魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

文字の大きさ
82 / 176
第1章 偽りの騎士

第16話 会議をします 1

しおりを挟む
 端的に言ってしまうとね、頭が割れそうだ。色々な事が起こり過ぎているのに、情報が足りなさ過ぎて身動きも取れない。
 そこで、だ。俺は一人で悶々と考えるのを一旦やめて、皆で情報の整理とその対処法を考えることにした。面子は復活したウロボロス、カルマ、アザレア、ムラクモの4人と会議用のテーブルを囲っている。不参加のフェンリスにはルーチェの看病をして貰っている。

「今日、皆に集まって貰ったのは他でもない。情報の整理とその対処法を話し合いたいと思う。ウロボロス、ホワイトボードとペンを」
「既に準備は整っております」

 本当ならウロボロスには休んで貰いたいところだった。もしくは、今のフェンリスの役目を任せたいところだった。倒れて復活してからまだ2日しか経っていないのだから。しかし、まぁ、勝てる訳がなかった。あの手この手で押し切られたのだ。細かいところは思い出したくもないが、私も絶対に参加すると言ってどうしても聞いてくれなくて今に至る。
 横目でチラリとウロボロスの顔色を伺ってみる。気合十分、体調万全、そんな生き生きとした顔をしている。ただ、それはきっと上辺だけだろう。昨日の今日だし、何より頑張り過ぎるからな、こいつは。時々気にしながら進めよう。

「よし、早速だけど大前提から確認するぞ。これまでの情報を統合すると、ここはドミニオンズではないどこか別の世界だ。俺たちは何者かによってこの世界に召喚されたと考えられる」

 言いながら、頭に蛆でも湧いたんじゃないかと思ってしまう。別世界、召喚だって。あぁ、穴があったら入りたいくらいに恥ずかしい発言だ。でも実際そうなのだから仕方ない。もはや疑う余地は無いが、ここまで長く生き生きと生活しているのだから、夢の可能性は皆無だろう。だからこれは紛れもない現実で、そうなると、こんなトンデモ発言が至極まともな内容になってしまう訳だ。

「魔王様、ひとつ宜しいかのう?」
「なんだ、カルマ?」

 まだ前提となる話をしているだけなのだが、カルマは挙手をして止めてきた。一体、何だろう。どこかおかしい点もあっただろうかと思いながら促すと、あぁ、なるほど。そういうことかとすぐに理解する。カルマの視線、そして指し示すように伸びた指は、ウロボロスへと向けられた。

「ウロボロスはワシらの将じゃ。書記なぞ、他の誰かに任せるべきではないかのう?」
「魔王様のご命令とあらば、僕は全く異存ありません。むしろ隣に行けるのならば本望です」
「我も、特に師匠の意見を聞きたいものだ」

 カルマたちの言い分はもっともかもしれない。俺の次に決定権を持つウロボロスの意見も聞きながら話を進めた方が、話し合いは早く済むだろう。それに、具体的にどの程度かはわからないものの、ウロボロスはこの世界についてかなり調べている。その知識もあてにしたいところではある。だが、それを知った上であえて俺は書記をお願いしたのだ。

「いや、ウロボロスは団長だからこそ、その発言は皆の考えに影響を与えかねない。俺が聞きたいのは率直な意見だ」

 今、俺が欲しているのは俺やウロボロスが思いつかない新しい発想だ。それなのに、組織の上に立つ人間が意見を言ってしまえば下の者が意見を言い辛くなる。何とか発言できても内容に制限がかかってしまうだろう。俺たちの考えに引っ張られてしまっては、この会議を開いた意味が無くなってしまう。

「なるほど、つまり僕たちは各々の得意分野の観点から、現状について意見を出せば良いと、そう仰るのですね?」
「そう、その通りだ、アザレア」

 呑み込みが早くて助かる。こういう理解力の高さもステータスが影響しているのだろうな。失礼な話、これがフェンリスだったら3倍時間をかけても理解してくれていないだろう。ただ、アザレア自身が言ったように、各々の得意分野の観点からの意見が欲しいのは本当だ。フェンリスを超える速さを持つ奴はいないから、そういう意味ではいてくれた方が良いのだが。うーん、だからって今から呼び寄せる訳にもいかない。大体にして、他に誰がルーチェの看病をしてくれるというのだ。まさか俺が抜ける訳にはいかないし。
 おっと、いけない。時間は有限だ。どんな話が飛び出してくれるのか全く予測も付かないのだから、要らない思考は置いておこう。カルマとムラクモもわかってくれたようだし、早速、色々と聞いていきたい。

「話を戻すぞ。この世界は大災厄とやらによって崩壊しかけて、聖少女リリス様なる人物が救済した。そして今の聖リリス帝国が興っている。そこから時間が飛ぶこと約5年、俺たちがこの世界にやって来て、アデルと出会い、あの村で一戦した訳だ。それから間もなく謎の人が溶け出す現象を目の当たりにして……」

 俺がこの会議を開こうと思った決定打が起こった。ウロボロスの偽者が現れたのだ。しかも驚くべきことに、カルマが言うにはステータスや所持する魔法、スキルは違うものの、外観、内面は瓜二つだったらしい。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...