「婚約破棄された令嬢の異世界カフェ革命～甘い復讐と運命の恋～」

第25話: ミアの出産と新しい命

第25話: ミアの出産と新しい命

隣国パーティーから帰国して、数日後のことだった。

王都本店は変わらず大盛況。国際的な成功が新聞に載り、他国からの注文が殺到している。私は店で、ミアの出産祝い用の特別スイーツを準備していた。

「ベビーウェルカムケーキ」――優しいミルク味のスポンジに、フルーツを可愛く飾り、安産と赤ちゃんの健康を祈る魔法を最大限に込めたもの。

「おはよう、エレナお姉様！ 今日も店、忙しそうですね！」

ミアがメイド服で入ってきた。お腹が臨月で、歩くのも少しゆっくり。でも、獣人の耳は元気にぴこぴこ動いている。

「ミアちゃん、もう無理しないで。今日は休んでいいわよ」

「大丈夫です！ ミア、赤ちゃんに『ママはがんばってるよ』って見せたいんです！」

ガルが心配げにミアを支えて店に入ってきた。

「エレナさん、リオンさん。おはようございます。ミアがどうしても手伝いたいって……」

リオンが笑った。

「ミアらしいな。だが、無理は禁物だ」

午前の営業中、ミアが突然お腹を押さえた。

「……あっ……痛い……」

「ミアちゃん！？」

陣痛が始まった。

私は即座に店を一時閉め、魔法で安産用のキャンディーを作ってミアに食べさせた。

「これで痛みが少し和らぐわ。ガル、馬車を！」

リオンが冷静に指示を出し、伯爵の私設医者を呼んだ。

王都の一番良い産院へ急行。

ミアはベッドで、私の手を強く握った。

「エレナお姉様……怖いけど……がんばります……」

「ミアちゃん、強いわよ。私がそばにいるから」

リオンは外で待機し、ガルはミアのもう片方の手を握って励ます。

数時間の陣痛の後――。

産院に、元気な泣き声が響いた。

女の子だった。

茶色の耳と尻尾を持つ、可愛い獣人の赤ちゃん。

ミアが涙を流しながら、赤ちゃんを抱いた。

「エレナお姉様……見て……ミアの赤ちゃん……」

「可愛いわ、ミアちゃん。おめでとう」

ガルが号泣しながら、ミアと赤ちゃんを抱きしめた。

私はベビーウェルカムケーキを産院に持ち込み、みんなで祝った。

医者たちも私のケーキを食べて、驚いた。

「痛みが和らいだ……これは奇跡のスイーツだ」

赤ちゃんの名前は「リア」――エレナとミアから一文字ずつ取った名前。

店に戻った夜。

リオンが私を抱きしめた。

「ミアの赤ちゃん、可愛かったな。俺たちも……そろそろ、いいんじゃないか？」

「リオン……ええ、そうね」

私はリオンの胸に顔を埋めた。

最近、体調が少しおかしいと思っていた。

魔法で自分を診断してみると――。

「おめでとう、エレナ」

リオンの目が優しく輝いた。

私も、妊娠していた。

リオンの子を、宿している。

「リオン……私たちも、親になるのね」

「幸せだ、エレナ」

二人はキスを交わし、未来を誓った。

ミアの出産は、私たちみんなの喜びになった。

店では「出産祝いフェア」を開催。ベビー関連の可愛いスイーツを並べ、客たちも祝福ムード。

王都の新聞に、『魔法カフェの家族に新しい命』と載り、さらなる人気に。

ヴァレンティア家の残党の動きは、完全に止まったらしい。

もう、誰も私たちの幸せを脅かせない。

新しい命が、二つ。

ミアのリアと、私のお腹の子。

カフェは、家族の絆でさらに輝く。

甘い日常に、新しい章が加わった。