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第4話 光も届かぬところで
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フィアナはもう、双子に触れることすら叶わなくなっていた。
日に日に「聖女エルノア」の名が王宮の中に響きわたり、誰もが彼女を称えるようになっていった。
ある日、王宮の書庫へ向かっていたフィアナの耳に、双子の笑い声が届いた。
せめて元気な姿だけでもと見渡すと、すぐそばの王族専用の庭──だが、外からは見えぬ構造の中に、彼らの姿はあった。
そして、彼らの前の椅子にゆったりと座り、ぬいぐるみを動かして見せていたのは――聖女エルノアだった。
「ほら、ほら、うさちゃん♪」
「わあ、ほんとに動いてるみたい!」
「すごいすごい!」
笑い声。はしゃぐ姿。
その、動かしているぬいぐるみは、かつてフィアナが縫い上げた、双子への贈り物であった。
緑の精霊――ウサギに似た聖獣を模したそれを、双子のために色違いを一つずつ夜なべして作ったものだった。
あまりに気に入り放さないから、もう一つ作らなくてはと忙しい間をぬって作っていたほどのもの。
それを手に持ちながら、双子の言葉はすでにフィアナの心から離れたものになっていた。
フィアナの心が、音もなく沈んでいく。
そのとき、双子の一人が無邪気にこう言った。
「ねえ、エルノアさまが母上だったらよかったのに!」
「うん、優しいし、かわいいし、父上も、エルノアさまのほうが“輝いてる”って言ってたよ!」
もう一人も無邪気にうなずく。
そして、ふたりの目はまっすぐに、ぬいぐるみを操るエルノアを見つめていた。
そこに、かつて「母上」と呼ばれた人物へのまなざしは、ひとひらも存在しなかった。
聖女エルノアは、フィアナの視線に気づいていた。
気づいて――あえて、母の慈愛に満ちたように見える微笑みを、双子に向けた。
「あら、あなたたちは私の子供だったかしら? うふふ……でもいいのよ。愛しい子たち」
その瞬間、フィアナの視界が滲んだ。
立っていられず、膝が崩れる。
息を吸うだけで、胸が軋む。
――なぜ、こんなにも痛いのだろう。
けれど、確かに胸の奥で“何かが壊れる音”がした。
静かに、けれど決定的に。
それは、かつて彼女が“王妃”と呼ばれていた場所の崩落だった。
◇
「フィアナ様!」
駆け寄ってきたのはエマだった。
背後では、リゼが怒りを噛み殺すように拳を握りしめている。
「あの女……わざとです。フィアナ様が見ているのを知っていて!」
「わかっています。でも……今は」
震える声で言うフィアナ。
胸元の翡翠が、弱々しく光った。
「まだ……私は……」
そう呟く彼女の声は、かすかでも確かな意志を宿していた。
けれど、光の届く場所は、日に日に減っていった。
◇
離宮に戻ってから、日々は静かに削られていった。
食事は一皿、また一皿と減り、
井戸の水はいつしか濁り、油膜を帯び始める。
本宮から持ち出した書物や衣、宝飾は「王家の管理品」として回収された。
残されたのは、祈りと記録のためのわずかな紙束だけ。
エマとリゼは、限られた範囲で物資を調達しようと奔走した。
しかしその努力も、すぐに見張りに奪われていく。
まるでこの離宮そのものが、静かに“閉じていく”ようだった。
「フィアナ様、どうかセラフィムに知らせましょう」
リゼの声は、抑えた怒りに震えていた。
「このままでは……」
「……ありがとう。でも、それはまだ。」
フィアナは首を振る。
――そのささやきが、誰かの耳に届いたのは、ほんの数日後のことだった。
◇
「帰国命令、ですって……?」
エマの手から書状が滑り落ちる。
その一文は、あまりにも冷たく、そして決定的だった。
『王妃付き侍女 二名、帰国の途に就け。王命。』
「神託によれば、聖女エルノアは異なる魔力に晒されると力が鈍るそうだ」
――それが理由だった。
名ばかりの温情。実質の追放。
そして、途中で“消される”予定の命令。
フィアナは、深く息を吐き、二人の手を握った。
「……ごめんなさい。こんなことにしてしまって。」
「謝らないでください!」
エマが涙を拭い、翡翠のペンダントを見つめる。
「これは……?」
フィアナは静かに頷いた。
「セラフィム王家の印章が刻まれています。これを持っていきなさい。
国境ではこれが通行の証になるはず。」
「フィアナ様……」
