神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

文字の大きさ
8 / 58

酒場

しおりを挟む

 夕方に坑道の採掘クエストを終え、採掘した石を自分の家に置きギルドで解散したあとに商業ギルドに顔をだす。

「こんちわー」
「あら、鑑定師さんいらっしゃい、よろず鑑定師組合からお手紙を預かってますよ」

 僕が訊く前に顔なじみのお姉さんの方から教えてくれる。

「ありがとう」

 お姉さんから手紙を渡され中身を確認すると一応面接があるので翌朝商業ギルドに来るように書いてある。

「よし!ありがとうお姉さん」
「アリアよ」
「ありがとうアリアさん!」

 これで僕の2つ目の計画も予定通りに進みそうである。
 僕は喜んでギルドを出ると酒場に向かった。今日は良い日なので誰かと乾杯したい気分だ。

 王都の酒場は中央広場に面した所にあり、夜になると大勢が集まって飲んでいる。ここは昼とは違う王都のもう一つの顔なのだ。 

 酒場に入ると中は大賑わいで、給仕の女の子が忙しく左右に立ち働きカウンターも満杯だった。

 諦めて帰ろうとすると、僕の精霊センサーが不穏な動きをキャッチする。チンピラ風の男達が酒場の一角で揉めている気配がした。

 振り向くと、丁度荒事が始まる寸前でチンピラがまくし立てている所だ。

「鑑定」

 チンピラは地元のマフィアで、旅人風の男は密偵と判る。

「おい!お前!ここはエガール一家の仕切りだと知らんのか?」
「おうそうだ!兄貴に土下座しろ!」

 チンピラ2名が旅人風の男に食って掛かる。それでも周囲の酔い客達は彼らを無視して呑んでいた。日常的に良くある光景なのだろうか。

「エガールだか、テカーるだか知らないけど俺には無関係だ」

 旅人風の男が言うと、チンピラはテーブルの上のジョッキを持ち上げて男の頭から酒をぶっかける。

「へぇ、無関係かい?へへへ」
「……」

 明らかにチンピラが喧嘩を吹っ掛けていたが男は微動だにせずに酒が流れ落ちるのに任せる。
 深く被った帽子と旅用の外套が効果的に酒を流し、本人は殆ど濡れてすらいないようだ。

 ビシッビシ!

「はひぃ……」
「きゅう……」

 コロコロ……

 何かが弾ける音がして、突然チンピラ2名が変な声をあげ股間を抑えている。

「え?」
「なに……」

 周囲の客達も何事が起ったのかと振り返り、前屈みで股間を抑えているポーズのチンピラを見る。

 僕には精霊の探知能力で分かっていた。旅人が見えない速度で酒の肴の木の実を指で弾き、指弾でチンピラの股間を狙撃したのだ。

「あはは……」
「う、ぷぷ……」

 その滑稽な姿に周りの男達が笑うがチンピラがぎろりと睨み返すと黙った。周囲にはおかしな沈黙が支配した。

「お、おまえ!何かしやがったな!」

 チンピラが股間を抑えながら怒鳴る。その姿がさらに滑稽でおかしく僕は笑いを抑えられなかった。

「くくく……あははは」

「おい!てめえ!笑うんじゃねー」

 静まっていた所に僕が爆笑するとチンピラの怒りの矛先が僕に向かう。

「ごめんねあははは」
「ははは……」
「ふふ」

 僕がお構いなしに笑って居ると周囲の客達もつられて笑う。

「てめぇ!」

 そのとき、突然目の前から消えた旅人風の男を見てチンピラが絶叫する。旅人風の密偵は異常な速度で席を立ち酒場から出て行くところだった。

 チンピラや周りの酔い客達には密偵の男の動きに目が付いて行かず、突然消えたように見えただろう。

 僕は酒場の入口付近に来た密偵の男とすれ違う瞬間に彼の手を握る。

 ガツ!

 すれ違いざまに僕のポケットに何かを入れようとしたのが察知出来たのだ。

「変なものを入れないでくれ」
「へぇ……」

 そう言うと男は僕の手を振りほどき紙切れを落として去って行った。 

 僕は少し考えてからその紙切れを拾い上げてみる。

「今夜24時、王宮裏口に来い」

 そのストレートな文言で僕は厄介ごとに巻き込まれた事を知った。

「ギルドをウロチョロして少し目立ち過ぎたか……」

 それでも呼び出される理由がよく判らず考え込んでいると、目の前にチンピラがやってきていた。

「おいお前!奴がどこに逃げたか見ただろう!?」

 酒くさい息で僕に怒鳴る。

「ああ、向こうに行ったよ」

 密偵の男が去った方と逆を指さして教える。

「よし、いくぞ!」

 チンピラ2人は股間を抑えつつも走り去った。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...