婚約破棄?責任を取らされた王太子はホームレスになりました

鷹 綾

文字の大きさ
27 / 39

第二十八話 拘束

しおりを挟む
第二十八話 拘束

廃嫡の決定から三日。

王都の空気は、さらに冷え込んだ。

廃嫡は終わりではなかった。

むしろ始まりだった。

市場では、同じ言葉が繰り返される。

「誰が混乱を招いた」

「誰が王太子を惑わせた」

その視線は、自然と一人に集まる。

王城。

重臣会議。

辺境伯が言う。

「民心は収まっておらぬ」

財務官。

「信用回復の象徴が必要です」

教会代表。

「魔女の噂が広がっております」

国王は沈黙する。

王太子は部屋に籠もったまま。

王家は象徴を失った。

ならば別の象徴を差し出すしかない。

商会長が低く言う。

「責任の明確化を」

辺境伯が視線を国王に向ける。

「決断を」

長い沈黙。

そして国王は告げる。

「平民出身の娘を拘束する」

罪名は定まっていない。

だが名目はある。

「王家秩序を乱した疑い」

「国家混乱の原因調査」

形式は調査。

実態は切り離し。

その夜。

王太子の居室に衛兵が入る。

「何の真似だ!」

命令書が示される。

王太子は掴みかかる。

だが衛兵は退かない。

権限は重臣会議名義。

王家単独ではない。

平民娘は自室で震えている。

扉が開く。

「……来たのですね」

涙は出ない。

覚悟はない。

ただ、恐怖。

王太子が叫ぶ。

「触れるな!」

だが誰も止まらない。

彼の命令は届かない。

平民娘は連れて行かれる。

王城の廊下は静まり返っている。

誰も助けない。

誰も目を合わせない。

王太子はその場に崩れ落ちる。

廃嫡された彼に、止める力はない。

翌朝。

王都に報が流れる。

「王家、混乱の原因調査開始」

「平民娘拘束」

市場は静まる。

歓声はない。

だが、ざわめきが収まる。

責任の所在が動いた。

王家は象徴を差し出した。

だが重臣たちは理解している。

これで終わりではない。

信用はまだ戻らない。

王家の責任は消えていない。

拘束は第一段階。

次は、断罪か。

それともさらに大きな決断か。

王城の塔に、朝日が差す。

平民娘は石の部屋に座る。

外の音は届かない。

彼女は理解する。

愛は、盾にならない。

王太子は窓を叩く。

「私は王になるはずだった」

だが声は空に消える。

王家は、自らを守るために彼女を切り離した。

冷酷ではない。

必然。

国家は感情で動かない。

拘束。

それは終焉への道の一歩だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

とある伯爵の憂鬱

如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 双子として生まれたエレナとエレン。 かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。 だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。 エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。 両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。 そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。 療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。 エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。 だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。 自分がニセモノだと知っている。 だから、この1年限りの恋をしよう。 そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。 ※※※※※※※※※※※※※ 異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。 現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦) ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

処理中です...