『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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第25話 王冠が揺らぐ日

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◆第25話 王冠が揺らぐ日

王宮の執務室は、普段より重苦しい空気に包まれていた。

国王アクトロスが机上に広げた報告書を、
何度も読み返している。

そこには、隣国ベルクラウス王国から届いた公文書――

『エヴァントラ・フェルメリアの冤罪が証明された』
『王国側の判断ミスと内部混乱が原因である』

と、はっきり記されていた。

国王は深く息を吐き、

「……やはり、あの子は間違っていなかったのだな」

と、独り言のように呟いた。

背筋には疲労と後悔が滲んでいる。


---

■ウィッシュ、父王の怒気に気づかず

そこに、場違いなほど明るい声が響いた。

「父上、呼ばれまして?」

ウィッシュが無邪気な笑みを浮かべて入室してきた。

国王の眉がぴくりと動く。

「お前は……この状況が理解できているのか?」

「状況? ああ……アイラが少し失言しただけでしょう?
 でも大丈夫です! 僕が支えれば……」

国王は机をドンッ、と叩いた。

「“少し”……だと?」

ウィッシュがビクリと肩を震わせる。

「エヴァントラ嬢の無実が証明されたのだぞ。
 お前は何をしている!」

「……え?」

ようやく、自分の置かれた立場を悟りはじめたのか、
ウィッシュの表情に焦りが浮かぶ。

だが――

「でも僕は悪くない! あれは全部エヴァントラが……!」

「黙れ!」

国王の怒声が部屋に響いた。

「証拠がすべて語っている!
 誤った判断を下し、宮廷を混乱させたのは――
 お前だ、ウィッシュ。」

「…………っ!」

王太子は顔色を失い、言葉を失った。


---

■アイラの“言い訳劇場”、開幕

そこへ、場を弁えぬ人物がもう一人。

「ウィッシュ様ぁ~! ……あら、国王陛下も?」

スキップでもして来たのかという軽い足取りで、
アイラが入室してきた。

国王の顔がさらに険しくなる。

「お前は……自分が何をしたか分かっているのか」

「なにって……わたし、ただ王太子妃として
 国のためにアドバイスをしただけですわ!」

国王と文官たちが一斉に頭を抱える。

「外交条約の数字を“倍にしろ”と言っただけですわよ!?
 だって、利益が増えるほうがいいでしょう?」

「戦争になるわ!!!」

国王の魂の叫びが大広間に響いた。

アイラはぽかんと口を開ける。

「え? なんで……?」

理解していない。
本気で、まったく理解していない。

その愚かさに、文官たちは改めて悟った。

――この少女がいたから王国は崩壊したのだ、と。


---

■ついに国王が言い放つ

国王は椅子から立ち上がり、
重々しい声で宣言した。

「……ウィッシュ。お前を王太子に据えたのは、
 王国の未来を託すためだった。
 だが――」

ウィッシュの喉が鳴る。

「今のお前では、国を任せられぬ。
 廃太子を検討する。」

ガシャァンッ!!

ウィッシュは思わず机を倒した。

「やめてくれ!! 僕は悪くない!
 エヴァントラがいなかったから……!」

「彼女を追い出したのは“お前自身”だろう!!!」

王の怒気が部屋を満たした。

アイラは青ざめ、ウィッシュの腕を掴む。

「ウィッシュ様、わたし……わたしは……」

「黙っていろ!!!」

ウィッシュがアイラを怒鳴った瞬間――
アイラの目から涙が溢れた。

だが、ウィッシュをかばう者はもういない。

文官たちの視線は冷たかった。

「王国をここまで混乱させた責任は、
 殿下とアイラ様にあります」

「宮廷の女性官吏だけでなく、
 外交筋まで失望しております」

「陛下のご決断は正しいかと」

完全に孤立したウィッシュとアイラ。

その姿は、かつての傲慢さの影もなかった。


---

■国王の最後の宣告

国王は深く息を吸い込み、
静かに、しかし確実な言葉で命じた。

「ウィッシュ。次の評議会で正式に審議する。
 ――お前の廃太子についてだ」

ウィッシュは崩れ落ちた。

アイラは泣きながらしがみつく。

「やだ……やだぁ……わたし、こんなはずじゃ……!」

しかしもう遅い。

二人の破滅は、
誰にも止められないところまで転がり落ちていた。


---
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