魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第8話 緊急速報 8

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 訳がわからないが、これだけは断言できる。今のアデルには何かが起こっている。そしてここからは予感だが、きっと、こいつと話をしていけば事件の真相に近付ける。

「それは……一体、どんな研究だったんだ?」
「端的に言うと、対抗手段の開発です。詳しい原理はわかりませんが、それまでのモノとは比べ物にならない程の、圧倒的な性能を誇る武器を造ったんです」
「武器? 剣や弓以外か?」
「形状の話ではなく、性能です。似た形の市販の剣とぶつければ粉々に砕き、弓矢を放てば従来の盾や鎧を楽々と貫きました」

 その話が本当なら凄いな。まさに革命的ではないか。大災厄に立ち向かうために生み出した執念の技術ということだろう。
 この手の話で殺されるとなると、従来の武器を造っている職人たちから恨まれたか、開発の成果を横取りされそうになったか、何かしら国にとって不都合な物を造ってしまったか、だろうか。とにかく、天才的な発明の裏側でよくありそうな話があったのだろう。

「父の開発した武器は、特殊な訓練を受けずとも誰でも使いこなせていました。事実、晩年は父も戦場に出ていました」
「なるほど……世紀の発明だったのか」

 そうなると将軍や兵士たちから反感を買った線もあるな。どれもこれも憶測でしかないものの、いずれにしても、余りにも革新的過ぎて強い反感を買ったのは確実だろう。それにしても、人類滅亡の危機に瀕してまで足の引っ張り合いとは恐れ入る。

「その通りです。しかし妬まれ、憎まれ、最後には開発データを全て奪われて……何者かに殺されてしまいました。大災厄はまだ、きっと終わっていないのに……!」

 アデルは信じるなと言っていたが、ここまでの話を聞いてもなお、アデルや父親に非は無いように聞こえる。むしろただの被害者ではないか。
 被害者、うーん、咄嗟にそう思ったけど現状を見ればもっと酷い状態かもしれない。父親が殺されたのは怨恨のせいかもしれないが、アデルは関係ないはずだ。それなのに軍隊によって殺されそうになっている。この扱いは、言ってしまえば国賊のようではないか。
 だがちょっと立ち止まって冷徹に考えてみれば、これはアデル側の一方的な言い分による想像だ。国を救いうる革新的な技術。この部分がそもそも全く違うか、もしくは、そのメリットを遥かに超える悪質さがあった可能性もある。
 一方的な言い分だけで断定はできそうにない。やはり聖リリス帝国側の主張をもっとしっかり聞いてみなければならないだろう。

「……大変な話だな」

 情報が無くても大変だったが、聞けば聞く程に闇が深くなっていっている気がしてならない。まぁ、それでも前進しているのは間違いない。そう信じて、さて、聖リリス帝国に快く話を聞かせてくれそうな知人はいないかと考える。いるはずがない。ではこれからどうするべきかと困り果ててしまう。
 そんな時、目の前にウィンドウが現れる。誰かがメッセージを送ってきたのかな、なんて思いながら開くと、緊急警告の文字が表示された。

「監視用ファントム・シーカーが倒れました……至急、応戦の準備をお願いします、だと?」

 この世界にファントム・シーカーを倒せる奴がいるのか。いくら戦闘能力が極めて低い低級モンスターだとしても、あの騎士たちのステータスでは傷ひとつ付けられないと思うんだけど。まぁ、あの怪現象から逃れられる敵ならば不思議ではないか。とりあえず、敵ならさっさと片付けてしまおう。
 いや、待てよ。これは考えようによっては好機。それだけの力を持つ敵ならば、相応の地位にいるだろう。きっと面白い情報を握っているに違いない。

「アデル、悪い。敵襲らしい。話の続きはまた今度頼む」
「わかりました。お気を付けて」

 このタイミングで来たのなら、例え国の内情を全く知らなかったとしても、最低でもあの怪現象から逃れた手段を持っているに違いない。これを見逃してやる手はない。
 俺とウロボロスはファントム・シーカーのキル・カメラ、つまり最後にやられたシーンを観ながら現場へ急行した。
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