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第十二話 辺境伯の沈黙
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第十二話 辺境伯の沈黙
王都から北西へ三日。
王国最前線を守る辺境伯領は、常に実利で動く。
華やかな宮廷より、備蓄倉庫の方が重要な土地だ。
その執務室に、公爵家からの書簡が届いた。
「契約再審査に関する通達」
辺境伯は無言で読み終える。
「供給は維持。ただし支払い条件を厳格化……か」
隣に立つ嫡男が問う。
「父上、どうなさいますか」
辺境伯は窓の外を見る。
兵士が整列し、馬が嘶く。
「王家は何をしている」
「王太子は宮廷に平民娘を迎えたと」
「知っている」
恋は否定しない。
だが辺境は感情で守れない。
「王家軍の補給は?」
「遅延が出ております」
辺境伯は短く息を吐く。
「王家は流通を理解していない」
「では」
「静観だ」
即断。
だが静観は中立ではない。
「公爵領との契約は」
「維持」
「王家への追加支援は」
「見送る」
嫡男は頷く。
「公爵支持と受け取られます」
「受け取らせろ」
支持宣言はしない。
だが動きで示す。
王城。
軍務官が青ざめて報告する。
「辺境伯が王家への追加軍資金を凍結しました」
王太子は立ち上がる。
「反逆か」
「公式には、契約見直しに伴う財政調整と」
反逆ではない。
合理だ。
平民娘は不安げに言う。
「殿下……」
「辺境伯は臆病者だ」
だが辺境伯は王国で最も戦を知る男。
臆病ではない。
冷静だ。
公爵領。
報告が届く。
「辺境伯、追加支援停止」
公爵は静かに笑う。
「早いな」
ヒロインは頷く。
「辺境は損をしません」
「公爵支持を明言したか」
「いいえ」
「だが」
「動きは明確です」
支持は言葉より重い。
契約の流れが変わる。
王家軍は名目上王家の軍。
だが実体は各領地。
辺境伯が距離を取れば、王家軍はさらに空洞化する。
王城。
側近が囁く。
「他の諸侯も様子を見ております」
王太子は苛立つ。
「公爵が煽っている」
煽っていない。
ただ契約を守っている。
それが圧になる。
夜。
辺境伯は嫡男に言う。
「王家が安定しているなら、支える」
「今は?」
「安定していない」
「公爵は?」
「流れを読んでいる」
嫡男は問う。
「いずれ、立場を明確に?」
辺境伯は短く答える。
「王家が王でなくなったときにな」
王城。
王太子は苛立ちのまま命令を出そうとする。
だが側近が止める。
「今、強硬に出れば諸侯が結束します」
「私に逆らうのか」
「逆らうのではなく、離れるのです」
その言葉に、王太子は沈黙する。
離れる。
それが最も怖い。
公爵領。
ヒロインは地図に小さな印をつける。
「一つ」
辺境伯はまだ旗を掲げていない。
だが、重心は動いた。
王国の外周が、静かに公爵へ傾く。
まだ革命ではない。
だが支柱は、一本、抜けた。
そして誰も、血を流していない。
王都から北西へ三日。
王国最前線を守る辺境伯領は、常に実利で動く。
華やかな宮廷より、備蓄倉庫の方が重要な土地だ。
その執務室に、公爵家からの書簡が届いた。
「契約再審査に関する通達」
辺境伯は無言で読み終える。
「供給は維持。ただし支払い条件を厳格化……か」
隣に立つ嫡男が問う。
「父上、どうなさいますか」
辺境伯は窓の外を見る。
兵士が整列し、馬が嘶く。
「王家は何をしている」
「王太子は宮廷に平民娘を迎えたと」
「知っている」
恋は否定しない。
だが辺境は感情で守れない。
「王家軍の補給は?」
「遅延が出ております」
辺境伯は短く息を吐く。
「王家は流通を理解していない」
「では」
「静観だ」
即断。
だが静観は中立ではない。
「公爵領との契約は」
「維持」
「王家への追加支援は」
「見送る」
嫡男は頷く。
「公爵支持と受け取られます」
「受け取らせろ」
支持宣言はしない。
だが動きで示す。
王城。
軍務官が青ざめて報告する。
「辺境伯が王家への追加軍資金を凍結しました」
王太子は立ち上がる。
「反逆か」
「公式には、契約見直しに伴う財政調整と」
反逆ではない。
合理だ。
平民娘は不安げに言う。
「殿下……」
「辺境伯は臆病者だ」
だが辺境伯は王国で最も戦を知る男。
臆病ではない。
冷静だ。
公爵領。
報告が届く。
「辺境伯、追加支援停止」
公爵は静かに笑う。
「早いな」
ヒロインは頷く。
「辺境は損をしません」
「公爵支持を明言したか」
「いいえ」
「だが」
「動きは明確です」
支持は言葉より重い。
契約の流れが変わる。
王家軍は名目上王家の軍。
だが実体は各領地。
辺境伯が距離を取れば、王家軍はさらに空洞化する。
王城。
側近が囁く。
「他の諸侯も様子を見ております」
王太子は苛立つ。
「公爵が煽っている」
煽っていない。
ただ契約を守っている。
それが圧になる。
夜。
辺境伯は嫡男に言う。
「王家が安定しているなら、支える」
「今は?」
「安定していない」
「公爵は?」
「流れを読んでいる」
嫡男は問う。
「いずれ、立場を明確に?」
辺境伯は短く答える。
「王家が王でなくなったときにな」
王城。
王太子は苛立ちのまま命令を出そうとする。
だが側近が止める。
「今、強硬に出れば諸侯が結束します」
「私に逆らうのか」
「逆らうのではなく、離れるのです」
その言葉に、王太子は沈黙する。
離れる。
それが最も怖い。
公爵領。
ヒロインは地図に小さな印をつける。
「一つ」
辺境伯はまだ旗を掲げていない。
だが、重心は動いた。
王国の外周が、静かに公爵へ傾く。
まだ革命ではない。
だが支柱は、一本、抜けた。
そして誰も、血を流していない。
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