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第2章 暁の竜神
第3話 紅竜同盟の使者 7
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ただ、いくつか懸念もある。そもそも祭りは偏った情報の集合体だ。人も、街も、国ですら普段とはまるで違う様相を見せる。それを見てサウス・グリードの内情がわかったと言えるだろうか。
それに当り前だが罠のリスクもある。内地までおびき寄せてから一網打尽にするも良し、向こうに都合の良い情報だけを握らせてくるも良し。お客さんとして出向く俺たちは一方的にそれらを受けるしかないのだ。このリスクだけでも避けるためには、
「質問があります。もしも祭りに行くならば案内役は付くのでしょうか?」
ウロボロスのした質問こそ鍵を握る。俺たちはまだこの世界にやって来て日が浅い。見たことも聞いたことも無いことがまだまだたくさんあるだろう。極端に言ってしまえば、雪が黒いと言われればそう信じるしかない状況なのだ。案内役なんて付いた日には雪という凶悪な敵がいるとでも言われて、いもしない敵を探し回る羽目になるかもしれない。もしも本心で内情を知って欲しいと言うのなら返答はひとつしか考えられない。
「全て、ご希望に添いましょう」
その返答に一切の淀みは無かった。本気でこちらに関与するつもりはない、そう言いたいのだろう。
「では案内役も護衛も不要です。それで良いですか、我が君?」
「俺は構わないけど」
「わかりました。そのようにさせて頂きます」
これで決まったらしい。ならば今は素直に喜ぼう。無駄に神経をすり減らす偵察なんて苦行をしなくていいんだ。どんな情報でも見放題とかいうボーナスゲームを楽しめる、ということでいいじゃないか。
「……ウロボロスの言う通り、俺たちは勝手に参加させて貰う。祭りの日時と場所だけ教えて欲しい」
「わかりました。ではその旨をナディア様に報告させて頂きます。詳細は追って手紙を出しましょう。本日の要件は以上になります」
終わったか。まぁ、この流れならそうだろうな。でも駄目だな、この気持ちの悪さは体に毒だ。どうしても疑ってしまう気持ちに少しでもいいから整理を付けたい。
だって考えてみろ。万が一戦争になった場合、一度でも行ったことのある土地ならあっという間に主城まで侵攻、陥落させられる。その大き過ぎるリスクは向こうも知らぬはずがないのに、この大盤振る舞いはやっぱり不気味過ぎる。藪蛇になるかもしれないが今度はこちらから吹っかけてみようか。
「ところで、反対にそっちが聞いておきたい事は何も無いのか?」
「はい、ありません……と言いたいところですが、ひとつだけ伺わせてください」
来たか。何かしらお前たちの利益になりうる要求が。そりゃそうだ。こんなに綺麗に終わられてたまるか。何かしら尻尾を見せて欲しい。
「先程の大きな揺れは何ですか?」
「先程の大きな……? あー……」
すっかり忘れていた。曲がりなりにもここは城。壁には相応の耐久力があって、それを拭き飛ばす程の大惨事が起こったのだ。いくら離れていたとはいえ同じ建物だ。この部屋にも多少の被害は出てしまうだろう。今になって気付いたが、よく見ると飾っておいた花瓶が無くなっている。そのすぐ下に敷いたカーペットには水か何かを零した跡が残っていた。少なくともそのくらいの地震的な揺れはあったと推察できる。
どうしよう。何て言おう。どう言い繕っても恥でしかないしなぁ。
「その……トップシークレットということでいいかな?」
「そうですか、わかりました」
ならば、わざわざ教える必要もあるまい。ていうか思い出したくもない。とりあえず秘密にしてみる。
そっと隣の犯人の顔を見てみた。なぜかウロボロスさんは澄まし顔。ほぼ貴女が原因でしょうに。まぁ、あれこれ言われるよりはいいけど。
それはともかくだ。そんな質問でいいのか、メグよ。もっとこう、無いのか。こちらの戦力を探ったりとか、弱点を想像できそうな話でも聞き出したりとか、何なら俺を篭絡できるような情報を得ようとしたりとか、あるだろう。最後のなら喜んで答えるぞ。俺はメグの裸が見られればそれで、おっと、これこそ秘密、いやいや冗談だ。考えることすら許されない望みを抱くものか。
念のため恐る恐るウロボロスさんの顔を見ている。バッチリ反応したのか額に青筋が浮かんでいた。思考まで読まれているのだろうか。うーん、恐ろしい。
「では話は以上です。竜神祭でお待ちしております。願わくばこちらの現状を把握して頂けますよう、よろしくお願い致します」
「あ……あぁ、ではまた。メイドたちに送らせる」
助かった。今ばかりは感謝しよう、メグ。お陰でウロボロスが怒るタイミングを完全に奪うことに成功した。
水無月に連絡を入れて、それとなくメグだけでももてなすよう伝えてから見送る。それから、そういえばと興味本位で聞いてみれば、ローレンたちはあれからもずっと葉月がホールドしていたらしい。回復魔法を一応かけながら捕縛していたから生きてはいるとのこと。うーん、まぁ、葉月みたいな可愛い子に死ぬほど強くずっと抱き締められていたんだ。ぶっちゃけお金を払って欲しいくらいだ。
そんな事よりも、ふと考えてしまう。竜神祭。文字通り祭りなのだろう。祭り、祭りかぁ。奉るとか言っていたから厳粛な雰囲気なんだろうけど、少し外れた所で縁日みたいになっているのだろうか。それとも端から端まで隈なく儀式的なムードなのだろうか。わからん。わからないが、どうせ行くなら楽しい方がいいかな。なんて、思ってみたりした。勿論、警戒は怠れないけど。
