魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第6話 怪現象の対策 2

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 ロアたちはほとんど溶けたというのに、この差は一体どうして生じているのだろう。いや、咄嗟のことだったから見落としただけで、ひょっとすると溶けていない奴もいたかもしれない。待て、待て待て、あの光景は鮮明に思い出せる。生存者などいなかった。そう断言できるくらいに、誰1人残らず溶けていたはずだ。

「……駄目だな、情報が足りない。まずは現状をもっと把握したい。あれは魔法、スキルの類いか? それともアイテムかわかるか?」
「申し訳ありません。現在、カルマがこの領域全土の一斉調査を行っておりますが、未だ原因の特定はできておりません」
「当然、本人はここにいるんだな?」
「はい。念のため、ムラクモを見張りに付けております」

 カルマは不死だから、やられても大丈夫と言い張って本人も出る可能性があった。あの液状化が肉体干渉のみで生死に関わらないならば、カルマもまた無事では済まないかもしれない。きちんと把握できるまで軽率な行動は取って欲しくないところだ。その点、ムラクモが監視に付いているのなら安心だ。あいつは絶対に軽率な真似を許さないだろうから。

「引き続き情報収集を頼むと伝えてくれるか? あと、フェンリスも大人しくしていろと釘を刺しておいてくれ」
「畏まりました。魔王様は如何なさいますか?」

 言いながらアザレアの視線がわずかにそれ、ウロボロスの方へ向いた。その意図は何となくだが理解できる。よく守ってくれた、もしも俺が変なことをし出かしたら頼む、そんなところだろう。俺がこれだけ警戒しているんだ。皆もまた最大級の警戒心を持っているだろう。俺を守ることは何よりも優先されるんだろうから、誰よりも厳しく見張ってくれそうである。

「そんなに俺が心配か?」

 それは素直にありがたいんだが、余り過保護にされるのもどうかな。なんて思いながらも、過保護か、と失笑してしまう。それを言ってしまえば俺だって慎重過ぎる気もする。現場にカルマを向かわせれば解決するかもしれないのに許さないのだから。しかも、ここですら安全ではないとすら思い始めているくらいである。人のことを言えそうにないな。

「我が君、私共に頼って下さい。我々は尽くしたいのです、御身のために」
「僕も、いえ、誰もがウロボロスに負けず劣らず、魔王様のためにありたいと常に思っております」

 そこまで言われては嫌とは言えそうにない。ただ、何だろう、このふと抱いた違和感は。わからない。言葉で言い表せないが、妙にむず痒いというか、心苦しいというか、とにかくそんな感じがした。気にしてみるとすぐに消えてしまったが、何だったんだろう。ステータスを見ると異常は起こっていないようだが、うーん。過保護でもなんでも、やっぱり何よりもまずは防御を固めて安心感を持つとするか。

「ありがとう。皆のお陰で、俺も安心して休めそうだ。でもその前に、俺はこれからちょっとばかりお願いに行って来る。アザレアはそのまま陣頭指揮を、ウロボロスは付いて来てくれ」
「畏まりました」

 完璧に揃った返事を聞いてから、俺はウロボロスと一緒にある場所を目指す。目指すと言っても、オラクル・ラビリンスの中なんだけどね。
 テクテクと歩く。歩いて、歩いて、また歩いて。無駄に長く作った廊下を進んで向かうのはここの最深部。ありとあらゆる場面で重宝した祭壇のある区画だ。次第に黒曜石の壁ではなくなり、そうだな、例えるなら夜空のような空間へと変わっていく。星々の煌めきのようなわずかな光に全方向を照らされながら真っ暗な道を進む。

「そういえばウロボロスが来るのは初めてだったか?」
「はい。神聖な場所故に、まだ一度も」

 神聖と言われて、ふっと、思わず失笑してしまう。振り返ればドミニオンズの頃も含めて、ウロボロスたちを連れて来たことはなかったかもしれない。そうなると、ここに入れるのは俺がイチから創造した3人の配下と俺だけか。なるほど、ウロボロスたちからすれば神聖に思えるのかもしれない。

「確かに、ある意味そうかもしれないな」

 実際は阿鼻叫喚の地獄絵図ばっかりだったけど、色々なドラマがあった。思い出せばキリがないから省くが、いくら改築に次ぐ改築をしても、ここだけは残してしまう程に思い入れは強い。
 遂にやって来た。目的地へ入るための最後の扉の前まで。隣にいるウロボロスの体が少しだけ強張ったように見える。畏れがあるんだろうか。まさか、恐れを覚えたりはしていないだろうな。でもまぁ、この扉は恐怖を覚えても不思議ではない様相ではある。なにせ、悪魔や死神といった闇の世界を生きる住人たちが、せっせと、自分たちの好みを全面に押し出したような禍々しい扉なんだ。地獄へ通じていると誤解しても不思議ではないくらいである。
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