「大丈夫。私はここに残る。あなたたちは、どうか生きて。
いつかきっと、この国の“光”が戻る日が来るから。」
二人の侍女は深く頭を下げた。
涙を堪えながら、主の手を握りしめる。
「必ず。命に代えても。」
その夜、離宮を包む風はどこか冷たく、
明け方には、見送りの言葉も許されぬまま――
二人を乗せた馬車が、王都の外へと消えていった。
◇
城を出て数日、王都を離れた街道で、黒い靄が道を塞いだ。
「……やっぱり来たわね。フィアナ様の言っていた“闇”」
リゼが一歩前に出て、エマを背に庇う。
「……闇は、光の匂いを追う…。強い光を放てば、すぐに見つかる。
だから――打ち合わせ通りよ。エマ、あなたの光を少しだけ貸して。
二人分の光を重ねて、一度に放つの。
光が同時に途切れれば、きっと“私たちが消えた”と誤魔化せる。
その隙に……走って。国境まで。」
「だめよ、リゼ! 二人で一緒に――」
「誰かが知らせなきゃ、意味がない。お願い、これは、あなたにしかできないの」
それが最後の言葉だった。
リゼの光が、二人分の魔力を一気に放つ。爆ぜるような光の波に、追手の姿がかき消えた。
フィアナのため、そして妹のように思うエマのためにその命を、捧げた。
◇
エマは、血の味を感じながら草原を走った。
何度も倒れ、叫びたくなる痛みに耐え、それでも――
ようやく国境へ辿り着いたその夜。
「おい、そこの女! ここはセラフィムの――……!」
剣を構えた男が目を見開いた。
エマが傷だらけの手に持ち掲げたのは、ペンダント。
翡翠の石に、王家の紋章。
「まさか……!」
「その声…ルーク……なの……?」
「何?……エマ!?」
再会は一瞬だった。ルークは国境警備に就いていた。エマの幼なじみ。そして、リゼの兄。
「お前、どうして?フィアナ様のお側にいるはずだろう?それにその姿、いや、先に医師に…おい、どうした!?」
満身創痍なその姿では出ないであろうほどの力で、エマがルークの腕をぎちりと掴む。
ボロボロ涙を溢しているその瞳は、切迫していて。
「私のことはいいの……話を聞いて。お願い、フィアナ様が、危ないの」
エマから漂うただ事のなさに、ルークはすぐに「セラフィム国の兵士」としての顔を取り戻す。
「緊急性を理解した。ここで話した事はすぐに王都へと伝令を飛ばす。必要な事は今、全て話せ。」
エマはうなずき、震える声で語り出した。今、起こっていることの全てを…。
日に日に「聖女エルノア」の名が王宮の中に響きわたり、誰もが彼女を称えるようになっていった。
ある日、王宮の書庫へ向かっていたフィアナの耳に、双子の笑い声が届いた。
せめて元気な姿だけでもと見渡すと、すぐそばの王族専用の庭──だが、外からは見えぬ構造の中に、彼らの姿はあった。
そして、彼らの前の椅子にゆったりと座り、ぬいぐるみを動かして見せていたのは――聖女エルノアだった。
「ほら、ほら、うさちゃん♪」
「わあ、ほんとに動いてるみたい!」
「すごいすごい!」
笑い声。はしゃぐ姿。
その、動かしているぬいぐるみは、かつてフィアナが縫い上げた、双子への贈り物であった。
緑の精霊――ウサギに似た聖獣を模したそれを、双子のために色違いを一つずつ夜なべして作ったものだった。
あまりに気に入り放さないから、もう一つ作らなくてはと忙しい間をぬって作っていたほどのもの。
それを手に持ちながら、双子の言葉はすでにフィアナの心から離れたものになっていた。
フィアナの心が、音もなく沈んでいく。
そのとき、双子の一人が無邪気にこう言った。
「ねえ、エルノアさまが母上だったらよかったのに!」
「うん、優しいし、かわいいし、父上も、エルノアさまのほうが“輝いてる”って言ってたよ!」
もう一人も無邪気にうなずく。
そして、ふたりの目はまっすぐに、ぬいぐるみを操るエルノアを見つめていた。
そこに、かつて「母上」と呼ばれた人物へのまなざしは、ひとひらも存在しなかった。
聖女エルノアは、フィアナの視線に気づいていた。
気づいて――あえて、母の慈愛に満ちたように見える微笑みを、双子に向けた。
「あら、あなたたちは私の子供だったかしら? うふふ……でもいいのよ。愛しい子たち」
その瞬間、フィアナの視界が滲んだ。
立っていられず、膝が崩れる。
息を吸うだけで、胸が軋む。
――なぜ、こんなにも痛いのだろう。
けれど、確かに胸の奥で“何かが壊れる音”がした。
静かに、けれど決定的に。
それは、かつて彼女が“王妃”と呼ばれていた場所の崩落だった。
◇
「フィアナ様!」
駆け寄ってきたのはエマだった。
背後では、リゼが怒りを噛み殺すように拳を握りしめている。
「あの女……わざとです。フィアナ様が見ているのを知っていて!」
「わかっています。でも……今は」
震える声で言うフィアナ。
胸元の翡翠が、弱々しく光った。
「まだ……私は……」
そう呟く彼女の声は、かすかでも確かな意志を宿していた。
けれど、光の届く場所は、日に日に減っていった。
◇
離宮に戻ってから、日々は静かに削られていった。
食事は一皿、また一皿と減り、
井戸の水はいつしか濁り、油膜を帯び始める。
本宮から持ち出した書物や衣、宝飾は「王家の管理品」として回収された。
残されたのは、祈りと記録のためのわずかな紙束だけ。
エマとリゼは、限られた範囲で物資を調達しようと奔走した。
しかしその努力も、すぐに見張りに奪われていく。
まるでこの離宮そのものが、静かに“閉じていく”ようだった。
「フィアナ様、どうかセラフィムに知らせましょう」
リゼの声は、抑えた怒りに震えていた。
「このままでは……」
「……ありがとう。でも、それはまだ。」
フィアナは首を振る。
――そのささやきが、誰かの耳に届いたのは、ほんの数日後のことだった。
◇
「帰国命令、ですって……?」
エマの手から書状が滑り落ちる。
その一文は、あまりにも冷たく、そして決定的だった。
『王妃付き侍女 二名、帰国の途に就け。王命。』
「神託によれば、聖女エルノアは異なる魔力に晒されると力が鈍るそうだ」
――それが理由だった。
名ばかりの温情。実質の追放。
そして、途中で“消される”予定の命令。
フィアナは、深く息を吐き、二人の手を握った。
「……ごめんなさい。こんなことにしてしまって。」
「謝らないでください!」
エマが涙を拭い、翡翠のペンダントを見つめる。
「これは……?」
フィアナは静かに頷いた。
「セラフィム王家の印章が刻まれています。これを持っていきなさい。
国境ではこれが通行の証になるはず。」
「フィアナ様……」
「大丈夫。私はここに残る。あなたたちは、どうか生きて。
いつかきっと、この国の“光”が戻る日が来るから。」
二人の侍女は深く頭を下げた。
涙を堪えながら、主の手を握りしめる。
「必ず。命に代えても。」
その夜、離宮を包む風はどこか冷たく、
明け方には、見送りの言葉も許されぬまま――
二人を乗せた馬車が、王都の外へと消えていった。
◇
城を出て数日、王都を離れた街道で、黒い靄が道を塞いだ。
「……やっぱり来たわね。フィアナ様の言っていた“闇”」
リゼが一歩前に出て、エマを背に庇う。
「……闇は、光の匂いを追う…。強い光を放てば、すぐに見つかる。
だから――打ち合わせ通りよ。エマ、あなたの光を少しだけ貸して。
二人分の光を重ねて、一度に放つの。
光が同時に途切れれば、きっと“私たちが消えた”と誤魔化せる。
その隙に……走って。国境まで。」
「だめよ、リゼ! 二人で一緒に――」
「誰かが知らせなきゃ、意味がない。お願い、これは、あなたにしかできないの」
それが最後の言葉だった。
リゼの光が、二人分の魔力を一気に放つ。爆ぜるような光の波に、追手の姿がかき消えた。
フィアナのため、そして妹のように思うエマのためにその命を、捧げた。
◇
エマは、血の味を感じながら草原を走った。
何度も倒れ、叫びたくなる痛みに耐え、それでも――
ようやく国境へ辿り着いたその夜。
「おい、そこの女! ここはセラフィムの――……!」
剣を構えた男が目を見開いた。
エマが傷だらけの手に持ち掲げたのは、ペンダント。
翡翠の石に、王家の紋章。
「まさか……!」
「その声…ルーク……なの……?」
「何?……エマ!?」
再会は一瞬だった。ルークは国境警備に就いていた。エマの幼なじみ。そして、リゼの兄。
「お前、どうして?フィアナ様のお側にいるはずだろう?それにその姿、いや、先に医師に…おい、どうした!?」
満身創痍なその姿では出ないであろうほどの力で、エマがルークの腕をぎちりと掴む。
ボロボロ涙を溢しているその瞳は、切迫していて。
「私のことはいいの……話を聞いて。お願い、フィアナ様が、危ないの」
エマから漂うただ事のなさに、ルークはすぐに「セラフィム国の兵士」としての顔を取り戻す。
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