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第1章 偽りの騎士
第16話 会議をします 2
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もうここまで見過ごせない問題が山積みになってしまっては、俺もどうしていいのかわからなくなってしまった、というのが本音だ。
「不可思議なことが続くものじゃのう」
「まったくだ。我でさえ、師匠本人ではないと即座に言い切れないくらいに似ていた」
おおよそこんなところだろう、現状の確認としては。この話を元にこれからどうするべきか話し合っていって欲しい訳なのだが、我ながら酷い状況だな。良い言い方をすれば、どの面から切っても問題があって話題には事欠かない。逆に悪い、というか個人的な感想を言ってしまえば、どこからどう手を付けて良いのかわからない惨状である。
司会進行もままならないまま皆の反応を伺っていると、ありがたいことに、アザレアが挙手してくれる。
「早速なのですが僕からひとつ提案が御座います。まずはリリス様かもしれない人物について詳しく知る。これを最優先目標としては如何でしょう?」
「そうじゃのう。メイドたちといい、まともにこちら側にいるのはゼルエル様だけではないか。本当にリリス様か否か、それを確認せねば動き辛くてかなわぬ」
2人の言う通りだ。ゼルエルがこちらにいるからまだいいものの、だからといってリリスを軽視することはできない。あいつが戦場に立ったが最後、そこら辺にいる村人の集団にさえ俺たちは負けてしまいかねない。つまり単純なステータス差や魔法、スキルの差なんて、いくらあっても関係無いと言っていい。そのくらい脅威なのだ。早急に本人なのかどうか、そして、無いと信じてはいるものの、もしも本人ならば敵でないかどうか確認したい。
「そうだな……万が一のことがあれば目に見える最大の脅威だ。最優先目標にしてしまってもいいかもしれない」
万が一俺の配下のリリスでなかったとしても、大変に重要な情報源になってくれるだろう。聖リリス帝国などという名前の国にいるんだ。相応の地位にあるのは確実。ならば、それに応じた情報を有しているに違いない。
気になることは山ほどある。5年前の大災厄、人が溶け出すあの現象、ウロボロスの偽者。パッと思い付くだけでもこれだけ重大なものが挙がるんだ。その内、どれかひとつくらいは解決できるだろう。
「そうなると、どうやって接触するかなんだが……」
「いつぞやのように、ファントム・シーカーを潜り込ませることを提案するのじゃ。本人ならば打ち消し、偽者ならば姿を確認できるじゃろうて」
なるほど、どちらに転んでも良い結果が得られる、と。しかも、俺たち自らが敵陣へいきなり乗り込む危険を冒さなくて良くて、その上、片手間で調べられることになる。これがまた大きい。これから俺たちはアデルとルーチェに関わることになる。どのくらい時間がかかるかわからないが、その間に同時進行で調査を進められるというのはありがたい。
実に良い方法ではないか。すぐにでもファントム・シーカーを出そう、そう言おうとした時だった。アザレアから待ったがかかる。
「待ってください、魔王様。万が一本物のリリス様が敵だった場合、宣戦布告と取られ、交戦状態に入る恐れがあります。いざという時に戦えるような準備を整えてからでなくては自殺行為になりかねません」
「そうか……そうだったな」
リリスが敵だなんてどうしても思えない。そう自然と考えていたのかもしれないが、忠告されてみれば、本当に大丈夫なのかと心配になってしまう。確かにゼルエルはいてくれるだろう。だからといって楽勝で勝てる相手ではない。ちょっとした何かがあればひっくり返りうる相手だ。その何か、には油断や慢心も含まれる。こんな気持ちで調査に乗り出していたら破滅したかもしれなかった。危ない。もっと慎重に事を進めるべきだ。
「しかし、それでは何も進展しない」
「……そうだな、そうなんだよな」
そう、ムラクモの言う通り。俺の何が悪いって、色々なことを気にし過ぎて臆病になっていることだと思う。あれこれと考えて、どうにか良さそうな手を思い付く癖に、デメリットを気にして尻込みしてしまっている。皆とずっと一緒にいたいから。皆が傷付くところを見たくないから。そう言えば聞こえはいいが、これでどうして事態が進展するだろう。危ない橋を渡りたくないから現状を保つ。そうして停滞した結果、俺たちはここまで追い詰められているんじゃないか。打って出なければ。今、これからは。
「よし、決めた。当面の目標はリリスと接触することとする。どんな形でも構わないが、できるだけ早期に達成できる方法を一緒に考えてくれ」
方向性は見えているんだ。ならば、そこへ至る道順を工夫すればいい。そのためには思い付く限りの方法を挙げるのが一番だろう。思い付く限り、思い付く限り。そうだ、正面切って会いに行くという王道をひとまず挙げておこう。これでひとつ目。ふたつ目は、うーん、待て、待ってくれ。ファントム・シーカーを向かわせる程の妙案、思い付く気がしないんだが。