それに当り前だが罠のリスクもある。内地までおびき寄せてから一網打尽にするも良し、向こうに都合の良い情報だけを握らせてくるも良し。お客さんとして出向く俺たちは一方的にそれらを受けるしかないのだ。このリスクだけでも避けるためには、
「質問があります。もしも祭りに行くならば案内役は付くのでしょうか?」
ウロボロスのした質問こそ鍵を握る。俺たちはまだこの世界にやって来て日が浅い。見たことも聞いたことも無いことがまだまだたくさんあるだろう。極端に言ってしまえば、雪が黒いと言われればそう信じるしかない状況なのだ。案内役なんて付いた日には雪という凶悪な敵がいるとでも言われて、いもしない敵を探し回る羽目になるかもしれない。もしも本心で内情を知って欲しいと言うのなら返答はひとつしか考えられない。
「全て、ご希望に添いましょう」
その返答に一切の淀みは無かった。本気でこちらに関与するつもりはない、そう言いたいのだろう。
「では案内役も護衛も不要です。それで良いですか、我が君?」
「俺は構わないけど」
「わかりました。そのようにさせて頂きます」
これで決まったらしい。ならば今は素直に喜ぼう。無駄に神経をすり減らす偵察なんて苦行をしなくていいんだ。どんな情報でも見放題とかいうボーナスゲームを楽しめる、ということでいいじゃないか。
「……ウロボロスの言う通り、俺たちは勝手に参加させて貰う。祭りの日時と場所だけ教えて欲しい」
「わかりました。ではその旨をナディア様に報告させて頂きます。詳細は追って手紙を出しましょう。本日の要件は以上になります」
終わったか。まぁ、この流れならそうだろうな。でも駄目だな、この気持ちの悪さは体に毒だ。どうしても疑ってしまう気持ちに少しでもいいから整理を付けたい。
だって考えてみろ。万が一戦争になった場合、一度でも行ったことのある土地ならあっという間に主城まで侵攻、陥落させられる。その大き過ぎるリスクは向こうも知らぬはずがないのに、この大盤振る舞いはやっぱり不気味過ぎる。藪蛇になるかもしれないが今度はこちらから吹っかけてみようか。
「ところで、反対にそっちが聞いておきたい事は何も無いのか?」
「はい、ありません……と言いたいところですが、ひとつだけ伺わせてください」
来たか。何かしらお前たちの利益になりうる要求が。そりゃそうだ。こんなに綺麗に終わられてたまるか。何かしら尻尾を見せて欲しい。
「先程の大きな揺れは何ですか?」
「先程の大きな……? あー……」
すっかり忘れていた。曲がりなりにもここは城。壁には相応の耐久力があって、それを拭き飛ばす程の大惨事が起こったのだ。いくら離れていたとはいえ同じ建物だ。この部屋にも多少の被害は出てしまうだろう。今になって気付いたが、よく見ると飾っておいた花瓶が無くなっている。そのすぐ下に敷いたカーペットには水か何かを零した跡が残っていた。少なくともそのくらいの地震的な揺れはあったと推察できる。
どうしよう。何て言おう。どう言い繕っても恥でしかないしなぁ。
「その……トップシークレットということでいいかな?」
「そうですか、わかりました」
ならば、わざわざ教える必要もあるまい。ていうか思い出したくもない。とりあえず秘密にしてみる。
そっと隣の犯人の顔を見てみた。なぜかウロボロスさんは澄まし顔。ほぼ貴女が原因でしょうに。まぁ、あれこれ言われるよりはいいけど。
それはともかくだ。そんな質問でいいのか、メグよ。もっとこう、無いのか。こちらの戦力を探ったりとか、弱点を想像できそうな話でも聞き出したりとか、何なら俺を篭絡できるような情報を得ようとしたりとか、あるだろう。最後のなら喜んで答えるぞ。俺はメグの裸が見られればそれで、おっと、これこそ秘密、いやいや冗談だ。考えることすら許されない望みを抱くものか。
念のため恐る恐るウロボロスさんの顔を見ている。バッチリ反応したのか額に青筋が浮かんでいた。思考まで読まれているのだろうか。うーん、恐ろしい。
「では話は以上です。竜神祭でお待ちしております。願わくばこちらの現状を把握して頂けますよう、よろしくお願い致します」
「あ……あぁ、ではまた。メイドたちに送らせる」
助かった。今ばかりは感謝しよう、メグ。お陰でウロボロスが怒るタイミングを完全に奪うことに成功した。
水無月に連絡を入れて、それとなくメグだけでももてなすよう伝えてから見送る。それから、そういえばと興味本位で聞いてみれば、ローレンたちはあれからもずっと葉月がホールドしていたらしい。回復魔法を一応かけながら捕縛していたから生きてはいるとのこと。うーん、まぁ、葉月みたいな可愛い子に死ぬほど強くずっと抱き締められていたんだ。ぶっちゃけお金を払って欲しいくらいだ。
そんな事よりも、ふと考えてしまう。竜神祭。文字通り祭りなのだろう。祭り、祭りかぁ。奉るとか言っていたから厳粛な雰囲気なんだろうけど、少し外れた所で縁日みたいになっているのだろうか。それとも端から端まで隈なく儀式的なムードなのだろうか。わからん。わからないが、どうせ行くなら楽しい方がいいかな。なんて、思ってみたりした。勿論、警戒は怠れないけど。
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