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21話 名ばかりの光
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21話 名ばかりの光
舞踏会の余韻が消えぬまま、王都では別の噂が広がり始めていた。
聖女リリアの活動が、以前ほどの熱狂を生まなくなっているという声だ。
規模は回復している。
炊き出しも、孤児院支援も、医療施療も継続している。
だがどこか、空気が違う。
「前は奇跡のように感じたけれど」
「今は、ちゃんと支えがあると分かってしまったからかしら」
市場の一角で交わされる会話は、悪意ではない。
ただ現実を知った後の感想だった。
光が奇跡だけではなく、契約と信用の上に成り立っていると知られたことで、その輝きは少しだけ輪郭を持った。
王宮では、リリアがアレクシスと対面していた。
「殿下、透明化の発表、立派でした」
彼女は穏やかに微笑む。
「支えがあることを、私も学びました」
その言葉は素直だった。
アレクシスは頷く。
「君の活動は、国に必要だ」
「でも、私だけではありません」
リリアは少し目を伏せる。
「支えてくださる方々がいてこそです」
その中に、名は出ない。
だがアレクシスの脳裏には、灰青のドレスが浮かんだ。
エルフィーナ。
動かないまま、土台を整えた存在。
王太子は気づき始めている。
光は眩しい。
だが光だけでは続かない。
土台を作る者の方が、長く残る。
その頃、ルヴァリエ公爵邸では静かな昼下がりが流れていた。
「神殿から感謝の書状が届いております」
家宰が報告する。
「透明化を歓迎し、今後の協調を望むとのこと」
「そう」
エルフィーナは紅茶を口にする。
「良い流れね」
「お嬢様のご判断があったからこそ」
「違うわ」
静かな否定。
「殿下が選んだの」
彼女は功績を自分に引き寄せない。
動いたのは王太子。
彼女は条件を示しただけ。
「社交界では、お嬢様の名がさらに上がっております」
「困るわ」
小さく笑う。
「私は何もしていないのに」
「何もしないことが評価されているのです」
マリアの声には誇らしさが混じる。
エルフィーナは窓の外を見る。
「評価は風よ」
「またその言葉ですね」
「風は吹くけれど、掴めない」
掴もうとしない。
働かないと決めたからこそ、名声も追わない。
夜、王宮の回廊でアレクシスは立ち止まった。
舞踏会でのダンス。
対等という言葉。
選ばれない強さ。
そして今、光の輪郭が変わっていく感覚。
「殿下」
レオンが後ろに立つ。
「聖女様の支持は安定しております」
「そうか」
「ですが、熱狂は落ち着きました」
アレクシスはゆっくり頷く。
「熱狂は長く続かない」
「はい」
「必要なのは持続だ」
彼は自分の言葉に驚く。
以前なら、理想と情熱を優先していた。
だが今は違う。
持続。
土台。
責任。
「彼女は、何もしていないのに」
ぽつりと漏らす。
「結果を変えました」
レオンが言う。
動かず、怒らず、選ばれず。
それでも盤面を変えた。
その強さは、王太子にとって未知のものだった。
一方、エルフィーナは夜の書斎で帳簿を閉じる。
市場は安定。
保証は正常。
神殿支援も透明化条件付きで継続。
「揺れは終わったわね」
小さく呟く。
「お嬢様は、本当に何も望まれないのですか」
マリアが尋ねる。
少しだけ考え、彼女は答える。
「望むのは、静かな時間だけ」
それだけ。
王妃の座でも、社交界の中心でもない。
自分のペースで、整った盤面を眺めること。
それが彼女の選択。
王都の夜は静かだ。
光は安定し、熱狂は落ち着き、評価は広がる。
名ばかりの光ではなく、土台を知った光へと変わりつつある。
そしてその変化の中心に、動かなかった一人の令嬢がいる。
