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第1章 偽りの騎士
第2話 容赦はしない 1
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情報収集となると外敵との接触が考えられる。この外がどうなっているかわからない以上、ウロボロスには壁役、通称盾持ちをやって欲しいところ。前方がウロボロスで後方が俺。この陣形でいけば、最悪、ドミニオンズの最終ボスが3体くらい出てきても大丈夫だろう。
ただ、である。盾持ちとは、当り前だが、敵からのダメージを一手に引き受ける最も危険な役目だ。ゲームならば数字のやり取りで済むのだろうが、今は生きているのだからそうもいくまい。斬られれば痛いだろうし血も出るだろう。嫌がるのなら無理強いはできない。いざとなったら俺が前方を引き受ける。そんなつもりで尋ねてみる。
「あのさ、外の様子が全くわからない以上、最小編成で行くのが望ましいと思うんだ」
「はい、私も同意見です。願わくば私ともう1人……そうですね、如何なる状況にも対応できるカルマと共に行かせて頂ければ」
「あー……カルマね、なるほどね」
本題に移る前に、魅力的な提案をされてしまったな。カルマは大変に器用だ。それで悩んだ時期もあったが、とある答えを見つけて今や切り札的な存在になっている。いざとなればその力を使って貰えばいいし、そうでないのなら、その器用さがそのまま活きる。ウロボロスの提案通り2人に任せるのが一番良さそうに思える。思えるが、そうは問屋が卸さない。
「いや、そこは俺が同伴したいと思う」
ここは俺が行きたい。外の世界をこの目で見てみたいのは勿論だが、何より、万が一のことがあってはならないのだ。ウロボロスは単純にステータスで戦えるだろう。でも他の皆はそうではない。各々の強みが潰されるようなことがあれば死に直結してしまう。それだけは絶対に嫌だ。
「ならぬ、魔王様。御身の安全は第一に考えられるべきじゃ」
「僕たちが忠義を尽くすべき魔王様に、もしものことがあったらどうすれば良いのですか?」
「魔王様はここにいて、私たちに任せてください!」
「うむ、我らの意見はまとまっているな」
いの一番に反対してきたのはカルマだ。それに続くようにしてアザレア、フェンリス、ムラクモも反対する。ほぼ満場一致で駄目と言われるか。それだけ心配されているのだろうが、俺だって魔王と呼ばれる程度の力はあるんだけどな。
「いえ、ここは我が君の御意思に従うべきでしょう」
1人だけ返答をしていなかったウロボロスが最後に肯定してくれた。俺のことを心配していない、なんてことはあり得ない。そうなると誰よりも信頼してくれている、ということか。
ありがたいなと思った。そのだらしのない顔を見るまでは。顔に書いてあるとはこのことか。何を意図しているのかはっきりとわかってしまう。
「えへへ、我が君とデート」
うわ、しかも言葉になって漏れ出ているし。まぁ、子どものようにはしゃいでいると思えば微笑ましいか。嬉し過ぎて大切なストッパーが外れていそうな気はするけど。
こうなると問題は皆かと思ったが、どうやらそうでもないらしい。ウロボロスはオラクル・ナイツの団長、つまり皆のリーダーだ。その言葉は彼ら自身の行動を決定する程の力があるらしい。
「……ウロボロスがそう言うのなら、仕方ないのう」
「そうだね、ここは任せようか」
「うー……ウロボロスばっかり、魔王様とお出かけかぁ」
「いささか不安ではあるが……師匠ならば誰よりも確実にお守りするだろう」
いや、ただ単に役職で解決した話でもないようだ。ムラクモの最後の一言に各々が深く頷いている。ウロボロスなら俺を確実に守る、か。余程の信頼を得ているらしい。
ふと思い出す。ドミニオンズ時代に皆と過ごした日々を。ウロボロスは最強の盾だった。皆を確実に守り抜く、決して破られない盾。オラクル杯の決勝でさえ一撃も通さなかった鉄壁だ。もしもあの頃の記憶を全て持っているのだとすれば、そう思っても不思議ではない。
「ま……まぁ、ウロボロスがいいならそれで構わないけどさ」
「はい! 我が君は確実にお守り致します!」
「そ……そうか、それは心強い」
こりゃ、聞くまでもなく前衛はウロボロスがやってくれそうだな。それなら俺は後衛に専念する装備で臨める。それはいい。それはいいのだが、少し話が脱線して忘れかけたので今一度確認しよう。
俺たちは外に関して全くの無知だ。如何なる脅威が待ち受けているやもしれない。もしもドミニオンズの通りだったらそれはそれでいいが、違った場合を想定して油断は禁物だ。装備は最強のものにし、アイテムは惜しまず最高級のものをいつでも使用できるよう準備しよう。
少しばかりメニュー画面から諸々を操作して、うん、大体こんなものかな。
「よし、俺とウロボロスが偵察に出る。他はここの防衛を。行くぞ、ウロボロス」
「はい! どこまでもお供致します、我が君!」
「行ってらっしゃいませ、魔王様」
神無月も含めた皆に見送られ、ようやく俺は自室から一歩外に出た。
