165 / 176
第2章 暁の竜神
第10話 ユウとナディアの会談 1
しおりを挟む
今日も一日頑張ったなぁ、それが素直な感想だった。万が一に備えた保険とはいえ、復興したばかりのオラクル・ラビリンスの全てをチェックするのは骨が折れる。明日もまた缶詰になるだろう。だが、今は考えるのはやめだ。仕事終わりのコーヒーブレイクを心置きなく満喫しなくては。
あー、味が薄い。でも体に、頭に染み渡っていくような快感は得られる。やがてカップが空になり、そろそろ休もうかと思った矢先の事。またしてもウロボロスがやって来る。また、と言った。言わせてくれ。だってさ、
「我が君、お疲れ様でした。お休みになられる前に、コーヒーは如何でしょうか?」
「え、えっと……その、ウロボロス?」
1日に何杯淹れると気が済むんだ。起床、3食、食事の合間に出されたのも合わせると20杯を優に超えている。もう腹の中はコーヒーしか入っていないだろうよ。中毒患者か、俺は。トイレが近くてたまらないぞ。そう訴えているのだが、見てくれ、このウロボロスの喜々とした表情を。
「これは自信作です。今度こそ大丈夫です。よくお休みになるためにも、是非ご賞味くださいませ」
多分だけど毎回、創意工夫を凝らして淹れているのだろう。相変わらず味は薄いものの、ほんのりと違う気がしている。豆を変えているのか、それとも何か調味料でも足したのか。少なくとも砂糖やミルクではない何かが混ぜられているのだろう。まぁ、あくまでも微かにそう感じる程度で、出汁が変わったかな、程度ではあるが。
まぁ、それでも違う味を出しているのは事実。それにこの笑顔。どうしても強くは断れず、ここまでズルズルと来てしまった。でも、それもここまでだ。
「あ、あのさ、コーヒーにはカフェインってものが入っていてな」
はっきり言って、そろそろ寝たい。時計を見ると、もう朝日が出てもおかしくない時刻だ。社会人ならまだ序の口だと思うだろうか。安心してくれ、もう2回は太陽が昇るのを見た。目が痛い。頭がボーッとする。体が怠い。仕事でもないのにどうしてここまで頑張ったのかと、自分自身に問いたいくらいだ。
理由はいくつかあるが、きっとその一助となっていたのは度々出されたコーヒーだろう。だからさ、そろそろ解放して欲しい。これ以上眠気覚ましの成分を取ってしまえば死ぬかもしれないぞ、俺。
「カフェイン……? それは、私の隠しき切れない愛じょ……いえ、最高の調味料と、何か関係が御座いますか?」
駄目だ、ウロボロスも連続の徹夜特有の謎のテンションになっている。くそう、もういっそ、このまま共倒れになってしまおうか。いや、待て待て。それは駄目だ。またカルマたちに心配をかけてしまう。寝なくては。俺のため、ウロボロスのため、そして皆のために。
「えーと、その、カフェインっていうのはな、眠気を覚ましてしまう効果があって。俺はそろそろ寝たいところで……」
「つまり、今夜は寝かせないということですね!? あぁ、遂に私の思いが届いたということにっ!」
あぁん、もう。どうして都合の良い部分だけ抽出しちゃうかな。その上、なぜ曲解しちゃうかな。もはや原型を留めてないぞ。
それもこれも、全てはルーチェのせいだ。あいつがアデルのコーヒーをあらぬ方向から褒めちぎったから、そのとばっちりが飛んできている。なんだよ、隠し切れない隠し味って。隠せないならどっかしまっておけっての。
そんなことより、今はウロボロスの暴走を止めないと。このままの勢いは危険。大変なことをされかねない。
「違う! い、いや、全く否定はしないよ? お前の気持ちは痛いほど伝わっているから! で、でもさ、そういうのは順序があってだな!」
必死に宥めていると、控えめなノックの音がする。この感じ、カルマだろうか。フェンリスは元気よくバーンと、アザレアはすっと入って来る。ムラクモはもう少し甲高いノックだ。なんて謎の分析をしていると、返答する前だというのにガチャリとドアが開いた。案の定、そこにはカルマが立っていた。
「魔王様、失礼するのじゃ」
「あぁ、やっぱりカルマか。どうした、こんな時間に?」
気付いただろうか。俺は今、いつもならしないミスを犯した。油断していた。これを転機に何とかして寝られないかな、とか考えていたんだ。眠気に負けそうな時、そんな甘えは命取り。見ろ、ウロボロスを。こちらもまた眠気に襲われて、いつも以上に理性のストッパーが緩々になってしまっているのだろう。俺の失言に敏感に反応し、目を吊り上げて詰め寄って来る。
「……む、やっぱりとは一体どういう意味ですか? まさか、カルマとそんな関係に……!」
そうだよね、そうくるよね。これじゃあ、まるで俺がカルマを呼んだみたいじゃんか。冷静に考えてみればこの2日、俺はずっとウロボロスと一緒にいた。離れていたのはコーヒーを淹れている間だけだ。そんな一瞬の隙を突いて、どうして俺がカルマと会う約束を交わせるだろう。ちょっと考えればわかるだろうに。
え、コーヒーを淹れるのだから一瞬ではないだって。甘いな。ウロボロスが俺からそう長く離れるものか。毎回1分足らずで済ませて来たんだぞ。最短記録は3秒だぞ。どうだ、凄いだろ。
「落ち着け、ウロボロス。何も無いから」
