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第十七話 名ばかりの王家軍
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第十七話 名ばかりの王家軍
王城の軍務会議。
王太子の前に並ぶのは、王家軍の名簿と動員表。
数字は多い。
歩兵、騎兵、弓兵。
だが軍務官は静かに告げた。
「殿下、王家直轄兵は三千」
「他は?」
「各領地騎士団の派遣です」
王太子は眉をひそめる。
「王家軍は王家の軍だろう」
「名目上は」
軍務官は言葉を選ぶ。
「実際には、各領主が維持し、王家が指揮権を借りている形です」
借りている。
その一言が、重く落ちた。
「ならば命じればよい」
王太子は即答する。
軍務官は視線を落とす。
「命令は可能です。ただし、補給と資金が伴わなければ」
伴わなければ、動かない。
王家の金庫は薄い。
商会は掛けを縮小。
公爵領は契約再審査中。
軍は数字だけで動かない。
夜。
王城の兵舎で、若い騎士が呟く。
「我らは王家の兵か」
年長の騎士が首を振る。
「我らは領主の兵だ。王家の命は、領主が是とすれば従う」
その言葉は現実だ。
王家軍は、実体を持たない集合体。
王城。
王太子は怒りを抑えきれない。
「公爵は兵を動かせるのか」
軍務官は答える。
「公爵家騎士団は、独立して動けます」
王太子は沈黙する。
王家直轄兵三千。
公爵家騎士団五千。
さらに辺境伯の兵。
数は示していない。
だが差は明白。
平民娘は不安げに言う。
「殿下……」
「恐れるな」
彼は言う。
だが初めて、彼の声に揺れがあった。
公爵領。
ヒロインは報告を受ける。
「王家軍の実態、王太子も把握」
公爵は笑う。
「今さらか」
ヒロインは冷静に言う。
「王家軍は象徴です」
「実体は諸侯」
「はい」
象徴が揺らげば、威光は消える。
「王家が軍を動かせないと知れれば」
「民は気づきます」
王は守る存在。
守れない王は何か。
王都。
市場で噂が広がる。
「王家軍は実は各領地頼みらしい」
「公爵が兵を引けば?」
「王城は空だ」
誇張だ。
だが誇張は恐れを生む。
恐れは信頼を削る。
王城の塔は高い。
だがその足元を守る兵は少ない。
公爵領。
ヒロインは地図に目を落とす。
「軍は最後の支柱」
「崩しますか」
執務官が問う。
「いいえ」
彼女は静かに答える。
「崩さなくていい」
事実が知られれば十分。
王家軍が“借り物”だと知れれば、威光は薄れる。
剣を抜く必要はない。
王家の剣は、最初から握られていなかったのだから。
王太子はまだ気づいていない。
王家の力が名ばかりであることに。
だが王国は、すでに知り始めている。
王家軍は名目。
実体は諸侯。
そして諸侯は、静かに公爵の側へ傾いていた。
王城の軍務会議。
王太子の前に並ぶのは、王家軍の名簿と動員表。
数字は多い。
歩兵、騎兵、弓兵。
だが軍務官は静かに告げた。
「殿下、王家直轄兵は三千」
「他は?」
「各領地騎士団の派遣です」
王太子は眉をひそめる。
「王家軍は王家の軍だろう」
「名目上は」
軍務官は言葉を選ぶ。
「実際には、各領主が維持し、王家が指揮権を借りている形です」
借りている。
その一言が、重く落ちた。
「ならば命じればよい」
王太子は即答する。
軍務官は視線を落とす。
「命令は可能です。ただし、補給と資金が伴わなければ」
伴わなければ、動かない。
王家の金庫は薄い。
商会は掛けを縮小。
公爵領は契約再審査中。
軍は数字だけで動かない。
夜。
王城の兵舎で、若い騎士が呟く。
「我らは王家の兵か」
年長の騎士が首を振る。
「我らは領主の兵だ。王家の命は、領主が是とすれば従う」
その言葉は現実だ。
王家軍は、実体を持たない集合体。
王城。
王太子は怒りを抑えきれない。
「公爵は兵を動かせるのか」
軍務官は答える。
「公爵家騎士団は、独立して動けます」
王太子は沈黙する。
王家直轄兵三千。
公爵家騎士団五千。
さらに辺境伯の兵。
数は示していない。
だが差は明白。
平民娘は不安げに言う。
「殿下……」
「恐れるな」
彼は言う。
だが初めて、彼の声に揺れがあった。
公爵領。
ヒロインは報告を受ける。
「王家軍の実態、王太子も把握」
公爵は笑う。
「今さらか」
ヒロインは冷静に言う。
「王家軍は象徴です」
「実体は諸侯」
「はい」
象徴が揺らげば、威光は消える。
「王家が軍を動かせないと知れれば」
「民は気づきます」
王は守る存在。
守れない王は何か。
王都。
市場で噂が広がる。
「王家軍は実は各領地頼みらしい」
「公爵が兵を引けば?」
「王城は空だ」
誇張だ。
だが誇張は恐れを生む。
恐れは信頼を削る。
王城の塔は高い。
だがその足元を守る兵は少ない。
公爵領。
ヒロインは地図に目を落とす。
「軍は最後の支柱」
「崩しますか」
執務官が問う。
「いいえ」
彼女は静かに答える。
「崩さなくていい」
事実が知られれば十分。
王家軍が“借り物”だと知れれば、威光は薄れる。
剣を抜く必要はない。
王家の剣は、最初から握られていなかったのだから。
王太子はまだ気づいていない。
王家の力が名ばかりであることに。
だが王国は、すでに知り始めている。
王家軍は名目。
実体は諸侯。
そして諸侯は、静かに公爵の側へ傾いていた。
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