24 / 39
第25話 孤立する王都
しおりを挟む
第25話 孤立する王都
決裂の余波は、想像以上に早く広がった。
王都はこれまで、“調整役”として各国の間に立ってきた。
その立場は、強制力ではなく――信用によって保たれていた。
そして今、その信用が揺らいでいる。
「……グラーツ公国経由の案件が、止まっています」
王都の会議室で、担当官が報告した。
「隣国からの共同事業の話も、
すべて“公国側と直接話す”と」
「なぜ、こちらを通さない!」
誰かが声を荒げる。
だが、理由は明白だった。
「公国は、意思決定が早い。
責任者が明確。
――そう評価されています」
その言葉に、室内が沈黙する。
王都はどうか。
協議に時間がかかる。
責任の所在が曖昧。
そして最近は――強圧的。
「……外交筋からも、懸念が出ています」
別の官僚が続ける。
「“王都は、内政問題を他国に押し付けようとしている”と」
ざわめきが広がった。
「そんな馬鹿な……」 「我々は、王国のために――」
言葉は、途中で止まる。
それが通用しなくなっていることを、
全員が理解していたからだ。
レヴァンテは、黙ってその様子を見ていた。
(……切り捨てられている)
かつては、王都を通さなければ話が進まなかった。
今は――王都を避ける動きが、加速している。
「殿下……」
側近が、声を潜める。
「公国との関係修復を、改めて――」
「無理だ」
レヴァンテは、低く言った。
「こちらが、完全に一線を越えた」
命令という形で、従わせようとした。
それが、どれほど愚かな手だったか。
彼女はもう、
こちらの庇護を必要とする存在ではない。
――むしろ。
王都の方が、彼女の力を必要としていた。
一方、グラーツ公国。
私は執務室で、各国から届いた書簡に目を通していた。
「……増えていますね」
「公国を通した共同事業の打診か」
アンクレイブが言う。
「ええ。
王都を介さず、直接」
それは、偶然ではない。
意思決定が早く、
結果が出て、
約束を守る。
――信頼が、自然と集まってきている。
「王都は、孤立し始めている」
アンクレイブの言葉は、淡々としていた。
「自業自得ですね」
私は、冷静に答える。
「強制は、信頼を削りますから」
それは、誰かを責める言葉ではない。
ただの事実だ。
窓の外では、街が静かに動いている。
人々は働き、学び、未来を見据えている。
(……ここに、戻る理由はない)
王都が孤立していく一方で、
この国は、確実に外と繋がり始めている。
かつて中心だった場所は、
今や“避けられる場所”になりつつあった。
そして王都は、ようやく気づき始める。
切り捨てたのではない。
切り捨てられたのは、自分たちだということに。
---
決裂の余波は、想像以上に早く広がった。
王都はこれまで、“調整役”として各国の間に立ってきた。
その立場は、強制力ではなく――信用によって保たれていた。
そして今、その信用が揺らいでいる。
「……グラーツ公国経由の案件が、止まっています」
王都の会議室で、担当官が報告した。
「隣国からの共同事業の話も、
すべて“公国側と直接話す”と」
「なぜ、こちらを通さない!」
誰かが声を荒げる。
だが、理由は明白だった。
「公国は、意思決定が早い。
責任者が明確。
――そう評価されています」
その言葉に、室内が沈黙する。
王都はどうか。
協議に時間がかかる。
責任の所在が曖昧。
そして最近は――強圧的。
「……外交筋からも、懸念が出ています」
別の官僚が続ける。
「“王都は、内政問題を他国に押し付けようとしている”と」
ざわめきが広がった。
「そんな馬鹿な……」 「我々は、王国のために――」
言葉は、途中で止まる。
それが通用しなくなっていることを、
全員が理解していたからだ。
レヴァンテは、黙ってその様子を見ていた。
(……切り捨てられている)
かつては、王都を通さなければ話が進まなかった。
今は――王都を避ける動きが、加速している。
「殿下……」
側近が、声を潜める。
「公国との関係修復を、改めて――」
「無理だ」
レヴァンテは、低く言った。
「こちらが、完全に一線を越えた」
命令という形で、従わせようとした。
それが、どれほど愚かな手だったか。
彼女はもう、
こちらの庇護を必要とする存在ではない。
――むしろ。
王都の方が、彼女の力を必要としていた。
一方、グラーツ公国。
私は執務室で、各国から届いた書簡に目を通していた。
「……増えていますね」
「公国を通した共同事業の打診か」
アンクレイブが言う。
「ええ。
王都を介さず、直接」
それは、偶然ではない。
意思決定が早く、
結果が出て、
約束を守る。
――信頼が、自然と集まってきている。
「王都は、孤立し始めている」
アンクレイブの言葉は、淡々としていた。
「自業自得ですね」
私は、冷静に答える。
「強制は、信頼を削りますから」
それは、誰かを責める言葉ではない。
ただの事実だ。
窓の外では、街が静かに動いている。
人々は働き、学び、未来を見据えている。
(……ここに、戻る理由はない)
王都が孤立していく一方で、
この国は、確実に外と繋がり始めている。
かつて中心だった場所は、
今や“避けられる場所”になりつつあった。
そして王都は、ようやく気づき始める。
切り捨てたのではない。
切り捨てられたのは、自分たちだということに。
---
48
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚
奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]
努力をしてきたつもりでした。
でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。
できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。
でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。
私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。
諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。
田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。
大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。
【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~
深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。
断罪されていたはずなのですが、成り行きで辺境伯様に連れ去られた結果……。
水上
恋愛
リリア・アシュベリーは婚約者である第二王子ジェラルドと彼の隣にいるイザベラ・ローズによって、断罪されようとしていた。
しかし、その場に現れた辺境伯アルヴィス・グレンデルのおかげで、窮地を脱することができた。
さらに……。
「冤罪は晴らした。だが、ここの空気は知性が欠乏していて息苦しい。行くぞ、リリア。君のような希少な検体を、こんな場所に放置しておくわけにはいかない」
その手は、ジェラルドが一度も握ってくれなかったほど力強く、リリアの手首を引いた。
こうして、成り行きで彼に連れ去られたリリア。
その結果、新たな運命の歯車が動き始めたのだった。
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる