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(番外編⑥最終話)君に繋ぐ物語
しおりを挟む「……よかった……よかったぁ……!」
「母上、嫌いじゃないって……ほんとに……!」
手紙を読み終えた双子の目から、大粒の涙がこぼれる。
顔を見合わせ、ぐしゃぐしゃになりながら笑い合う。
「『たからもの』だって!」
声をそろえてそう言うと、ふたりはふふっと、嬉しそうに笑った。
傍らにいたリュシアンは、静かにその頭を撫でる。
まるで抱きしめるように、優しく――。
「そうだ、父上!」
リュミエールが、瞳を潤ませたまま顔を上げた。
「母上がね、『私たちの名前の意味を、父上に聞きなさい』って!」
「うん、聞きたい! 父上!」
アレクシスも、ぬいぐるみーフェンをぎゅっと抱きしめながら、目を輝かせて言う。
リュシアンは一瞬目を伏せ、ゆっくりと頷いた。
「……そうか。まだ、君たちには話していなかったな。遅くなってごめんね」
彼は懐かしむように、静かに語り出す。
「君たちの名前はね、僕とフィアナで決めたんだ。
まだ、君たちが生まれる前――教会で祈っていたときに、不思議と浮かんできた名前だった」
「それをフィアナに話したら、彼女は微笑んでくれてね。
『素晴らしいわ!』って、大賛成してくれたんだよ」
「リュミエールは、“光”。
アレクシスは、“守る者”。
――つまり、君たちふたりで、“光を守るもの”。」
その言葉に、ふたりはゆっくりと息を呑んだ。
「きっと今も、フィアナの想いは君たちと共にある。
この世界を、光に満ちた場所にしてほしい――きっと、そう願っているよ」
リュシアンの声が、かすかに震える。
「僕はこれから、罪を背負いながら、全国を巡ってくるつもりだ。
たくさんの人に、迷惑をかけてしまったから。
せめて、その想いを伝えたい」
「でも……絶対に帰ってくる。心配しないで」
リュシアンはそっとふたりの肩に手を置き、まっすぐに目を見つめた。
「光を守る、これからの君たちのためにも――」
「だから……」
「どうか、この世界の“光”を……守ってくれ」
ふたりは静かに、自分の胸に手を当てた。
「私の名前が……光」
「僕の名前が……守るもの、か」
リュミエールとアレクシスが、そっと目を合わせる。
次の瞬間、ふたりはにっこりと笑い合った。
「父上、ありがとう」
「素敵な名前を、ありがとう」
その言葉に、リュシアンの胸がぎゅっと締めつけられる。
こらえきれず、涙がひとすじ、頬を伝う。
(……フィアナ……)
(フィアナ……)
(僕たちの子供たちは、こんなにも……こんなにも素敵な子供たちだよ)
(君も、きっと喜んでくれるよね……)
そんなリュシアンの姿に、ふたりがくすくすと笑った。
「父上は、泣き虫だなぁ」
「アレクも泣いてるくせに」
「リュミもじゃないか」
「ふふっ」
「ふふふっ」
三人は肩を寄せ合い、しばらくの間、静かに泣いた。
それは悲しみではない、
あふれる愛に満ちた、あたたかな涙だった。
やがて、丁寧に、そっと手紙をたたんで立ち上がる。
3人で少しずつ整えた部屋は、
かつての沈黙から解き放たれたように、
どこかやさしい光を帯びていた。
リュシアンが、最後にもう一度だけ部屋を見渡す。
「……フィアナ、行ってくるよ」
リュミエールも、ぎゅっと“フェン”を抱きしめながら――
「母上……私、頑張ります」
アレクシスも、涙を拭って続けた。
「母上、僕も……僕も、きっと守るよ」
風が、そっとカーテンを揺らす。
柔らかな音を立てて、静かに、優しく――
まるで、誰かの声が返ってくるように。
「……行ってらっしゃい」
これは、君たちに繋ぐ物語。
未来へと、光を手渡す、はじまりの一歩。
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みんなの感想(15件)
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2つの物語が交錯するなんて、何て素敵!楽しみです。
ありがとうございます💕
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応援、ありがとうございます!
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お読みいただき、ありがとうございます!なんと、泣いていただけたと…嬉しいです。
とても思い入れのある作品なので、本当にありがとうございます。
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