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第1章 偽りの騎士
第11話 ウロボロスの愛 3
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どうしてウロボロスは倒れてしまったのか。過度な仕事量よりも倒れるくらい辛くて、かつ、人間関係でないものがあるのだろうか。うーん、ブラック企業に勤めていた俺ですら皆目見当も付きそうにない。
「ふむ……そうじゃのう。ある意味でこれはウロボロスの望んだ結果と言えなくもない。故に、例え仕事が全く無くなろうとも、人間関係の悩みが無かったとしても、いや、他のあらゆる負の要因が一切合切無かったとしても、何度でも倒れるじゃろう」
「ど、どういうことだ?」
負の要因が一切合切無いって、それはつまり、人それぞれが個々に感じるはずのストレスの性質や重さによらないと言うのか。
そんな話があるのか。人はみんな違う。嬉しいことも、悲しいことも、辛いことも、系統が似ていたとしても全て同じということはあり得ない。だからこそ人間関係に悩むのではないか。こちらが良かれと思ってやってあげても、向こうからすれば煩わしく思ってしまっているかもしれない。そんな毎日を繰り返すから思い悩むのではないのか。
少し話がそれたが、要は、それくらい人がストレスと感じるものは多岐に渡ると思う。予想だにしない物事に対してストレスを感じてしまう。カルマは、その個人差も含めた全てが一切無かったとしても倒れると、そう言うのか。
「魔王様、無礼な物言いと承知であえて尋ねるのじゃが、ウロボロスの思いを過小評価されてはおらぬか?」
それがこの話に関係するのだろうか。今はさっぱり繋がらない気がするものの、恐らくカルマには何か考えがあるのだろう。ウロボロスが倒れた原因に至れるのなら、ここは素直に言われたままのことを考えてみるか。
ウロボロスの思いか。自分で設定しておきながら、正しく評価しているとは思えない。なぜなら、ウロボロスに限った話ではなくカルマたちもそうなのだが、俺の想像を超えて凄まじい働きを見せてくれるから。その中でもウロボロスは抜群に俺のことを強く思ってくれているのだと、漠然とわかった風になっているだけなのかもしれない。
「そうだなぁ……もの凄く強く俺を思ってくれている……と思うけど」
「では初めて魔王様とお会いした時、ウロボロスはどんな様子じゃった?」
「どんな……って」
素っ裸で隣に寝ていた、丁度さっきの貴女のようにね。なんて、言えないよな。それが何だっていう話だし。でも、あの時はそれがもの凄くインパクトが強くて、残念ながら、他に何か気にするべき点があったとしても思い出せそうにない。いや、それじゃあ駄目だな。ウロボロスのためだ。何としても思い出さなくては。
あの時、ウロボロスは凄く嬉しそうにしていた。はしゃいでいた、と言ってもいい。そうでなければ裸で俺の布団に潜り込もうとるだろうか。いや、うーん、それからほぼ毎日見た光景だな。まぁ、少なくとも言えることは、はしゃいでいた。ここが大事。自意識過剰かもしれないけど、俺たちと一緒にいられるこの世界に対して希望を抱いていたと推測できる。あ、まさか、そうやってはしゃぎ過ぎて倒れたなんて言わないよな。それは余りにも子どもっぽいし。
「この世界のシステムに気付いていたのではないかのう?」
「こ……この世界のシステム……?」
「例えば……メッセージ機能やメニュー画面、装備などじゃ」
言われてみれば、ウロボロスはたどたどしいながらも、メニュー画面を開いて服を着たな。確かに気付いていたと言える。でも、だから何だというんだ。それが今回の件を考える手がかりになるだろうか。
「魔王様も含めて、ワシらはウロボロスがおったからこの世界で戸惑わなかったじゃろう? メニュー画面のことも、こうしてお会いできたのも、ウロボロスのお陰ではないか」
言われてみればその通りだ。俺がこの世界で目覚めた時、隣にはウロボロスがいてくれた。戸惑う俺を気遣って、色々と教えてくれて、見せてくれて、導いてくれた。だから俺はスムーズにこの世界を受け入れられたのだと思う。
あの時はそういうものだと思ってしまったけど、もしも目覚めた時に誰もいなかったとしたら。想像しただけでも恐ろしい。いくら見たことのある部屋だったとしても、見慣れたゲームキャラクターになっていたとしても、そう簡単に受け入れられるものか。
「御身は初め、寝室におったじゃろう? ワシらも同じじゃ。きっとウロボロスも同様。では、一番初めに目が覚めたであろうあやつは一体どんな気持ちじゃったか……ワシにはわからぬ」
そっくりそのまま俺の想像通りだろう。そこがオラクル・ラビリンスの中だとはわかっても安全かどうかはわからない。他に誰がいるのか、武器は、防具は、そもそも自分の強さは通用するのか。何もかも不明。そんな真っ暗闇の中、メニュー画面を見付けて、俺を探し出してくれた。目が覚めるまで傍にいてくれて、皆にも声をかけてくれた。
「それら全てをたった1人で乗り越えた、その覚悟は今もなお続いておる」
「今も……?」
「ウロボロスはワシらの将じゃ。ワシらが思う以上に、あやつは将であろうとする。常に御身の傍に控え、その上で、ワシらの上に立ち続けるために見聞を広めておったのじゃ。ご存知ないかのう?」
心当たりはある。ある朝、目を覚ますと本を抱えて眠っていた。あんな無理を続けていたのだろう。そうでなければ、コーヒーやお茶菓子、抹茶など出て来るはずがない。きっと、そうして仕入れた知識はあれらだけでは済まないだろう。この世界に関する情報もたくさん仕入れているに違いない。
