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第1章 偽りの騎士
第1話 おはようございます 4
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3人とは、俺自身がイチから創造したオリジナル配下たちのこと。彼らはウロボロスと同等かそれ以上の好意を持っているはずであり、この皆の反応から察するに、誰よりも早く駆けつけてくれてもいいだろう。でも未だに姿を見せてくれない。きっと何かしら理由があるに違いない。それを聞かせてくれるんじゃないか、なんて想像しながら話を促す。
「報告致します。ここにいない者は皆、既に調査へ乗り出しました。何分急な出来事でしたので独断行動を取っております。事後承諾となってしまい申し訳ありませんが、お許し頂けるでしょうか?」
なるほどな。浮かれて失念していたが、もしもこの世界が現実なのだとすれば知りたいことは山ほどある。周囲の環境、俺たち以外の生命体の有無、無機物も含めた目下脅威になりそうな存在はいるのかどうか、などなど。パッと思い付くだけでもこれだけある。細かいものまで挙げればキリがないだろう。そこにいち早く気付き、動いてくれている。とても頼りになるじゃないか。
「あぁ、いい――」
むしろありがたい、なんて思いを込めて言いかけた時、爆弾でも爆発したような音が鳴り響き、床が大きく揺れる。恐る恐るその音源の方を見ると、ウロボロスがもの凄い足音を立てて歩き出していた。一歩、また一歩と踏み出すごとに、その轟音と揺れが発生する。
余りの恐怖で俺は固まって動けなくなってしまう。指先すら動かせそうにない。だってさ、未だかつて見たことがないんだよ。あんなにも笑顔なのに一切目が笑っていない表情を見たのは。
そんなウロボロスの行き先は神無月の方らしい。ズンズンと詰め寄ると、上から見下ろすような形で威圧的に質問を投げつけ始める。
「我が君の決定無くして独断行動を取ったと。なるほど、どうやら死にたいようですね?」
質問、なんて穏やかじゃなかった。一方的過ぎる言い分、死刑宣告をしている。ただ、そう聞こえるのは俺が恐怖でガチガチになっているためかもしれない。文面だけ見れば、弁明の余地は与えられているように捉えられなくもない、のかもしれない。いや、ない。どう好意的に解釈すれば死刑宣告以外の物言いに思えるだろう。
「魔王様のためを思い行動しました。それで命を落とそうとも悔いはありません」
「よく言いました。では、そこに直りなさい」
もっと抵抗しろよ、神無月。いいのかよ、お前はそれで。どうしてそんなに満足気なんだ。あぁ、くそ。こうなったら俺が止めるしかない。恐いとか言っていられるか。仲間内で揉めるのなんて見たくないっての。
「ま、待て! 待てって、ウロボロス! そのくらいで俺は怒ったりしないから!」
「畏まりました、認識を改めます。我が君は想像以上に慈悲深い御方だと」
言いながら、ウロボロスは手をワキワキさせながら近寄ってくる。言葉遣いだけは丁寧になってくれて落ち着いたのかと安心しかけたが、ところがどっこい。確かにこれまでの鬼でも宿ったような様子ではない。でも現実は非情なり。ただの淑女ではなく、変態的な乙女の面構えになっている。鼻の下を伸ばし、鼻息を荒くし、頬を赤く染め、目尻をだらしなく垂らしているのだ。どうしてこう両極端なのか、こいつは。もっと丁度いいラインは無いのか。
「だからって、何でもかんでも許しはしないからね?」
「左様で御座いますか、残念です」
しかし理性は保たれているらしい。言って聞かせれば、大変に残念がっているものの素直に頷いてくれた。
これもこれで恐い気がする。いっそ気でも触れていたのなら原因を取り除けば解決するだろう。でもまともな精神でやっていたのだとしたら、今後、どう足掻いても俺の貞操は危うい。
まぁ、そんな近い将来に潜む危険はひとまず置いておくとしよう。大切なのは今、目の前のこと。何とか身の安全が保障されたところで、大切なことを確認するところから始めなければ。生きているのなら絶対に曖昧では済まされないことを聞くとしよう。
