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第五話 案内
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「あの、ここは何の部屋ですか?」
家の中を案内中、一つの大きな部屋の前を素通りするレオナルド。今まで大きな部屋から小さな部屋、パントリーにいたるまで説明していたのに明らかに不自然すぎてシアは思わず尋ねた。
「この部屋は立ち入り禁止だ」
「なぜです?」
「……ここは前妻の部屋だ」
「あぁ、なるほど。失礼しました。ここには立ち入りません」
(案外、先妻さんのことは愛していたのかしら)
部屋に入るなというくらいだからきっと先妻の思い出などが詰まっているのだろうと想像する。
確かに、そんなところに後妻がズケズケと入るわけにはいかないとシアは納得した。
「他にもそう言った入ってはいけない部屋や使ってはいけないものとかありますか?」
「いや、この部屋にさえ入らなければよい」
「そうですか。承知しました」
無表情すぎて感情が読めないレオナルド。
何を考えているのかさっぱりわからなくて、とにかく早く彼の案内が終わればいいなと思いながら彼のあとについて行き様々な部屋の説明を聞く。
「……これで以上だ。何か不明なところは?」
「ほぼ不明点しかありませんけど、わからなければその都度聞きますので問題ないです」
一瞬レオナルドにムッとされるが、こんな広い家の中を一回回っただけで覚えろという方が無理であると心の中で反論する。
正直、淡々とした説明されたのもあってかレオナルドの説明も半分も覚えていない自信があった。
「でも入ってはいけない部屋だけは覚えてますので、ご心配なく」
「そうか。それならいい。さて、キミの部屋だが、ここを使ってくれ」
シアにあてがわれた部屋はとても広く、大きかった。
しかし、レオナルドの私室の真逆のところに位置していて、どうやら客間として使われていた部屋のようである。
「随分とレオナルドさんの部屋と離れていますね」
「何か問題が?」
「いえ。仮にも夫婦ですから、近い方がいいのかと思っただけです」
「あくまでキミには娘の親として頑張ってもらいたい。ただそれだけだ。今更キミと夫婦でどうこうというのは考えていない」
「はぁ、なるほど」
(ということはつまり、もう世継ぎなどは諦めているということか。それとも隠し子や養子を迎える予定があるとか)
母は嘆くかもしれないが、既に娘が三人もいるなら今更新しく子を産む必要がないということだろう。シア自身も別になんとしても子が産みたいというわけではなかったので、レオナルドはそういう考えなのかと素直に受け止めた。
(レオナルドさんは本当にただ娘達の母親役が欲しいって感じのようね)
公爵が忙しいのは承知している。
だからこそ三人の娘の世話というのは大変だろう。異性ではわからないこともあるだろうし、普段世話をしてなかったのならなおさら難易度が上がっていたはずだ。
「片付けが終わったら昼食にする。そこで娘達を紹介するのでそのつもりでいてくれ。その後は早速夕食作りを頼みたい。普段はみんな別々で食事を取るのだが、今日は娘達全員に集まるよう言っておくので、全員分の用意をお願いする」
「わかりました。なるべく早く片付けをします」
「あぁ、あと何かあれば娘達ではなく私に言うように。余計なことを娘に言うんじゃないぞ」
「余計なこととは?」
釘を刺されて、あえてとぼけて答えてみせる。
なんとなくレオナルドの真意はわかっていたが、シアは素直に頷きたくはなかった。
「……とにかく、キミは必要最低限やってくれたらいい」
「わかりました。ちなみに、レオナルドさんはご存知ないかもしれませんが、私の名はキミじゃないです」
「……失礼した。シア。では後ほど」
「はい。では、また後ほど」
レオナルドは踵を返すとそのまま早歩きでスタスタと去って行く。ここまで徹底して興味を持たれないというのもある意味清々しかった。
「いわゆる契約結婚みたいなものだと思えばいいのかしら。せめて報連相してほしいけど、ここまで興味関心ないなら、ある程度好き放題しても問題なさそうね」
愛だの恋だのという年頃ではないのはシアだって同じだ。今更この年でそんな夢想をしているわけではなかったので逆にこの対応でホッとする。
「さて、あまりゆっくりもしてられないから片付けますか」
手早く片付けると言った手前、あまり待たせるわけにはいかないだろう。それに、アンナ以外の娘がどんな子かも気になっていた。
「アンナみたいにいい子だといいな」
そんなことを考えながら、シアは少ない荷物を片付け始めるのだった。
家の中を案内中、一つの大きな部屋の前を素通りするレオナルド。今まで大きな部屋から小さな部屋、パントリーにいたるまで説明していたのに明らかに不自然すぎてシアは思わず尋ねた。
「この部屋は立ち入り禁止だ」
「なぜです?」
「……ここは前妻の部屋だ」
「あぁ、なるほど。失礼しました。ここには立ち入りません」
(案外、先妻さんのことは愛していたのかしら)
部屋に入るなというくらいだからきっと先妻の思い出などが詰まっているのだろうと想像する。
確かに、そんなところに後妻がズケズケと入るわけにはいかないとシアは納得した。
「他にもそう言った入ってはいけない部屋や使ってはいけないものとかありますか?」
「いや、この部屋にさえ入らなければよい」
「そうですか。承知しました」
無表情すぎて感情が読めないレオナルド。
何を考えているのかさっぱりわからなくて、とにかく早く彼の案内が終わればいいなと思いながら彼のあとについて行き様々な部屋の説明を聞く。
「……これで以上だ。何か不明なところは?」
「ほぼ不明点しかありませんけど、わからなければその都度聞きますので問題ないです」
一瞬レオナルドにムッとされるが、こんな広い家の中を一回回っただけで覚えろという方が無理であると心の中で反論する。
正直、淡々とした説明されたのもあってかレオナルドの説明も半分も覚えていない自信があった。
「でも入ってはいけない部屋だけは覚えてますので、ご心配なく」
「そうか。それならいい。さて、キミの部屋だが、ここを使ってくれ」
シアにあてがわれた部屋はとても広く、大きかった。
しかし、レオナルドの私室の真逆のところに位置していて、どうやら客間として使われていた部屋のようである。
「随分とレオナルドさんの部屋と離れていますね」
「何か問題が?」
「いえ。仮にも夫婦ですから、近い方がいいのかと思っただけです」
「あくまでキミには娘の親として頑張ってもらいたい。ただそれだけだ。今更キミと夫婦でどうこうというのは考えていない」
「はぁ、なるほど」
(ということはつまり、もう世継ぎなどは諦めているということか。それとも隠し子や養子を迎える予定があるとか)
母は嘆くかもしれないが、既に娘が三人もいるなら今更新しく子を産む必要がないということだろう。シア自身も別になんとしても子が産みたいというわけではなかったので、レオナルドはそういう考えなのかと素直に受け止めた。
(レオナルドさんは本当にただ娘達の母親役が欲しいって感じのようね)
公爵が忙しいのは承知している。
だからこそ三人の娘の世話というのは大変だろう。異性ではわからないこともあるだろうし、普段世話をしてなかったのならなおさら難易度が上がっていたはずだ。
「片付けが終わったら昼食にする。そこで娘達を紹介するのでそのつもりでいてくれ。その後は早速夕食作りを頼みたい。普段はみんな別々で食事を取るのだが、今日は娘達全員に集まるよう言っておくので、全員分の用意をお願いする」
「わかりました。なるべく早く片付けをします」
「あぁ、あと何かあれば娘達ではなく私に言うように。余計なことを娘に言うんじゃないぞ」
「余計なこととは?」
釘を刺されて、あえてとぼけて答えてみせる。
なんとなくレオナルドの真意はわかっていたが、シアは素直に頷きたくはなかった。
「……とにかく、キミは必要最低限やってくれたらいい」
「わかりました。ちなみに、レオナルドさんはご存知ないかもしれませんが、私の名はキミじゃないです」
「……失礼した。シア。では後ほど」
「はい。では、また後ほど」
レオナルドは踵を返すとそのまま早歩きでスタスタと去って行く。ここまで徹底して興味を持たれないというのもある意味清々しかった。
「いわゆる契約結婚みたいなものだと思えばいいのかしら。せめて報連相してほしいけど、ここまで興味関心ないなら、ある程度好き放題しても問題なさそうね」
愛だの恋だのという年頃ではないのはシアだって同じだ。今更この年でそんな夢想をしているわけではなかったので逆にこの対応でホッとする。
「さて、あまりゆっくりもしてられないから片付けますか」
手早く片付けると言った手前、あまり待たせるわけにはいかないだろう。それに、アンナ以外の娘がどんな子かも気になっていた。
「アンナみたいにいい子だといいな」
そんなことを考えながら、シアは少ない荷物を片付け始めるのだった。
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