婚約破棄?責任を取らされた王太子はホームレスになりました

鷹 綾

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第二十一話 財務官の宣言

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第二十一話 財務官の宣言

王城財務局。

重い空気が漂っていた。

帳簿は積み上がり、未処理の書類が山のように残る。

文官の辞職が続き、処理は滞り、支払いは遅れ始めている。

その中心に座るのは、王国財務官バルディア。

王家に二十年仕えた男。

冷静で、感情を表に出さないことで知られていた。

その日、彼は自ら王太子への謁見を求めた。

玉座の間。

王太子は不機嫌なまま財務官を見下ろす。

「辞職か」

先に言ったのは王太子だった。

バルディアは首を横に振る。

「いいえ」

「では何だ」

財務官は一歩進み、書類を差し出した。

「王家の財政は、現状では維持できません」

玉座の間が静まり返る。

「何を言っている」

「物価上昇により補助金が増大。
商会の掛け縮小により現金支出が増加。
軍需費の再算定により追加負担が発生」

冷静な声。

「このままでは、三ヶ月以内に王家の資金は枯渇します」

王太子の目が鋭くなる。

「誇張だ」

「いいえ。数字です」

財務官は淡々と続ける。

「公爵領は契約を守っています。
我らは契約を軽視しました」

その言葉に、空気が張り詰める。

「公爵を擁護するのか」

王太子の声が低くなる。

「擁護ではありません。事実です」

平民娘が震える。

「では、どうすれば」

財務官は迷わず答える。

「公爵家との全面協議。
契約順守の誓約。
評議会での合意形成」

王太子は即座に否定する。

「私が頭を下げろと言うのか」

「王国のためならば」

その瞬間。

玉座の間にいる全員が息を止めた。

王太子の顔が紅潮する。

「お前は誰に仕えている」

財務官ははっきりと答えた。

「王国です」

沈黙。

それは宣言だった。

王家ではなく、王国。

王太子は叫ぶ。

「罷免する!」

だが側近が耳打ちする。

「財務官を罷免すれば、資金管理が止まります」

現実が牙をむく。

怒りでは解決できない。

財務官は続ける。

「私は辞職いたしません」

「なぜだ」

「責任があるからです」

そして静かに告げる。

「しかし、評議会が開かれた場合、私は事実を述べます」

事実。

それは刃だ。

公爵領。

報告が届く。

「財務官、王太子に直言」

公爵は低く笑う。

「度胸がある」

ヒロインは静かに頷く。

「財務官は王家ではなく、王国を選びました」

「公爵支持と見るか」

「まだ公言ではありません」

だが立場は明確。

王城。

夜。

王太子は拳を握る。

「皆、私に背く」

平民娘は縋るように言う。

「殿下は正しい」

だが彼女の声は、以前より弱い。

財務官は辞めない。

罷免もされない。

だが王太子の命令に従わない。

それは致命的だ。

王国の血流である財務が、公爵の契約順守を正しいと認めた。

王家の中枢が、王太子を否定した。

王城はまだ立っている。

だが中で、柱が一本、はっきりと傾いた。

そしてそれは、音を立ててはいない。

ただ、確実に重心を動かした。
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