「では、いつその時間を確保しておったか」
「……まさか、あいつ」
起きている間は四六時中一緒にいた。俺と一緒にいる間、あいつは常に尽くしてくれていた。
「ふむ……そうじゃのう。ある意味でこれはウロボロスの望んだ結果と言えなくもない。故に、例え仕事が全く無くなろうとも、人間関係の悩みが無かったとしても、いや、他のあらゆる負の要因が一切合切無かったとしても、何度でも倒れるじゃろう」
「ど、どういうことだ?」
負の要因が一切合切無いって、それはつまり、人それぞれが個々に感じるはずのストレスの性質や重さによらないと言うのか。
そんな話があるのか。人はみんな違う。嬉しいことも、悲しいことも、辛いことも、系統が似ていたとしても全て同じということはあり得ない。だからこそ人間関係に悩むのではないか。こちらが良かれと思ってやってあげても、向こうからすれば煩わしく思ってしまっているかもしれない。そんな毎日を繰り返すから思い悩むのではないのか。
少し話がそれたが、要は、それくらい人がストレスと感じるものは多岐に渡ると思う。予想だにしない物事に対してストレスを感じてしまう。カルマは、その個人差も含めた全てが一切無かったとしても倒れると、そう言うのか。
「魔王様、無礼な物言いと承知であえて尋ねるのじゃが、ウロボロスの思いを過小評価されてはおらぬか?」
それがこの話に関係するのだろうか。今はさっぱり繋がらない気がするものの、恐らくカルマには何か考えがあるのだろう。ウロボロスが倒れた原因に至れるのなら、ここは素直に言われたままのことを考えてみるか。
ウロボロスの思いか。自分で設定しておきながら、正しく評価しているとは思えない。なぜなら、ウロボロスに限った話ではなくカルマたちもそうなのだが、俺の想像を超えて凄まじい働きを見せてくれるから。その中でもウロボロスは抜群に俺のことを強く思ってくれているのだと、漠然とわかった風になっているだけなのかもしれない。
「そうだなぁ……もの凄く強く俺を思ってくれている……と思うけど」
「では初めて魔王様とお会いした時、ウロボロスはどんな様子じゃった?」
「どんな……って」
素っ裸で隣に寝ていた、丁度さっきの貴女のようにね。なんて、言えないよな。それが何だっていう話だし。でも、あの時はそれがもの凄くインパクトが強くて、残念ながら、他に何か気にするべき点があったとしても思い出せそうにない。いや、それじゃあ駄目だな。ウロボロスのためだ。何としても思い出さなくては。
あの時、ウロボロスは凄く嬉しそうにしていた。はしゃいでいた、と言ってもいい。そうでなければ裸で俺の布団に潜り込もうとるだろうか。いや、うーん、それからほぼ毎日見た光景だな。まぁ、少なくとも言えることは、はしゃいでいた。ここが大事。自意識過剰かもしれないけど、俺たちと一緒にいられるこの世界に対して希望を抱いていたと推測できる。あ、まさか、そうやってはしゃぎ過ぎて倒れたなんて言わないよな。それは余りにも子どもっぽいし。
「この世界のシステムに気付いていたのではないかのう?」
「こ……この世界のシステム……?」
「例えば……メッセージ機能やメニュー画面、装備などじゃ」
言われてみれば、ウロボロスはたどたどしいながらも、メニュー画面を開いて服を着たな。確かに気付いていたと言える。でも、だから何だというんだ。それが今回の件を考える手がかりになるだろうか。
「魔王様も含めて、ワシらはウロボロスがおったからこの世界で戸惑わなかったじゃろう? メニュー画面のことも、こうしてお会いできたのも、ウロボロスのお陰ではないか」
言われてみればその通りだ。俺がこの世界で目覚めた時、隣にはウロボロスがいてくれた。戸惑う俺を気遣って、色々と教えてくれて、見せてくれて、導いてくれた。だから俺はスムーズにこの世界を受け入れられたのだと思う。
あの時はそういうものだと思ってしまったけど、もしも目覚めた時に誰もいなかったとしたら。想像しただけでも恐ろしい。いくら見たことのある部屋だったとしても、見慣れたゲームキャラクターになっていたとしても、そう簡単に受け入れられるものか。
「御身は初め、寝室におったじゃろう? ワシらも同じじゃ。きっとウロボロスも同様。では、一番初めに目が覚めたであろうあやつは一体どんな気持ちじゃったか……ワシにはわからぬ」
そっくりそのまま俺の想像通りだろう。そこがオラクル・ラビリンスの中だとはわかっても安全かどうかはわからない。他に誰がいるのか、武器は、防具は、そもそも自分の強さは通用するのか。何もかも不明。そんな真っ暗闇の中、メニュー画面を見付けて、俺を探し出してくれた。目が覚めるまで傍にいてくれて、皆にも声をかけてくれた。
「それら全てをたった1人で乗り越えた、その覚悟は今もなお続いておる」
「今も……?」
「ウロボロスはワシらの将じゃ。ワシらが思う以上に、あやつは将であろうとする。常に御身の傍に控え、その上で、ワシらの上に立ち続けるために見聞を広めておったのじゃ。ご存知ないかのう?」
心当たりはある。ある朝、目を覚ますと本を抱えて眠っていた。あんな無理を続けていたのだろう。そうでなければ、コーヒーやお茶菓子、抹茶など出て来るはずがない。きっと、そうして仕入れた知識はあれらだけでは済まないだろう。この世界に関する情報もたくさん仕入れているに違いない。
「では、いつその時間を確保しておったか」
「……まさか、あいつ」
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