ここはやはりオラクル・ラビリンスそのものだ。外への道筋、至るところに張り巡らせた罠の回避方法、雑魚モンスターの配置、その全てが記憶通りだ。不気味な程にドミニオンズと一緒である。一体誰が何の目的でこんな手の込んだことをしているんだろう。なんて、考えながら歩いていると最後の扉へ到着する。
ただ、である。盾持ちとは、当り前だが、敵からのダメージを一手に引き受ける最も危険な役目だ。ゲームならば数字のやり取りで済むのだろうが、今は生きているのだからそうもいくまい。斬られれば痛いだろうし血も出るだろう。嫌がるのなら無理強いはできない。いざとなったら俺が前方を引き受ける。そんなつもりで尋ねてみる。
「あのさ、外の様子が全くわからない以上、最小編成で行くのが望ましいと思うんだ」
「はい、私も同意見です。願わくば私ともう1人……そうですね、如何なる状況にも対応できるカルマと共に行かせて頂ければ」
「あー……カルマね、なるほどね」
本題に移る前に、魅力的な提案をされてしまったな。カルマは大変に器用だ。それで悩んだ時期もあったが、とある答えを見つけて今や切り札的な存在になっている。いざとなればその力を使って貰えばいいし、そうでないのなら、その器用さがそのまま活きる。ウロボロスの提案通り2人に任せるのが一番良さそうに思える。思えるが、そうは問屋が卸さない。
「いや、そこは俺が同伴したいと思う」
ここは俺が行きたい。外の世界をこの目で見てみたいのは勿論だが、何より、万が一のことがあってはならないのだ。ウロボロスは単純にステータスで戦えるだろう。でも他の皆はそうではない。各々の強みが潰されるようなことがあれば死に直結してしまう。それだけは絶対に嫌だ。
「ならぬ、魔王様。御身の安全は第一に考えられるべきじゃ」
「僕たちが忠義を尽くすべき魔王様に、もしものことがあったらどうすれば良いのですか?」
「魔王様はここにいて、私たちに任せてください!」
「うむ、我らの意見はまとまっているな」
いの一番に反対してきたのはカルマだ。それに続くようにしてアザレア、フェンリス、ムラクモも反対する。ほぼ満場一致で駄目と言われるか。それだけ心配されているのだろうが、俺だって魔王と呼ばれる程度の力はあるんだけどな。
「いえ、ここは我が君の御意思に従うべきでしょう」
1人だけ返答をしていなかったウロボロスが最後に肯定してくれた。俺のことを心配していない、なんてことはあり得ない。そうなると誰よりも信頼してくれている、ということか。
ありがたいなと思った。そのだらしのない顔を見るまでは。顔に書いてあるとはこのことか。何を意図しているのかはっきりとわかってしまう。
「えへへ、我が君とデート」
うわ、しかも言葉になって漏れ出ているし。まぁ、子どものようにはしゃいでいると思えば微笑ましいか。嬉し過ぎて大切なストッパーが外れていそうな気はするけど。
こうなると問題は皆かと思ったが、どうやらそうでもないらしい。ウロボロスはオラクル・ナイツの団長、つまり皆のリーダーだ。その言葉は彼ら自身の行動を決定する程の力があるらしい。
「……ウロボロスがそう言うのなら、仕方ないのう」
「そうだね、ここは任せようか」
「うー……ウロボロスばっかり、魔王様とお出かけかぁ」
「いささか不安ではあるが……師匠ならば誰よりも確実にお守りするだろう」
いや、ただ単に役職で解決した話でもないようだ。ムラクモの最後の一言に各々が深く頷いている。ウロボロスなら俺を確実に守る、か。余程の信頼を得ているらしい。
ふと思い出す。ドミニオンズ時代に皆と過ごした日々を。ウロボロスは最強の盾だった。皆を確実に守り抜く、決して破られない盾。オラクル杯の決勝でさえ一撃も通さなかった鉄壁だ。もしもあの頃の記憶を全て持っているのだとすれば、そう思っても不思議ではない。
「ま……まぁ、ウロボロスがいいならそれで構わないけどさ」
「はい! 我が君は確実にお守り致します!」
「そ……そうか、それは心強い」
こりゃ、聞くまでもなく前衛はウロボロスがやってくれそうだな。それなら俺は後衛に専念する装備で臨める。それはいい。それはいいのだが、少し話が脱線して忘れかけたので今一度確認しよう。
俺たちは外に関して全くの無知だ。如何なる脅威が待ち受けているやもしれない。もしもドミニオンズの通りだったらそれはそれでいいが、違った場合を想定して油断は禁物だ。装備は最強のものにし、アイテムは惜しまず最高級のものをいつでも使用できるよう準備しよう。
少しばかりメニュー画面から諸々を操作して、うん、大体こんなものかな。
「よし、俺とウロボロスが偵察に出る。他はここの防衛を。行くぞ、ウロボロス」
「はい! どこまでもお供致します、我が君!」
「行ってらっしゃいませ、魔王様」
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ここはやはりオラクル・ラビリンスそのものだ。外への道筋、至るところに張り巡らせた罠の回避方法、雑魚モンスターの配置、その全てが記憶通りだ。不気味な程にドミニオンズと一緒である。一体誰が何の目的でこんな手の込んだことをしているんだろう。なんて、考えながら歩いていると最後の扉へ到着する。
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