【改稿版】光を忘れたあなたに、永遠の後悔を

桜野なつみ

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第1話 愛しき日々

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幼い頃、フィアナはよく夢を見た。

緑の風が吹き渡る王城の庭。
小さな背中を追いかけるように、明るい笑い声が響く。
リュシアン――未来の王であり、幼なじみであり、そして彼女の婚約者。
小さな彼の手を握り、転ばぬように駆ける彼女の顔は、いつも光に満ちていた。

「ぼくが王になったら、フィアナをお妃さまにするんだ!」

まだ冠の重さも知らない少年の宣言に、周囲の大人たちは微笑みを交わした。
それは幾度も繰り返された約束。
愛らしく、そしてまぶしいほどの未来の予感。

成人の年を迎えたふたりは、本当に夫婦となった。
ルシエル王国の王と、セラフィムの血を継ぐ王妃として。
それは政略ではなく、互いの信頼と祈りが結んだ絆だった。

国は祝福に包まれ、ふたつの王国――ルシエルとセラフィムは、光を分け合うように栄えた。

やがて双子の子どもたちが生まれた時、リュシアンは涙を浮かべて言った。
「フィアナ、君のおかげだ。ありがとう。本当に、ありがとう……」

あの日の彼の瞳は、まっすぐに彼女を映していた。

だが――その光は、やがて失われていく。
静かに、確かに。

まだ何も壊れていない、美しかった過去。
それが、彼女の光の「最後」のはじまりだった。
そしてこの国は、やがて“光を忘れた”――。
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