魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第2章 暁の竜神

第11話 ルーチェvs紅蓮飛竜隊 4

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 なんと醜く滑稽なのだろうとルーチェは思った。目の前しか見ていなくて現実を知らない。ここまでの全てが罠だったと考えもしない。この愚かしさを何と表現すればいいのだろう。答えは決まっている。

「本当に……馬鹿ばっかり」

 風が吹く。風、いや、そんな生易しいものじゃない。トルネード、台風の類いだ。大木を根本から吸い上げ、壁をボロボロと崩壊させる程の強風。しかし竜人たちはびくともしなかった。彼らの飛行能力は高く、例え大嵐の中だろうと物ともせずに突き進めるのだから。

「馬鹿め、そんな風ごときで我らを撹乱できるものか!」

 槍が一斉に突き立てられ、針山のようになった。ローレンも、竜人たちも、誰もが勝利を疑わなかった。だから見落とした、一瞬の隙。

「甘い――」

 風は、まだ止まない。逆巻き連なり巨大な槍と化す。
 ルーチェは無事だった。藍色の盾に守られて、つまり、リリスの御守りを意図的に発動させていた。自ら致命傷となる箇所で槍を受けにいったのだ。そんな絶対的な盾を得て、彼女は攻撃に専念する。

「――エアリアル・ランサー!」
「総員、備えろ――!」

 ただ、その反撃は遅かった。大き過ぎる故にゆったりとした動きである。何だ、人間などこんなものかと気を緩ませつつ、ローレンは余裕で軌道上から逃れてしまう。

「無い知恵を振り絞ったのだろうが――」
「――はい、チェックメイト」

 油断させたところを的確に穿つ。そんなルーチェの術中にハマったローレンは、その背後に突然彼女が現れても反応すらできない。予想だにしない奇襲に弱い、典型的な強者の弱点であった。

「――貴様っ!?」
「ローレン様――!?」

 ルーチェだけがほくそ笑む。もう阻まれるものはなく、風の槍で胸をひと突き。これで終わり。

「――あれ?」

 しかし、予想外に鎧は硬過ぎた。いや、呪いの類いがかけられていたのかもしれない。鎧と共に風の槍は砕け、ローレンの体まで届かなかった。しかも焼けるような爆風が発生して押し戻されてしまう。

「なんで貴方のだけ、こんな硬度なの?」
「く、くそが……っ!」

 奇襲失敗と判断したルーチェは空中を素早く駆け抜ける。追っ手や行く手を阻む者たちを、落下する巨大な槍、エアリアル・ジャベリンの風圧で吹き飛ばしながら。お陰で、辛くも距離を取ることには成功した。

「ま、待て! ただで逃がすと思うなよ!?」
「ふふん、ここまでおいでー!」

 涼しそうな顔をしているが、ルーチェは内心では悔しい気持ちで一杯だった。相手は身体能力の高い竜人、しかも大軍。こちらはたった1人。勝機があるとすれば不意討ち以外に無かった。だからこそ煽りもした。それがどうだ。なんだ、あの予想外に硬い防具は。予想外。そう、侮っていたのはルーチェの方だったのかもしれない。

「……さて、と」

 関所の上に下り立ち、ルーチェは一瞬で思案する。ここから挽回する策を。まぁ、そんなものは無いからすぐに終わったのだが。流石のローレンも、似たような手を二度は許すまい。竜人たちも警戒を厳にするだろう。一方、こちらの予定していた奇策は出し尽くした。

「……こんな薄汚れた土地だけどさ、それでも、アデルが、そしてあの人が守った場所なんだよね」

 逃げるか、戦うか。2つに1つ。しかし悩む必要なんて無い。1秒もかけずにルーチェは即断する。それが例え、命を落とすことになろうとも。

「だからさ……おいそれと逃げ帰る訳にはいかないかな!」

 元より一度は死んだ身。ここで果てることに未練は無く、あるのはアデルの笑顔を見たいという願いのみ。ルーチェは反転し、迫り来る紅蓮飛竜隊と真っ向から向き合った。

「さぁ、行こうか、栄えある竜人さん! あんまり人間を舐めないでね!」

 目の前にいる奴らを1人ずつ確実に仕留めにかかる。どこまでやれるか、なんて考えない。敵の数が多いとか、もう策が無いとか、そういう話ではない。何としてもやり遂げなくてはならないのだから、考える意味が無いのだ。

「――そこまでです」

 今まさに刃が交わろうとした時、その声は空高くより響く。力強く、凛とした、よく通る少女の声。しかしとても高貴で絶対的な力を感じさせるもの。その影響力は凄まじく、本気で殺しにかかっていた竜人たちはおろか、ルーチェまでも戦いを止めてしまう。
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