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第1章 偽りの騎士
第18話 解答 3
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思い出せ。神無月は全てに対する解答があると言っていた。つまり相応の説明をしてくれるのだろう。事は重大なものばかりだ。真剣な内容を語ってくれるのなら身の安全が保証されるに違いない。この頬擦りは終わって、ウロボロスやカルマも解放されるはずだ。みんな万々歳である。
「あぁ、そうだな。しっかりとした説明を頼むよ」
「はい、勿論で御座います。まずは騎士様の質問から答えても宜しいですか?」
あれ、この流れるような会話はおかしい。どうして一度も区切りが入らないんだ。要は、俺はまだ頬擦りされたまま、ウロボロスやカルマは格闘したままじゃないか。まさかとは思うが、こんな痴態を晒しながら真剣な話をすると。おいおい、冗談はその暴走振りだけにしてくれよ。どこの世界に愛情表現しながら真面目モードに入る奴がいるんだよ。
「そ、その前に離れてくれないか? 皆に聞こえた方がいいだろ」
「私としたことが、気が利きませんで。神無月、あとは貴女の口から聞かせなさい」
おぉ、そうきたか。そこまでして俺にへばり付いていたいと。参った、降参だ、と言ってしまいたいところだが、そうはいかない。
一見すると打つ手は無さそうだ。なぜなら全てに対する解答を聞かせてくれると言った。しかも、皆に聞こえるようにという配慮もしてくれる。他に隙はあるだろうか。ふふ、ある。まだ茨の道は残されている。
「待て、ルシファー。そんなつれないことを言うなよ。やっとこうして会えたんだ。もっとお前の綺麗な声を聞きたいし、何より聞かせたい。この世界の住人にさ」
「ゆ……ユウ様……っ!」
これは賭けだ。一切の被害を完全に無視した賭けだ。今後ルシファーは勿論、ウロボロスからの激しい追及は確実にあるだろう。しかも、ルーチェからは完全に白い目で見られてしまうオマケ付き。そんなリスクを背負い込んでもノーと言われればそれで終わりである。だが俺は勝った。見ろ、あのルシファーのとろけるような赤面した顔を。
「それがユウ様の望みならば、全身全霊をかけて叶えるのが私の存在理由です!」
俺の想定を遥かに超えた規模の話になっていそうだけど、それでも何とか離れていってくれた。ウロボロスとカルマも解放されて、これで少なくとも今だけは落ち着いて話を聞けるようになったかな。
「あぁっ……! 我が君が汚されてしまいました……っ!」
「魔王様はワシらの魔王様じゃぞ!」
両脇からガッチリと腕を組まれて左右から頬擦りされる。これ、事態が悪化しただけのような気がしてならないんだが、果たして成功と言って良いのだろうか。うーん、ひとつだけ言えることは、どう転んでも俺に安寧は無かったらしい。まぁ、何はともあれ、ルシファーの魔手からは逃れられた。ウロボロスとカルマなら本当に最低限のTPOは弁えてくれるはずだから、さっきよりは安心して話を聞いていられるだろう。
「さて……お待たせしました、騎士様」
ルシファーはそんな2人を一瞥しただけで特に何も言い返すことなく、表情を引き締めてルーチェの方を向いた。凄まじいプレッシャーだ。先ほどまでのおふざけモードとはまた違う種類の強い圧力が、背中を見守るだけの俺ですら感じられる。
「は……はい」
恐らくルーチェも強大な力を感じているのだろう。一歩踏み出されると、それに合わせて一歩後ずさった。
信じられるか。あのウロボロスに真っ向から挑んだ程のあいつが後退したんだぞ。しかし、そこは流石のルーチェといったところか。二歩目からはグッと堪えて真っすぐ見つめていた。
「今回の一連の事件の真相とアデル様の生死、その居場所。この辺りが知りたいということで相違ありませんか?」
「間違いありません」
少しの間見つめ合うような形になった2人だったが、ルシファーの方からくすりという小さな笑い声が聞こえてくる。何がおかしいのだろう。別にルーチェは強がっている風には見えない。ドッシリと構えていて、膝もどこも震えてなどいないというのに。
「ご安心を。その全てを私は把握しております。嘘偽りのない話をしましょう」
「疑うかどうかは、聞いてからのことです」
なるほど、ルーチェの立場から考えれば、嘘を掴まされて追い返されても不思議ではない。なぜなら、アデルに会わせるという約束は一応の形ではあるが果たされている。これ以上付き合う必要はもう無く、ならば、あのアデルもどきと会ったところから既にはめられたと考えられなくもない。そう疑うのは本気であればある程に必然。それを笑ったのだろう、ルシファーは。
「ふむ……ただ、交わした約束はアデル様との面会のみ。無条件でお伝えできることは現在地だけになります」
言いながらルシファーはメニュー画面を操作し、ウィンドウを拡大表示してルーチェに見せる。映っていたのはマップ。この辺りの地図のようだ。オラクル・ラビリンスとアデルの再建した村との距離から推測するに、あれ、これはひょっとして、日本列島が収まるレベルの地図じゃないか。この規模から計算すると、ここから西に1000キロくらい離れた所に、赤い点が明滅している。
「アデル様はこちらになります」
「……確かな情報ですか? また偽者の可能性もあるのでは?」
「なるほど、その信憑性を語るのならば、この事件の真相も話す必要がありますね。ユウ様、如何なさいますか?」
普通に話していいよ、と言い掛けて、ひょっとしてこちらに有利な交換条件を提示できるかもしれないと思ってしまった。きっとルシファーも同様に考えているのだろう。無条件で伝えられるのは、とか言っていたし。
「あぁ、そうだな。しっかりとした説明を頼むよ」
「はい、勿論で御座います。まずは騎士様の質問から答えても宜しいですか?」
あれ、この流れるような会話はおかしい。どうして一度も区切りが入らないんだ。要は、俺はまだ頬擦りされたまま、ウロボロスやカルマは格闘したままじゃないか。まさかとは思うが、こんな痴態を晒しながら真剣な話をすると。おいおい、冗談はその暴走振りだけにしてくれよ。どこの世界に愛情表現しながら真面目モードに入る奴がいるんだよ。
「そ、その前に離れてくれないか? 皆に聞こえた方がいいだろ」
「私としたことが、気が利きませんで。神無月、あとは貴女の口から聞かせなさい」
おぉ、そうきたか。そこまでして俺にへばり付いていたいと。参った、降参だ、と言ってしまいたいところだが、そうはいかない。
一見すると打つ手は無さそうだ。なぜなら全てに対する解答を聞かせてくれると言った。しかも、皆に聞こえるようにという配慮もしてくれる。他に隙はあるだろうか。ふふ、ある。まだ茨の道は残されている。
「待て、ルシファー。そんなつれないことを言うなよ。やっとこうして会えたんだ。もっとお前の綺麗な声を聞きたいし、何より聞かせたい。この世界の住人にさ」
「ゆ……ユウ様……っ!」
これは賭けだ。一切の被害を完全に無視した賭けだ。今後ルシファーは勿論、ウロボロスからの激しい追及は確実にあるだろう。しかも、ルーチェからは完全に白い目で見られてしまうオマケ付き。そんなリスクを背負い込んでもノーと言われればそれで終わりである。だが俺は勝った。見ろ、あのルシファーのとろけるような赤面した顔を。
「それがユウ様の望みならば、全身全霊をかけて叶えるのが私の存在理由です!」
俺の想定を遥かに超えた規模の話になっていそうだけど、それでも何とか離れていってくれた。ウロボロスとカルマも解放されて、これで少なくとも今だけは落ち着いて話を聞けるようになったかな。
「あぁっ……! 我が君が汚されてしまいました……っ!」
「魔王様はワシらの魔王様じゃぞ!」
両脇からガッチリと腕を組まれて左右から頬擦りされる。これ、事態が悪化しただけのような気がしてならないんだが、果たして成功と言って良いのだろうか。うーん、ひとつだけ言えることは、どう転んでも俺に安寧は無かったらしい。まぁ、何はともあれ、ルシファーの魔手からは逃れられた。ウロボロスとカルマなら本当に最低限のTPOは弁えてくれるはずだから、さっきよりは安心して話を聞いていられるだろう。
「さて……お待たせしました、騎士様」
ルシファーはそんな2人を一瞥しただけで特に何も言い返すことなく、表情を引き締めてルーチェの方を向いた。凄まじいプレッシャーだ。先ほどまでのおふざけモードとはまた違う種類の強い圧力が、背中を見守るだけの俺ですら感じられる。
「は……はい」
恐らくルーチェも強大な力を感じているのだろう。一歩踏み出されると、それに合わせて一歩後ずさった。
信じられるか。あのウロボロスに真っ向から挑んだ程のあいつが後退したんだぞ。しかし、そこは流石のルーチェといったところか。二歩目からはグッと堪えて真っすぐ見つめていた。
「今回の一連の事件の真相とアデル様の生死、その居場所。この辺りが知りたいということで相違ありませんか?」
「間違いありません」
少しの間見つめ合うような形になった2人だったが、ルシファーの方からくすりという小さな笑い声が聞こえてくる。何がおかしいのだろう。別にルーチェは強がっている風には見えない。ドッシリと構えていて、膝もどこも震えてなどいないというのに。
「ご安心を。その全てを私は把握しております。嘘偽りのない話をしましょう」
「疑うかどうかは、聞いてからのことです」
なるほど、ルーチェの立場から考えれば、嘘を掴まされて追い返されても不思議ではない。なぜなら、アデルに会わせるという約束は一応の形ではあるが果たされている。これ以上付き合う必要はもう無く、ならば、あのアデルもどきと会ったところから既にはめられたと考えられなくもない。そう疑うのは本気であればある程に必然。それを笑ったのだろう、ルシファーは。
「ふむ……ただ、交わした約束はアデル様との面会のみ。無条件でお伝えできることは現在地だけになります」
言いながらルシファーはメニュー画面を操作し、ウィンドウを拡大表示してルーチェに見せる。映っていたのはマップ。この辺りの地図のようだ。オラクル・ラビリンスとアデルの再建した村との距離から推測するに、あれ、これはひょっとして、日本列島が収まるレベルの地図じゃないか。この規模から計算すると、ここから西に1000キロくらい離れた所に、赤い点が明滅している。
「アデル様はこちらになります」
「……確かな情報ですか? また偽者の可能性もあるのでは?」
「なるほど、その信憑性を語るのならば、この事件の真相も話す必要がありますね。ユウ様、如何なさいますか?」
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