「……皆、答えてくれ」
ウロボロスたちを見る。中々に良い暴走っぷりを見せ付けてくれたものの、それでも、皆以上に頼りになる奴らはいるだろうか。
これまで様々な映画やアニメを観てきた。こいつら凄いなぁって思えるチームは山ほどあった。でも皆を超えるものは無い。そう確信している。なぜなら、俺自身の手で最強の椅子に着かせるまで育て上げたのだ。皆の強さも弱さも把握しているからこそ、胸を張って言える。最強は俺たちだと。
「お前たちのことは、この世の誰よりも信頼している。ただな……それでも、あえて聞かなければならないことがある」
だからこそあえて確かめたい。ここは異世界というやつなのだろう。ならば、外にはどんな危険が潜んでいるかわからない。これまでの最強という常識が覆る可能性があるのだ。こうして息をして、笑って、ふざけ合ってくれる大切な配下たちを守るために、どうしても聞いておかなければならない。
「俺は魔王ユウ。皆は配下として忠誠を誓ってくれている。依存はないか?」
皆、俺の意図を察してくれたのか、ふざけ合っていた雰囲気から一変。神妙な面持ちになるとウロボロスを先頭にしてひざまずき、頭を垂れる。その仰々しい姿勢に俺も居住まいを正してしまう。
「我らオラクル・ナイツ……」
言いながらウロボロスだけの顔が上がり、目が合った。美しい。自然とそう思ってしまった。何が、ではない。その真剣な顔つきも、凛々しい口調も、魅入られたように目が離せなくなってしまう程の瞳も、何もかも。その全てをもって、ただただ美しいと思ってしまう。
「この身この命尽きようとも最期まで、いえ、輪廻の果てまでお仕えすることを……永久の忠誠をここに誓います」
ウロボロスがそう言い終えると、誰1人として異を唱えず、静寂が訪れる。気が付くと、息をするのも忘れてしまっていたらしい。胸が高鳴り、息が荒くなっている。
こうして会話ができて、手で触れられて、忠誠を誓ってくれたことがただただ嬉しい。ここまで幸福な気持ちになったことがあるだろうか。大変だった大学受験に受かった時も、苦難を乗り越えてようやく就職が決まった時も、ここまでではなかった。
「ありがとう、大切な配下たち。これからよろしく頼むぞ」
この世界のことはわからないけど、信頼している皆となら何も恐くない。早速、情報収集に乗り出すとしよう。生きるために。こんな素敵な世界を守るために。
「報告致します。ここにいない者は皆、既に調査へ乗り出しました。何分急な出来事でしたので独断行動を取っております。事後承諾となってしまい申し訳ありませんが、お許し頂けるでしょうか?」
なるほどな。浮かれて失念していたが、もしもこの世界が現実なのだとすれば知りたいことは山ほどある。周囲の環境、俺たち以外の生命体の有無、無機物も含めた目下脅威になりそうな存在はいるのかどうか、などなど。パッと思い付くだけでもこれだけある。細かいものまで挙げればキリがないだろう。そこにいち早く気付き、動いてくれている。とても頼りになるじゃないか。
「あぁ、いい――」
むしろありがたい、なんて思いを込めて言いかけた時、爆弾でも爆発したような音が鳴り響き、床が大きく揺れる。恐る恐るその音源の方を見ると、ウロボロスがもの凄い足音を立てて歩き出していた。一歩、また一歩と踏み出すごとに、その轟音と揺れが発生する。
余りの恐怖で俺は固まって動けなくなってしまう。指先すら動かせそうにない。だってさ、未だかつて見たことがないんだよ。あんなにも笑顔なのに一切目が笑っていない表情を見たのは。
そんなウロボロスの行き先は神無月の方らしい。ズンズンと詰め寄ると、上から見下ろすような形で威圧的に質問を投げつけ始める。
「我が君の決定無くして独断行動を取ったと。なるほど、どうやら死にたいようですね?」
質問、なんて穏やかじゃなかった。一方的過ぎる言い分、死刑宣告をしている。ただ、そう聞こえるのは俺が恐怖でガチガチになっているためかもしれない。文面だけ見れば、弁明の余地は与えられているように捉えられなくもない、のかもしれない。いや、ない。どう好意的に解釈すれば死刑宣告以外の物言いに思えるだろう。
