婚約破棄?責任を取らされた王太子はホームレスになりました

鷹 綾

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第三十話 監督責任

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第三十話 監督責任

平民娘の処刑が執行された翌朝。

王都は、静まり返っていた。

歓声もない。
悲鳴もない。

あるのは、重たい空気。

王家は“決断”を示した。

だが民衆は理解している。

あれは断罪ではない。

切り捨てだ。

王城の大広間。

諸侯会議が開かれる。

辺境伯が口火を切る。

「平民娘は処刑された。だが秩序は戻らぬ」

財務官が静かに帳簿を閉じる。

「物価は高止まり。軍の再編も停滞。混乱の根は深い」

教会代表も言う。

「民は納得しておりません」

沈黙。

誰も口にしなかった言葉が、ついに出る。

「責任は誰にある」

王太子は廃嫡された。

平民娘は処刑された。

だが国家は揺れたままだ。

ならば。

辺境伯が視線を国王へ向ける。

「監督責任」

重い言葉。

国王は動かない。

逃げない。

「王太子の暴走を止められなかったのは、王家」

「統治を放置したのも、王家」

「流通の要を軽視したのも、王家」

一つ一つ、事実が積み上がる。

感情ではない。

論理。

公爵家は沈黙を保っている。

だが沈黙は力だ。

王家は自ら揺れた。

誰も強制していない。

自壊だ。

文官代表が書面を読み上げる。

「王家の統治能力に重大な欠陥が認められる」

言葉は穏やか。

だが内容は致命的。

国王はゆっくりと口を開く。

「……私は、王である」

誰も否定しない。

「だが王であるということは、責任を負うということだ」

広間に緊張が走る。

王太子の愚行。

平民娘の処刑。

軍の不作動。

財政の逼迫。

民心の離反。

すべては連鎖。

一人の愚かさではなく、それを許した体制の問題。

辺境伯が問う。

「陛下、どうなさる」

問いは単純。

だが答えは重い。

国王は立ち上がる。

その背は老いている。

だが目は曇っていない。

「王家は、国より上ではない」

再び、その言葉。

「ならば王家が国を揺らしたなら、責を取るべきだ」

ざわめきは起きない。

覚悟は共有されている。

王太子を切っても足りなかった。

平民娘を処刑しても収まらなかった。

ならば。

王家そのものが、責を負う。

その日、王城の旗は半旗となる。

喪ではない。

覚悟の印。

王都の民は見る。

理解する。

断罪は終わっていない。

本丸はまだ残っている。

公爵領。

報告を受けたヒロインは静かに言う。

「処刑では終わらないと、父上はご存じでしたね」

公爵は頷く。

「責任は、上へ上へと遡る」

「では、次は」

彼女の声は冷たい。

公爵は答えない。

答えなくても分かる。

王家は追い詰められている。

だが誰も剣を抜かない。

誰も城門を破らない。

革命は血ではなく、責任で進む。

王太子の断罪は序章だった。

真の裁きは、王家そのものへ向かう。



処刑は終わりではなかった。

それは、監督責任という言葉を王城に呼び込むための前触れにすぎない。
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