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第三十六話 血統の断絶
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第三十六話 血統の断絶
譲位の布告が出された翌日、王城は異様なほど整っていた。
混乱はない。
逃げ惑う王族もいない。
泣き叫ぶ者もいない。
あるのは、冷静な手続きだけだった。
諸侯会議が再び開かれる。
議題は明白。
廃嫡では足りない。
王族籍が残る限り、象徴は残る。
象徴は、いずれ旗になる。
旗は、争いを呼ぶ。
辺境伯が静かに口を開く。
「旧王太子の存在は、王家の混乱の象徴である」
財務官が続ける。
「王族籍を保持したままでは、名目上の復権の余地が残る」
文官長が書面を読み上げる。
「王族籍の完全剥奪、爵位消滅、財産没収、国外追放」
教会代表が言う。
「国家安定のためには、断絶が必要です」
反対は出ない。
怒りも罵声もない。
これは復讐ではない。
整理。
王家の名を守るための、最後の処理。
王家の系譜表が広げられる。
長く連なる王の名。
祖先たちの栄光。
その中の一行に、赤い線が引かれる。
音はしない。
だが、それで血統は切れる。
塔の一室。
旧王太子は命令書を受け取る。
視線は紙に落ちる。
しばらく動かない。
「王族籍……剥奪」
かすれた声。
兵は無表情。
かつての近衛騎士はいない。
忠誠を誓った側近もいない。
豪奢な外套が回収される。
王家の紋章が縫い取られる。
金糸がほどかれる。
指輪が外される。
宝石が袋に入れられる。
一つずつ。
象徴が消えていく。
部屋は広い。
だが急に寒い。
彼は気づく。
守られていたのは自分ではない。
王族という立場だった。
その立場が消えた瞬間、何も残らない。
「出立は明朝」
それだけ告げられる。
抗議しようとする。
だが言葉が出ない。
何を根拠に抗議する。
王家の名は、もう使えない。
翌朝。
王都の門は重く開く。
空は曇り。
風が冷たい。
護衛は最低限。
処刑ではない。
だが栄誉もない。
門の前を通る民は、足を止めない。
振り返らない。
罵声もない。
憎悪すら向けられない。
無関心。
それが最も残酷だった。
彼は振り返る。
城壁の上に、王家の旗はない。
新しい旗が揺れている。
自分の居場所は、もう存在しない。
門が閉じる。
鈍い音が響く。
その瞬間、王族は完全に消えた。
王家の記録から名は削られる。
戸籍から消える。
財産は分配され、文官の帳簿に整理される。
すべてが整然と終わる。
血は流れていない。
剣も抜かれていない。
だが王家の血統は断たれた。
国は前へ進む。
過去は、処理された。
王家は終わった。
そして玉座は、空白を残さない。
譲位の布告が出された翌日、王城は異様なほど整っていた。
混乱はない。
逃げ惑う王族もいない。
泣き叫ぶ者もいない。
あるのは、冷静な手続きだけだった。
諸侯会議が再び開かれる。
議題は明白。
廃嫡では足りない。
王族籍が残る限り、象徴は残る。
象徴は、いずれ旗になる。
旗は、争いを呼ぶ。
辺境伯が静かに口を開く。
「旧王太子の存在は、王家の混乱の象徴である」
財務官が続ける。
「王族籍を保持したままでは、名目上の復権の余地が残る」
文官長が書面を読み上げる。
「王族籍の完全剥奪、爵位消滅、財産没収、国外追放」
教会代表が言う。
「国家安定のためには、断絶が必要です」
反対は出ない。
怒りも罵声もない。
これは復讐ではない。
整理。
王家の名を守るための、最後の処理。
王家の系譜表が広げられる。
長く連なる王の名。
祖先たちの栄光。
その中の一行に、赤い線が引かれる。
音はしない。
だが、それで血統は切れる。
塔の一室。
旧王太子は命令書を受け取る。
視線は紙に落ちる。
しばらく動かない。
「王族籍……剥奪」
かすれた声。
兵は無表情。
かつての近衛騎士はいない。
忠誠を誓った側近もいない。
豪奢な外套が回収される。
王家の紋章が縫い取られる。
金糸がほどかれる。
指輪が外される。
宝石が袋に入れられる。
一つずつ。
象徴が消えていく。
部屋は広い。
だが急に寒い。
彼は気づく。
守られていたのは自分ではない。
王族という立場だった。
その立場が消えた瞬間、何も残らない。
「出立は明朝」
それだけ告げられる。
抗議しようとする。
だが言葉が出ない。
何を根拠に抗議する。
王家の名は、もう使えない。
翌朝。
王都の門は重く開く。
空は曇り。
風が冷たい。
護衛は最低限。
処刑ではない。
だが栄誉もない。
門の前を通る民は、足を止めない。
振り返らない。
罵声もない。
憎悪すら向けられない。
無関心。
それが最も残酷だった。
彼は振り返る。
城壁の上に、王家の旗はない。
新しい旗が揺れている。
自分の居場所は、もう存在しない。
門が閉じる。
鈍い音が響く。
その瞬間、王族は完全に消えた。
王家の記録から名は削られる。
戸籍から消える。
財産は分配され、文官の帳簿に整理される。
すべてが整然と終わる。
血は流れていない。
剣も抜かれていない。
だが王家の血統は断たれた。
国は前へ進む。
過去は、処理された。
王家は終わった。
そして玉座は、空白を残さない。
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