だが彼女自身は、何も変わらない。
働かないと決めたまま、ただ静かにそこにいる。
舞踏会の余韻が消えぬまま、王都では別の噂が広がり始めていた。
聖女リリアの活動が、以前ほどの熱狂を生まなくなっているという声だ。
規模は回復している。
炊き出しも、孤児院支援も、医療施療も継続している。
だがどこか、空気が違う。
「前は奇跡のように感じたけれど」
「今は、ちゃんと支えがあると分かってしまったからかしら」
市場の一角で交わされる会話は、悪意ではない。
ただ現実を知った後の感想だった。
光が奇跡だけではなく、契約と信用の上に成り立っていると知られたことで、その輝きは少しだけ輪郭を持った。
王宮では、リリアがアレクシスと対面していた。
「殿下、透明化の発表、立派でした」
彼女は穏やかに微笑む。
「支えがあることを、私も学びました」
その言葉は素直だった。
アレクシスは頷く。
「君の活動は、国に必要だ」
「でも、私だけではありません」
リリアは少し目を伏せる。
「支えてくださる方々がいてこそです」
その中に、名は出ない。
だがアレクシスの脳裏には、灰青のドレスが浮かんだ。
エルフィーナ。
動かないまま、土台を整えた存在。
王太子は気づき始めている。
光は眩しい。
だが光だけでは続かない。
土台を作る者の方が、長く残る。
その頃、ルヴァリエ公爵邸では静かな昼下がりが流れていた。
「神殿から感謝の書状が届いております」
家宰が報告する。
「透明化を歓迎し、今後の協調を望むとのこと」
「そう」
エルフィーナは紅茶を口にする。
「良い流れね」
「お嬢様のご判断があったからこそ」
「違うわ」
静かな否定。
「殿下が選んだの」
彼女は功績を自分に引き寄せない。
動いたのは王太子。
彼女は条件を示しただけ。
「社交界では、お嬢様の名がさらに上がっております」
「困るわ」
小さく笑う。
「私は何もしていないのに」
「何もしないことが評価されているのです」
マリアの声には誇らしさが混じる。
エルフィーナは窓の外を見る。
「評価は風よ」
「またその言葉ですね」
「風は吹くけれど、掴めない」
掴もうとしない。
働かないと決めたからこそ、名声も追わない。
夜、王宮の回廊でアレクシスは立ち止まった。
舞踏会でのダンス。
対等という言葉。
選ばれない強さ。
そして今、光の輪郭が変わっていく感覚。
「殿下」
レオンが後ろに立つ。
「聖女様の支持は安定しております」
「そうか」
「ですが、熱狂は落ち着きました」
アレクシスはゆっくり頷く。
「熱狂は長く続かない」
「はい」
「必要なのは持続だ」
彼は自分の言葉に驚く。
以前なら、理想と情熱を優先していた。
だが今は違う。
持続。
土台。
責任。
「彼女は、何もしていないのに」
ぽつりと漏らす。
「結果を変えました」
レオンが言う。
動かず、怒らず、選ばれず。
それでも盤面を変えた。
その強さは、王太子にとって未知のものだった。
一方、エルフィーナは夜の書斎で帳簿を閉じる。
市場は安定。
保証は正常。
神殿支援も透明化条件付きで継続。
「揺れは終わったわね」
小さく呟く。
「お嬢様は、本当に何も望まれないのですか」
マリアが尋ねる。
少しだけ考え、彼女は答える。
「望むのは、静かな時間だけ」
それだけ。
王妃の座でも、社交界の中心でもない。
自分のペースで、整った盤面を眺めること。
それが彼女の選択。
王都の夜は静かだ。
光は安定し、熱狂は落ち着き、評価は広がる。
名ばかりの光ではなく、土台を知った光へと変わりつつある。
そしてその変化の中心に、動かなかった一人の令嬢がいる。
だが彼女自身は、何も変わらない。
働かないと決めたまま、ただ静かにそこにいる。
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