そんな自慢をしてもどうにもならないし、それはそれで悲しい話だ。カルマとイチャイチャしたい気持ちも無い訳ではない。ぶっちゃけカルマは好みだから。
あー、味が薄い。でも体に、頭に染み渡っていくような快感は得られる。やがてカップが空になり、そろそろ休もうかと思った矢先の事。またしてもウロボロスがやって来る。また、と言った。言わせてくれ。だってさ、
「我が君、お疲れ様でした。お休みになられる前に、コーヒーは如何でしょうか?」
「え、えっと……その、ウロボロス?」
1日に何杯淹れると気が済むんだ。起床、3食、食事の合間に出されたのも合わせると20杯を優に超えている。もう腹の中はコーヒーしか入っていないだろうよ。中毒患者か、俺は。トイレが近くてたまらないぞ。そう訴えているのだが、見てくれ、このウロボロスの喜々とした表情を。
「これは自信作です。今度こそ大丈夫です。よくお休みになるためにも、是非ご賞味くださいませ」
多分だけど毎回、創意工夫を凝らして淹れているのだろう。相変わらず味は薄いものの、ほんのりと違う気がしている。豆を変えているのか、それとも何か調味料でも足したのか。少なくとも砂糖やミルクではない何かが混ぜられているのだろう。まぁ、あくまでも微かにそう感じる程度で、出汁が変わったかな、程度ではあるが。
まぁ、それでも違う味を出しているのは事実。それにこの笑顔。どうしても強くは断れず、ここまでズルズルと来てしまった。でも、それもここまでだ。
「あ、あのさ、コーヒーにはカフェインってものが入っていてな」
はっきり言って、そろそろ寝たい。時計を見ると、もう朝日が出てもおかしくない時刻だ。社会人ならまだ序の口だと思うだろうか。安心してくれ、もう2回は太陽が昇るのを見た。目が痛い。頭がボーッとする。体が怠い。仕事でもないのにどうしてここまで頑張ったのかと、自分自身に問いたいくらいだ。
理由はいくつかあるが、きっとその一助となっていたのは度々出されたコーヒーだろう。だからさ、そろそろ解放して欲しい。これ以上眠気覚ましの成分を取ってしまえば死ぬかもしれないぞ、俺。
「カフェイン……? それは、私の隠しき切れない愛じょ……いえ、最高の調味料と、何か関係が御座いますか?」
駄目だ、ウロボロスも連続の徹夜特有の謎のテンションになっている。くそう、もういっそ、このまま共倒れになってしまおうか。いや、待て待て。それは駄目だ。またカルマたちに心配をかけてしまう。寝なくては。俺のため、ウロボロスのため、そして皆のために。
「えーと、その、カフェインっていうのはな、眠気を覚ましてしまう効果があって。俺はそろそろ寝たいところで……」
「つまり、今夜は寝かせないということですね!? あぁ、遂に私の思いが届いたということにっ!」
あぁん、もう。どうして都合の良い部分だけ抽出しちゃうかな。その上、なぜ曲解しちゃうかな。もはや原型を留めてないぞ。
それもこれも、全てはルーチェのせいだ。あいつがアデルのコーヒーをあらぬ方向から褒めちぎったから、そのとばっちりが飛んできている。なんだよ、隠し切れない隠し味って。隠せないならどっかしまっておけっての。
そんなことより、今はウロボロスの暴走を止めないと。このままの勢いは危険。大変なことをされかねない。
「違う! い、いや、全く否定はしないよ? お前の気持ちは痛いほど伝わっているから! で、でもさ、そういうのは順序があってだな!」
必死に宥めていると、控えめなノックの音がする。この感じ、カルマだろうか。フェンリスは元気よくバーンと、アザレアはすっと入って来る。ムラクモはもう少し甲高いノックだ。なんて謎の分析をしていると、返答する前だというのにガチャリとドアが開いた。案の定、そこにはカルマが立っていた。
「魔王様、失礼するのじゃ」
「あぁ、やっぱりカルマか。どうした、こんな時間に?」
気付いただろうか。俺は今、いつもならしないミスを犯した。油断していた。これを転機に何とかして寝られないかな、とか考えていたんだ。眠気に負けそうな時、そんな甘えは命取り。見ろ、ウロボロスを。こちらもまた眠気に襲われて、いつも以上に理性のストッパーが緩々になってしまっているのだろう。俺の失言に敏感に反応し、目を吊り上げて詰め寄って来る。
「……む、やっぱりとは一体どういう意味ですか? まさか、カルマとそんな関係に……!」
そうだよね、そうくるよね。これじゃあ、まるで俺がカルマを呼んだみたいじゃんか。冷静に考えてみればこの2日、俺はずっとウロボロスと一緒にいた。離れていたのはコーヒーを淹れている間だけだ。そんな一瞬の隙を突いて、どうして俺がカルマと会う約束を交わせるだろう。ちょっと考えればわかるだろうに。
え、コーヒーを淹れるのだから一瞬ではないだって。甘いな。ウロボロスが俺からそう長く離れるものか。毎回1分足らずで済ませて来たんだぞ。最短記録は3秒だぞ。どうだ、凄いだろ。
「落ち着け、ウロボロス。何も無いから」
そんな自慢をしてもどうにもならないし、それはそれで悲しい話だ。カルマとイチャイチャしたい気持ちも無い訳ではない。ぶっちゃけカルマは好みだから。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる