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第20話 選択の前夜、静かな決裂
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第20話 選択の前夜、静かな決裂
王宮の夜は、奇妙なほど静かだった。
晩餐会も終わり、人の気配が引いた回廊を、ルビー・エルヴェールは一人歩いていた。
足音が、やけに大きく響く。
(……明日、ですわね)
正式な評議会。
そこで、王太子妃候補の件が議題として上がる。
答えを曖昧にしていられるのは、今夜までだった。
私室に戻ると、机の上に一通の封書が置かれていた。
封印は、すでに切られている。
「……?」
中を確認した瞬間、ルビーの表情がわずかに変わった。
(これは……)
書かれていたのは、簡潔な一文。
「明日の評議会にて、あなたの意思に関わらず“決議”が進められる可能性あり」
差出人は、名のない協力者。
だが、内容は――現実的だった。
(つまり、“選ばせる”のではなく、“決めてしまう”と)
王宮らしいやり方だ。
その直後、扉がノックされた。
「……誰ですの?」 「私だ」
レオニードの声。
「入ってください」
彼は、いつもより硬い表情で入ってきた。
「……もう、聞いているかもしれないが」
切り出す前から、答えは分かっている様子だった。
「明日の評議会、
一部の貴族が“既定路線”として話を進めるつもりだ」
「ええ。今、知りました」
沈黙。
それは、言い訳も、慰めも不要な沈黙だった。
「……すまない」
レオニードが、低く言った。
「私が、完全に抑えきれなかった」 「いいえ」
ルビーは、首を振る。
「これは、あなた一人の問題ではありません」
彼女は、ゆっくりと言葉を続けた。
「王宮という場所が、
“選ばれる側の意思”を尊重しない構造をしているだけです」
「……それでも」
レオニードは、真剣な眼差しで彼女を見る。
「君が、拒むなら――私は止める」 「殿下」
その言葉に、ルビーは一歩近づいた。
「もし、今ここで私が“拒否”すれば」
静かな声。
「あなたは、王宮と真正面から対立することになります」 「構わない」
「いいえ」
彼女は、はっきりと言った。
「それは、“私の選択”ではありませんわ」
レオニードは、言葉を失った。
「私は」
ルビーは、まっすぐに彼を見つめる。
「誰かに守られて、
誰かの覚悟に乗っかって立つつもりはありません」
「……では、どうする?」
その問いに、ルビーは少しだけ微笑んだ。
「明日の評議会で、
“私自身の言葉”で答えます」
それは、肯定でも否定でもない。
だが、最も危険で、最も誠実な選択だった。
レオニードは、しばらく黙ってから、深く息を吐いた。
「……分かった」 「止めませんか?」 「止められないな」
彼は、苦笑する。
「君がそう決めたなら」
彼が部屋を出た後。
ルビーは、窓辺に立ち、夜空を見上げた。
雲の切れ間から、星が瞬いている。
(選ぶのは、私)
何度も繰り返してきた言葉。
だが――明日は、それを証明する日だ。
王宮は、彼女を“決めた存在”にしようとしている。
ならば彼女は――
(“自分で決める存在”であり続けましょう)
ルビー・エルヴェールは、
静かに目を閉じた。
嵐の前の静けさ。
次の朝、
王宮は確実に揺れることになる。
それが、
彼女自身の選択によって――。
王宮の夜は、奇妙なほど静かだった。
晩餐会も終わり、人の気配が引いた回廊を、ルビー・エルヴェールは一人歩いていた。
足音が、やけに大きく響く。
(……明日、ですわね)
正式な評議会。
そこで、王太子妃候補の件が議題として上がる。
答えを曖昧にしていられるのは、今夜までだった。
私室に戻ると、机の上に一通の封書が置かれていた。
封印は、すでに切られている。
「……?」
中を確認した瞬間、ルビーの表情がわずかに変わった。
(これは……)
書かれていたのは、簡潔な一文。
「明日の評議会にて、あなたの意思に関わらず“決議”が進められる可能性あり」
差出人は、名のない協力者。
だが、内容は――現実的だった。
(つまり、“選ばせる”のではなく、“決めてしまう”と)
王宮らしいやり方だ。
その直後、扉がノックされた。
「……誰ですの?」 「私だ」
レオニードの声。
「入ってください」
彼は、いつもより硬い表情で入ってきた。
「……もう、聞いているかもしれないが」
切り出す前から、答えは分かっている様子だった。
「明日の評議会、
一部の貴族が“既定路線”として話を進めるつもりだ」
「ええ。今、知りました」
沈黙。
それは、言い訳も、慰めも不要な沈黙だった。
「……すまない」
レオニードが、低く言った。
「私が、完全に抑えきれなかった」 「いいえ」
ルビーは、首を振る。
「これは、あなた一人の問題ではありません」
彼女は、ゆっくりと言葉を続けた。
「王宮という場所が、
“選ばれる側の意思”を尊重しない構造をしているだけです」
「……それでも」
レオニードは、真剣な眼差しで彼女を見る。
「君が、拒むなら――私は止める」 「殿下」
その言葉に、ルビーは一歩近づいた。
「もし、今ここで私が“拒否”すれば」
静かな声。
「あなたは、王宮と真正面から対立することになります」 「構わない」
「いいえ」
彼女は、はっきりと言った。
「それは、“私の選択”ではありませんわ」
レオニードは、言葉を失った。
「私は」
ルビーは、まっすぐに彼を見つめる。
「誰かに守られて、
誰かの覚悟に乗っかって立つつもりはありません」
「……では、どうする?」
その問いに、ルビーは少しだけ微笑んだ。
「明日の評議会で、
“私自身の言葉”で答えます」
それは、肯定でも否定でもない。
だが、最も危険で、最も誠実な選択だった。
レオニードは、しばらく黙ってから、深く息を吐いた。
「……分かった」 「止めませんか?」 「止められないな」
彼は、苦笑する。
「君がそう決めたなら」
彼が部屋を出た後。
ルビーは、窓辺に立ち、夜空を見上げた。
雲の切れ間から、星が瞬いている。
(選ぶのは、私)
何度も繰り返してきた言葉。
だが――明日は、それを証明する日だ。
王宮は、彼女を“決めた存在”にしようとしている。
ならば彼女は――
(“自分で決める存在”であり続けましょう)
ルビー・エルヴェールは、
静かに目を閉じた。
嵐の前の静けさ。
次の朝、
王宮は確実に揺れることになる。
それが、
彼女自身の選択によって――。
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