婚約破棄?責任を取らされた王太子はホームレスになりました

鷹 綾

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第十三話 商会の傾斜

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第十三話 商会の傾斜

王都最大の商業区。

石造りの会館に、各商会の長が集まっていた。

表向きは月例会議。
だが議題は一つ。

「王家との掛けをどうする」

老舗香辛料商の長が口を開く。

「公爵家は支払い条件を厳格化した」

「王家は?」

「据え置きだが、遅延が増えている」

数字は冷酷だ。

支払い遅延は信頼の減少。

契約再審査は圧。

どちらに寄るか。

布商が言う。

「王家は名目上の中心だ」

「だが資金は公爵領が握る」

鉄商が帳簿を叩く。

「王家向けは利益が薄い。
公爵向けは現金決済が増えた」

沈黙が落ちる。

誰も王家を敵にしたくない。

だが、損はもっと嫌だ。

「表向きは中立を維持」

老商が結論を出す。

「だが優先は公爵領」

全員が頷く。

傾いた。

宣言はない。

だが資金は流れを変えた。

王城。

財務官が報告する。

「商会の現金決済比率が変動しております」

王太子は眉をひそめる。

「何が言いたい」

「王家向け掛けが縮小傾向です」

「一時的だ」

だが財務官は知っている。

商人は裏切らない。

ただ、利益を選ぶ。

平民娘は不安げに尋ねる。

「殿下、何か問題が?」

「些細なことだ」

彼は笑う。

だが机の上の帳簿は笑っていない。

公爵領。

ヒロインは報告書を読む。

「王都主要商会、現金決済を公爵優先へ」

「はい」

「王家向けは?」

「掛け縮小」

ヒロインは静かに頷く。

「宣言は不要です」

「商人は実利で動く」

「ええ」

感情ではない。

王太子が“真実の愛”を掲げた日から、商人は静かに計算を始めていた。

王城。

夜の回廊で、若い貴族が囁く。

「商会が動いたらしい」

「王家の資金繰りは?」

「まだ問題はない」

まだ。

だが“まだ”は期限付き。

市場。

布の値が上がる。

鉄の納期が延びる。

小麦の価格が固定されなくなる。

商人は言う。

「公爵家の条件が安定している」

王家は不安定。

安定を選ぶ。

王城の兵舎では、装備の更新が延期される。

「資金調整だと」

兵士が不満を漏らす。

王家はまだ命令できる。

だが命令は資金で動く。

資金は商人が握る。

商人は公爵へ傾いた。

公爵領。

公爵が娘を見る。

「商会が動いたな」

「はい」

「次は?」

ヒロインは窓の外を見つめる。

「民です」

商人が傾けば、価格が変わる。

価格が変われば、生活が揺れる。

生活が揺れれば、原因を探す。

原因は王太子の決断へ辿り着く。

止めていない。

奪っていない。

ただ、流れが変わった。

王城の塔は高い。

だがその下で、金の流れが王家を避け始めている。

王家はまだ王だ。

だが王国の血流は、静かに公爵へ向きを変えた。
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