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第十話 目に見える上昇
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第十話 目に見える上昇
王都のパン屋の前に、朝から列ができていた。
理由は単純だ。
値段が、また上がった。
「昨日よりさらに二銅貨だと?」
客が声を荒げる。
「仕入れがな……」
店主は肩をすくめる。
仕入れ量は減っていない。
だが、支払い条件が変わった。
即金比率が増え、掛けが縮んだ。
商会は余裕を失い、その分を価格に転嫁する。
三銅貨。
二銅貨。
数字は小さい。
だが毎日食べるパンに現れると、重い。
市場の肉屋でも同じ会話が繰り返される。
「干し肉の値が跳ねた」
「運賃だとよ」
「再審査の影響か」
言葉が広がる。
“再審査”。
誰も意味を正確には知らない。
だが、不安の代名詞になりつつある。
王城の厨房。
料理長が報告する。
「小麦の単価が上昇しております」
王太子は苛立つ。
「止まってはいないのだろう」
「はい」
「ならば問題ない」
問題はある。
数字は止まらずに上がる。
止められていないからこそ、責任の所在が曖昧になる。
財務官が控えめに言う。
「王都の物価指数が上昇傾向にあります」
「一時的だ」
王太子は言い切る。
平民娘は隣で静かに頷く。
「殿下を信じております」
その言葉は甘い。
だが経済は甘くない。
兵舎。
兵士たちが配給表を眺める。
「干し肉が減った」
「質も落ちてる」
「仕入れが変わったらしい」
軍需は止まっていない。
だが最良品は公爵領の騎士団へ優先。
王家軍は“契約通り”の供給。
最小限。
兵士の不満は小さく積もる。
文官会議。
「物価上昇は三週連続です」
「原因は」
「公爵家の再審査による支払い条件の見直し」
「供給量は?」
「維持」
供給が止まっていない。
それが王家の反撃を封じる。
止められたなら、強硬措置が取れる。
だが今は、契約の範囲内。
公爵領。
ヒロインは報告を受ける。
「王都物価、上昇傾向明確」
「民の反応は」
「不満は商人へ向いております」
ヒロインは小さく息を吐く。
「まだ、王家には向いていない」
「はい」
不満はまず、目に見える相手へ向く。
商人。
店主。
中間。
だが時間が経てば、原因を探す。
原因は契約。
契約は王家と公爵家。
「第二段階、維持」
「供給は」
「変えません」
変えないことが圧になる。
王城。
夜。
平民娘は窓から王都を見る。
灯りは変わらない。
だがどこか重い。
「殿下」
「何だ」
「民が困っているのでは」
王太子は笑う。
「改革の痛みだ」
彼はまだ“改革”だと思っている。
だが何も改革していない。
ただ、契約を軽視した。
平民娘は唇を噛む。
自分のせいか。
そう思う瞬間もある。
だが彼女は首を振る。
「殿下は正しい」
その言葉で、彼は安心する。
安心は判断を鈍らせる。
市場では、値札がまた書き換えられる。
小さな数字の積み重ね。
さざ波が、はっきりと目に見える波へ変わる。
王都はまだ平穏だ。
だが価格は、嘘をつかない。
上昇は、目に見える形になった。
王都のパン屋の前に、朝から列ができていた。
理由は単純だ。
値段が、また上がった。
「昨日よりさらに二銅貨だと?」
客が声を荒げる。
「仕入れがな……」
店主は肩をすくめる。
仕入れ量は減っていない。
だが、支払い条件が変わった。
即金比率が増え、掛けが縮んだ。
商会は余裕を失い、その分を価格に転嫁する。
三銅貨。
二銅貨。
数字は小さい。
だが毎日食べるパンに現れると、重い。
市場の肉屋でも同じ会話が繰り返される。
「干し肉の値が跳ねた」
「運賃だとよ」
「再審査の影響か」
言葉が広がる。
“再審査”。
誰も意味を正確には知らない。
だが、不安の代名詞になりつつある。
王城の厨房。
料理長が報告する。
「小麦の単価が上昇しております」
王太子は苛立つ。
「止まってはいないのだろう」
「はい」
「ならば問題ない」
問題はある。
数字は止まらずに上がる。
止められていないからこそ、責任の所在が曖昧になる。
財務官が控えめに言う。
「王都の物価指数が上昇傾向にあります」
「一時的だ」
王太子は言い切る。
平民娘は隣で静かに頷く。
「殿下を信じております」
その言葉は甘い。
だが経済は甘くない。
兵舎。
兵士たちが配給表を眺める。
「干し肉が減った」
「質も落ちてる」
「仕入れが変わったらしい」
軍需は止まっていない。
だが最良品は公爵領の騎士団へ優先。
王家軍は“契約通り”の供給。
最小限。
兵士の不満は小さく積もる。
文官会議。
「物価上昇は三週連続です」
「原因は」
「公爵家の再審査による支払い条件の見直し」
「供給量は?」
「維持」
供給が止まっていない。
それが王家の反撃を封じる。
止められたなら、強硬措置が取れる。
だが今は、契約の範囲内。
公爵領。
ヒロインは報告を受ける。
「王都物価、上昇傾向明確」
「民の反応は」
「不満は商人へ向いております」
ヒロインは小さく息を吐く。
「まだ、王家には向いていない」
「はい」
不満はまず、目に見える相手へ向く。
商人。
店主。
中間。
だが時間が経てば、原因を探す。
原因は契約。
契約は王家と公爵家。
「第二段階、維持」
「供給は」
「変えません」
変えないことが圧になる。
王城。
夜。
平民娘は窓から王都を見る。
灯りは変わらない。
だがどこか重い。
「殿下」
「何だ」
「民が困っているのでは」
王太子は笑う。
「改革の痛みだ」
彼はまだ“改革”だと思っている。
だが何も改革していない。
ただ、契約を軽視した。
平民娘は唇を噛む。
自分のせいか。
そう思う瞬間もある。
だが彼女は首を振る。
「殿下は正しい」
その言葉で、彼は安心する。
安心は判断を鈍らせる。
市場では、値札がまた書き換えられる。
小さな数字の積み重ね。
さざ波が、はっきりと目に見える波へ変わる。
王都はまだ平穏だ。
だが価格は、嘘をつかない。
上昇は、目に見える形になった。
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