「不可思議なことが続くものじゃのう」
「まったくだ。我でさえ、師匠本人ではないと即座に言い切れないくらいに似ていた」
おおよそこんなところだろう、現状の確認としては。この話を元にこれからどうするべきか話し合っていって欲しい訳なのだが、我ながら酷い状況だな。良い言い方をすれば、どの面から切っても問題があって話題には事欠かない。逆に悪い、というか個人的な感想を言ってしまえば、どこからどう手を付けて良いのかわからない惨状である。
司会進行もままならないまま皆の反応を伺っていると、ありがたいことに、アザレアが挙手してくれる。
「早速なのですが僕からひとつ提案が御座います。まずはリリス様かもしれない人物について詳しく知る。これを最優先目標としては如何でしょう?」
「そうじゃのう。メイドたちといい、まともにこちら側にいるのはゼルエル様だけではないか。本当にリリス様か否か、それを確認せねば動き辛くてかなわぬ」
2人の言う通りだ。ゼルエルがこちらにいるからまだいいものの、だからといってリリスを軽視することはできない。あいつが戦場に立ったが最後、そこら辺にいる村人の集団にさえ俺たちは負けてしまいかねない。つまり単純なステータス差や魔法、スキルの差なんて、いくらあっても関係無いと言っていい。そのくらい脅威なのだ。早急に本人なのかどうか、そして、無いと信じてはいるものの、もしも本人ならば敵でないかどうか確認したい。
「そうだな……万が一のことがあれば目に見える最大の脅威だ。最優先目標にしてしまってもいいかもしれない」
万が一俺の配下のリリスでなかったとしても、大変に重要な情報源になってくれるだろう。聖リリス帝国などという名前の国にいるんだ。相応の地位にあるのは確実。ならば、それに応じた情報を有しているに違いない。
気になることは山ほどある。5年前の大災厄、人が溶け出すあの現象、ウロボロスの偽者。パッと思い付くだけでもこれだけ重大なものが挙がるんだ。その内、どれかひとつくらいは解決できるだろう。
「そうなると、どうやって接触するかなんだが……」
「いつぞやのように、ファントム・シーカーを潜り込ませることを提案するのじゃ。本人ならば打ち消し、偽者ならば姿を確認できるじゃろうて」
なるほど、どちらに転んでも良い結果が得られる、と。しかも、俺たち自らが敵陣へいきなり乗り込む危険を冒さなくて良くて、その上、片手間で調べられることになる。これがまた大きい。これから俺たちはアデルとルーチェに関わることになる。どのくらい時間がかかるかわからないが、その間に同時進行で調査を進められるというのはありがたい。
実に良い方法ではないか。すぐにでもファントム・シーカーを出そう、そう言おうとした時だった。アザレアから待ったがかかる。
「待ってください、魔王様。万が一本物のリリス様が敵だった場合、宣戦布告と取られ、交戦状態に入る恐れがあります。いざという時に戦えるような準備を整えてからでなくては自殺行為になりかねません」
「そうか……そうだったな」
リリスが敵だなんてどうしても思えない。そう自然と考えていたのかもしれないが、忠告されてみれば、本当に大丈夫なのかと心配になってしまう。確かにゼルエルはいてくれるだろう。だからといって楽勝で勝てる相手ではない。ちょっとした何かがあればひっくり返りうる相手だ。その何か、には油断や慢心も含まれる。こんな気持ちで調査に乗り出していたら破滅したかもしれなかった。危ない。もっと慎重に事を進めるべきだ。
「しかし、それでは何も進展しない」
「……そうだな、そうなんだよな」
そう、ムラクモの言う通り。俺の何が悪いって、色々なことを気にし過ぎて臆病になっていることだと思う。あれこれと考えて、どうにか良さそうな手を思い付く癖に、デメリットを気にして尻込みしてしまっている。皆とずっと一緒にいたいから。皆が傷付くところを見たくないから。そう言えば聞こえはいいが、これでどうして事態が進展するだろう。危ない橋を渡りたくないから現状を保つ。そうして停滞した結果、俺たちはここまで追い詰められているんじゃないか。打って出なければ。今、これからは。
「よし、決めた。当面の目標はリリスと接触することとする。どんな形でも構わないが、できるだけ早期に達成できる方法を一緒に考えてくれ」
方向性は見えているんだ。ならば、そこへ至る道順を工夫すればいい。そのためには思い付く限りの方法を挙げるのが一番だろう。思い付く限り、思い付く限り。そうだ、正面切って会いに行くという王道をひとまず挙げておこう。これでひとつ目。ふたつ目は、うーん、待て、待ってくれ。ファントム・シーカーを向かわせる程の妙案、思い付く気がしないんだが。
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