泣いて、笑って、恋した手のひら小話

猫戸針子

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それでも、君を好きでいる

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気まぐれに呼び出されるだけなのは分かっていても、抗えない。行き交う人の中に似ている姿を見掛けると目で追ってしまう。

「髪少し伸ばした?」

後ろから声がした。ああ、君だ。待ち焦がれたこの声が直接聞きたくて僕は…。
手を後ろに組み、いたずらっぽい目で僕の顔を覗き込む。クスリと微笑む彼女が僕の髪に手を伸した。

「柔らかい。この髪好き」
「髪だけは好きでいてくれるんだね」

たまらず彼女の手を掴む僕にふふっと笑いかける。

「人混みの中ですっごく私を探してたね。楽しくてしばらく観察しちゃった」

僕の気持ちを弄ぶ残酷な彼女の手を強く頬に押し付けた。

「探して何が悪いの?どんなに会いたかったか。それでも君は僕のことなんて…」

彼女の目から僕への愛なんて消えてしまった。

「大好きだよ?でも雨も降ってきたし、用事あるからもう行くね」
「待ってよ!せめて次いつ会えるかだけでも…」

彼女は微笑んだまま僕の口に唇を近付け、ふっとそらす。

「教えてあげない」

耳元で囁かれ絶望に叩き付けられた僕から楽しげに離れると、彼女は手を振りながら雑踏に消えた。

「………それでも僕は…君を好きでいるのをやめられない…」
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