『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』

鷹 綾

文字の大きさ
27 / 40

第27話「婚約破棄の正式承認」

しおりを挟む


「……では、これより公に申し渡す」

 国王レオハルトの荘厳な声が、謁見の間に響いた。
 王族と貴族の代表が列席する中、重々しい空気が張り詰めている。

「第一王子アルヴィスと、リオネッタ・エルバーナ嬢の婚約は――これをもって、正式に解消とする」

 その瞬間、ざわっ……と場が揺れた。
 これまで“破棄された側”とされていたリオネッタが、正式に“王命により解放された”ことが意味するものは大きい。

「理由は、王太子による一方的な破棄、および不適切な言動の数々。それにより、リオネッタ嬢の名誉と将来を著しく損なう結果となった」

 隣国との外交関係を考慮した丁寧な表現ではあるが――
 事実上の“王太子の完全敗北”を示す宣言だった。

「……重ねて、リオネッタ・エルバーナ嬢に謝罪の意を表し、アイザック伯爵家との婚約を王家として正式に認め、祝福するものである」

 その一言に、場の空気が一変する。
 王命をもって、リオネッタは正式に“伯爵家の婚約者”として国に認められたのだ。

* * *

 謁見の儀を終え、王宮を出る馬車の中。

「おめでとうございます、お嬢様……いえ、“伯爵家のご婚約者様”!」

 ミーナが感極まって涙ぐみながら言った。

「ふふ……ありがとう。でもまだ、式も挨拶も何も決まっていませんわよ」

 リオネッタは窓の外を見ながら、ふっと小さく笑う。

「ただ、“王家のもの”ではなくなった――それだけで、十分よ」

 あの玉座の間に何度立たされたか数え切れない。
 窮屈で、見られて、試されることが“当然”だったあの頃。

 今はもう、それが全部――終わった。

* * *

 一方、玉座の間の控え室。

「婚約……認めただと……? 勝手に……!」

 謹慎中の身でありながら、アルヴィスは王命の文書を床に叩きつけた。

「俺から奪っておいて……なぜあんな女に、こんな栄光が……!」

 怒りとも悔しさともつかぬ叫びが、誰もいない部屋に響き渡る。

 だが、それに答える声は、もはや――王宮のどこにもなかった。


---

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

最低公爵との婚約破棄は、気ままな私の運命を変える最高の布石でした。~嫌がらせに屈しない私を、孤高の王子が見初めたようです~

紅葉山参
恋愛
わたくし、伯爵令嬢バージニア・フォン・アスターは、内心では冷めきっていました。私の婚約者であるユリシーズ公爵は、その地位こそ高貴ですが、中身は最低底辺。高慢ちきで女癖が悪く、私のことなど道具としか見ていないのですから。 「公爵様、わたくしとの婚約を破棄していただきたく存じます」 私の方から婚約破棄を申し出た時、公爵様はひどく動揺し、そして怒り狂いました。彼のプライドはズタズタになったのでしょう。しかし、ようやく自由になれる。私はそう安堵していました。 ところが、この最低な男は、私との婚約がなくなった腹いせに、想像を絶する陰湿な嫌がらせを仕掛けてきます。社交界での悪評、家への圧力、そして命の危険さえも。気ままに暮らしたいという私のささやかな望みは、一転して苦難の道へと変わりました。 絶望が目前に迫った時、私の前に現れたのが、第三王子スレイン殿下でした。彼は冷たい仮面の下に熱い正義を秘めた孤高の王子。公爵の不当な行いに真っ向から立ち向かい、私を庇ってくれるのです。 王子という光と、公爵という闇。 彼の庇護を受けるうち、わたくしは初めて知りました。本当の愛とは何かを。 最低な婚約者との決別は、愛を知らない私に、本物の運命の殿下(あなた)を引き寄せる最高の魔法だったのです。 これは、気高き伯爵令嬢が、最低の元婚約者の嫌がらせを乗り越え、孤高の王子と真実の愛を掴むまでの、波乱に満ちた物語です。

「誰もお前なんか愛さない」と笑われたけど、隣国の王が即プロポーズしてきました

ゆっこ
恋愛
「アンナ・リヴィエール、貴様との婚約は、今日をもって破棄する!」  王城の大広間に響いた声を、私は冷静に見つめていた。  誰よりも愛していた婚約者、レオンハルト王太子が、冷たい笑みを浮かべて私を断罪する。 「お前は地味で、つまらなくて、礼儀ばかりの女だ。華もない。……誰もお前なんか愛さないさ」  笑い声が響く。  取り巻きの令嬢たちが、まるで待っていたかのように口元を隠して嘲笑した。  胸が痛んだ。  けれど涙は出なかった。もう、心が乾いていたからだ。

婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ

鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。 平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」 婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。 彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。 二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。 ……はずなのに。 邸内で起きる不可解な襲撃。 操られた侍女が放つ言葉。 浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。 「白の娘よ。いずれ迎えに行く」 影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。 守るために剣を握る公爵。 守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。 契約から始まったはずの二人の関係は、 いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。 「君を奪わせはしない」 「わたくしも……あなたを守りたいのです」 これは―― 白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、 覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。 ---

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

婚約破棄?はい、どうぞお好きに!悪役令嬢は忙しいんです

ほーみ
恋愛
 王国アスティリア最大の劇場──もとい、王立学園の大講堂にて。  本日上演されるのは、わたくしリリアーナ・ヴァレンティアを断罪する、王太子殿下主催の茶番劇である。  壇上には、舞台の主役を気取った王太子アレクシス。その隣には、純白のドレスをひらつかせた侯爵令嬢エリーナ。  そして観客席には、好奇心で目を輝かせる学生たち。ざわめき、ひそひそ声、侮蔑の視線。  ふふ……完璧な舞台準備ね。 「リリアーナ・ヴァレンティア! そなたの悪行はすでに暴かれた!」  王太子の声が響く。

処理中です...