「魔王様のためを思い行動しました。それで命を落とそうとも悔いはありません」
「よく言いました。では、そこに直りなさい」
もっと抵抗しろよ、神無月。いいのかよ、お前はそれで。どうしてそんなに満足気なんだ。あぁ、くそ。こうなったら俺が止めるしかない。恐いとか言っていられるか。仲間内で揉めるのなんて見たくないっての。
「ま、待て! 待てって、ウロボロス! そのくらいで俺は怒ったりしないから!」
「畏まりました、認識を改めます。我が君は想像以上に慈悲深い御方だと」
言いながら、ウロボロスは手をワキワキさせながら近寄ってくる。言葉遣いだけは丁寧になってくれて落ち着いたのかと安心しかけたが、ところがどっこい。確かにこれまでの鬼でも宿ったような様子ではない。でも現実は非情なり。ただの淑女ではなく、変態的な乙女の面構えになっている。鼻の下を伸ばし、鼻息を荒くし、頬を赤く染め、目尻をだらしなく垂らしているのだ。どうしてこう両極端なのか、こいつは。もっと丁度いいラインは無いのか。
「だからって、何でもかんでも許しはしないからね?」
「左様で御座いますか、残念です」
しかし理性は保たれているらしい。言って聞かせれば、大変に残念がっているものの素直に頷いてくれた。
これもこれで恐い気がする。いっそ気でも触れていたのなら原因を取り除けば解決するだろう。でもまともな精神でやっていたのだとしたら、今後、どう足掻いても俺の貞操は危うい。
まぁ、そんな近い将来に潜む危険はひとまず置いておくとしよう。大切なのは今、目の前のこと。何とか身の安全が保障されたところで、大切なことを確認するところから始めなければ。生きているのなら絶対に曖昧では済まされないことを聞くとしよう。
「……皆、答えてくれ」
ウロボロスたちを見る。中々に良い暴走っぷりを見せ付けてくれたものの、それでも、皆以上に頼りになる奴らはいるだろうか。
これまで様々な映画やアニメを観てきた。こいつら凄いなぁって思えるチームは山ほどあった。でも皆を超えるものは無い。そう確信している。なぜなら、俺自身の手で最強の椅子に着かせるまで育て上げたのだ。皆の強さも弱さも把握しているからこそ、胸を張って言える。最強は俺たちだと。
「お前たちのことは、この世の誰よりも信頼している。ただな……それでも、あえて聞かなければならないことがある」
だからこそあえて確かめたい。ここは異世界というやつなのだろう。ならば、外にはどんな危険が潜んでいるかわからない。これまでの最強という常識が覆る可能性があるのだ。こうして息をして、笑って、ふざけ合ってくれる大切な配下たちを守るために、どうしても聞いておかなければならない。
「俺は魔王ユウ。皆は配下として忠誠を誓ってくれている。依存はないか?」
皆、俺の意図を察してくれたのか、ふざけ合っていた雰囲気から一変。神妙な面持ちになるとウロボロスを先頭にしてひざまずき、頭を垂れる。その仰々しい姿勢に俺も居住まいを正してしまう。
「我らオラクル・ナイツ……」
言いながらウロボロスだけの顔が上がり、目が合った。美しい。自然とそう思ってしまった。何が、ではない。その真剣な顔つきも、凛々しい口調も、魅入られたように目が離せなくなってしまう程の瞳も、何もかも。その全てをもって、ただただ美しいと思ってしまう。
「この身この命尽きようとも最期まで、いえ、輪廻の果てまでお仕えすることを……永久の忠誠をここに誓います」
ウロボロスがそう言い終えると、誰1人として異を唱えず、静寂が訪れる。気が付くと、息をするのも忘れてしまっていたらしい。胸が高鳴り、息が荒くなっている。
こうして会話ができて、手で触れられて、忠誠を誓ってくれたことがただただ嬉しい。ここまで幸福な気持ちになったことがあるだろうか。大変だった大学受験に受かった時も、苦難を乗り越えてようやく就職が決まった時も、ここまでではなかった。
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