた。

「レオ先輩」

 レオが振り返る。

 陸は言葉を探して、短く言った。

「……来て。火曜」

 レオは一瞬だけ口角を上げた。

「お前も来いよ」

「俺、二年だし」

「関係ねえだろ」

 レオはそう言って、校門の外へ出ていった。背中は軽くはない。だが、さっきより真っ直ぐだった。

 静はスマホを上げ、シキに見せる。

「電話する。今」

 シキが頷く。静が発信ボタンを押す。

 呼び出し音が鳴り始めたところで、陸が小声で言った。

「……封筒、出して大丈夫なのか」

 静は呼び出し音の合間に答える。

「大丈夫じゃない。だから出す。出さないと、潰される理由が増える」

 呼び出し音が途切れ、相手が出た。

 静は名乗り、用件を短く告げる。シキの肩が、少しだけ下がった。

 校舎の窓の影が、また動いた気がした。だが静は見上げない。今は、目の前の一本の糸を切らさない。

「……はい。今日中に。本人同席で。ありがとうございます」

 静が通話を終えると、シキが声を絞った。

「予約、取れた?」

「取れた。今日の夕方。場所は駅前の相談窓口。漫喫はその後だ」

 シキが目を伏せたまま頷く。

 陸が息を吸って、吐いた。

「次、何すんの」

 静は校舎へ向かって歩き出した。

「戻る。面談の続き。……黒川に呼ばれる前に、こっちから書類を投げる」

 陸が追いつく。

「投げるって言い方、ほんと物騒」

 静はドアの前で一度だけ足を止め、言った。

「物騒じゃないと、守れないものがある」

 そして静は、校舎の中へ入っていった。次のノックが鳴る前に、次の条件を並べるために。


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