魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第11話 ウロボロスの愛 1

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 呆然と黒曜石の天井を見つめていた気がする。どれくらいそうしていただろう。頭が重くて、喉がカラカラに乾いて、腰が痛む。ようやく起き上がれた。そんな気がするくらいに倦怠感が凄まじい。まだ頭がボーっとしているが、あの時の事をうっすらと思い出し始める。

「誰でもいい、ウロボロスを! 何とかしてくれっ!」

 もっとも、詳細をはっきりと思い出すことはできそうにない。それでも漠然と覚えていることをそのまま思い出せば、急にウロボロスが倒れた。まさか、あの現象の被害に遭ったのではないか。そんな恐怖を抱いて、盛大に取り乱して、それから、それから。あれ、何がどうなったんだっけ。確か、そう、託したんだ。気が付くとオラクル・ラビリンスに戻っていて、カルマと会った気がした。

「お目覚めかのう?」

 横から声がして、見るとカルマの顔があった。とても近い。密着の一歩手前と言っても過言ではないくらい近くて、吐息がかかってしまうくらいの距離しかない。どうして隣にいるんだろう。あの後、何があったんだっけ。そんなことを考えながら何となく視線を落としてみれば、

「な……何をしているんだっ!?」

 思わず飛び退いてしまう。なぜかカルマは裸だった。かけ布団すらまとっていない、生まれたままの姿だった。何があった。俺とカルマの間に何があった。わからない。思い出せない。でも、これだけは誓って言える。間違いは犯していない。俺にそんな度胸は無い。無い、無いはずだ。その証拠に、ほら、と自分の体を見てみれば、あれ、どうしてだろう。俺も裸なんだけど。嘘、嘘だ。まさか、いや、あり得ない。
 もう何もかもわからないことだらけで混乱していると、カルマは小悪魔のようにニヤリと笑った。

「昨夜は激しかったのう」
「な……何がだっ!? い、いや、待て! 待ってくれ! 言うな、頼むからみなまで言うんじゃないぞ!」

 思い出せ、俺。自分自信の身の潔白を証明するために、ほら、思い出すんだ、あれから何があったのかを。だが、必死に頭を回転させているつもりなんだが、肝心なところが全く出て来ない。どうせあれだろ。ウロボロスを託して、たぶん、いや、絶対に何とかなったからこそ、一気に力が抜けて倒れてしまったのだろう。そうだ、思い出した。俺は少なくとも丸1日は寝ていなかった。気が抜けてしまえば死んだように眠ってしまうのは当り前じゃないか。

「そうだ、俺は寝ちゃったんだ。そうだろ? なぁ、そうなんだろ!?」

 カルマは、これまた悪そうにニヤリと笑みを浮かべる。そしてそのままの表情で黙り込んでしまった。
 何なの、この間は。あれか。初めてを共に過ごしてしまった相手が、気まずくて適当に流そうとしているのを見て、幸せを噛みしめながら微笑ましく眺めている。そんな感じか。そうなのか。

「うむ、激しかったぞ、イビキが。よほど疲れておったのじゃな」
「な……なんだ、脅かすなよ……」

 やっと発表された答えを聞いて、思い切り大きな溜息を吐いてしまう。良かった、本当に良かったと、とても安心してしまう。安心。そういえば、どうして安心するんだろう。変な話、俺は皆の主のはずだ。好意を持たれているのだから、その、そういう欲望をぶつけても誰にも咎められないはず。いや、いやいや、何を馬鹿なことを。皆をそういう目で見ちゃいけないだろう。主なんだから。
 なんて自分自身を説得に近い言い分で落ち着かせる。すると、あの時の光景がフラッシュバックする。ウロボロスが倒れた時の光景が。そうだ、俺の貞操ななんかどうでもいい。

「じゃなくて! そんなことはどうでもいいんだよ! それよりもウロボロスは大丈夫なのか!? どこにいる!?」

 何を呆けていたんだ、俺は。今一番大切なのはウロボロスの安否じゃないか。あいつはどこだ。ちゃんと生きているのか。生きていたとして、何か変な病気や状態異常で苦しんでいないだろうか。そもそもどうして倒れたんだ。わからない。クリスタル・バニッシュExはきちんと常時展開されているはずだったのに、なぜその恩恵を受けられなかったのか理解できない。

「落ち着くのじゃ、魔王様」
「わ、悪い……っ!」

 胸に手を押し当てられて、優しく止められて気が付く。カルマの両肩を強く握り締めていたらしい。慌てて手を離すと、ヴァンパイアのため元々やや青白い肌がより一層青くなってしまっている。
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