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第39話 溺愛の覚悟
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第39話 溺愛の覚悟
その知らせは、朝一番に届いた。
「近隣三国の代表団が、本日中に到着予定です」
補佐官の報告に、私は頷いた。
「予定通り、合同協議ですね」
「ああ」
アンクレイブは短く答え、書類に目を落とす。
王都を介さない、
グラーツ公国主導の正式協議。
それ自体が、すでに時代の変化を示していた。
「今回の席順ですが」
補佐官が、少しだけ言いにくそうに続ける。
「公爵様単独ではなく、
公爵夫妻並列での出席を求められています」
私は、一瞬だけ目を瞬かせた。
(……ついに、来たわね)
象徴ではない。
同席でも、補佐でもない。
並列。
アンクレイブは、顔を上げる。
「問題ない」
即答だった。
「エリーカ」
こちらを見る。
「異議は?」
「ありません」
私も、即答した。
午後。
大広間は、厳粛な空気に包まれていた。
各国の代表が揃い、
視線が、一斉にこちらへ向く。
――公爵夫妻。
並んで歩く。
以前なら、
“白い結婚の形式的な夫婦”として見られていた。
だが今は違う。
誰の目にも、
意思を共有する対等な二人として映っている。
「本日の協議は、
グラーツ公国が主導する」
アンクレイブの声が、場を支配する。
「そして」
一拍、置く。
「私は、すべての判断を、
妻と共有した上で下す」
ざわり。
代表の一人が、思わず問いかけた。
「それは、今後も?」
「今後も、だ」
迷いはない。
「彼女は、私の妻であり、
この国の未来を共に選ぶ相手だ」
それは、政治的宣言であり、
同時に――個人的な覚悟だった。
私は、静かに言葉を継ぐ。
「私も同様です」
会場を見渡す。
「この国に関する決断は、
すべて責任を持って受け止めます」
逃げない。
隠れない。
ただ、並び立つ。
協議は、驚くほど円滑に進んだ。
意見は交わされ、
対立は調整され、
最終的な合意が形成されていく。
(……これが、今の私たち)
役割ではない。
依存でもない。
選び続ける関係。
協議終了後。
控室で、私は息を吐いた。
「……覚悟を決めましたね」
アンクレイブに言うと、彼は静かに答える。
「ああ」
そして、少しだけ声を落とす。
「公でも、私でも」
視線が、真っ直ぐに向けられる。
「私は、君を選び続ける」
条件はない。
期限もない。
それは、宣言だった。
「……重いですね」
私は、苦笑混じりに言う。
「逃げ場がありません」
「用意する気はない」
即答。
だが、その表情は穏やかだった。
「共に立つ覚悟は、あるか」
私は、一歩前に出る。
「最初から、そのつもりです」
答えは、もう決まっていた。
溺愛。
それは、感情の暴走ではない。
選び続けるという、覚悟の名前だ。
そしてそれは――
最終話で、完全な形になる。
その知らせは、朝一番に届いた。
「近隣三国の代表団が、本日中に到着予定です」
補佐官の報告に、私は頷いた。
「予定通り、合同協議ですね」
「ああ」
アンクレイブは短く答え、書類に目を落とす。
王都を介さない、
グラーツ公国主導の正式協議。
それ自体が、すでに時代の変化を示していた。
「今回の席順ですが」
補佐官が、少しだけ言いにくそうに続ける。
「公爵様単独ではなく、
公爵夫妻並列での出席を求められています」
私は、一瞬だけ目を瞬かせた。
(……ついに、来たわね)
象徴ではない。
同席でも、補佐でもない。
並列。
アンクレイブは、顔を上げる。
「問題ない」
即答だった。
「エリーカ」
こちらを見る。
「異議は?」
「ありません」
私も、即答した。
午後。
大広間は、厳粛な空気に包まれていた。
各国の代表が揃い、
視線が、一斉にこちらへ向く。
――公爵夫妻。
並んで歩く。
以前なら、
“白い結婚の形式的な夫婦”として見られていた。
だが今は違う。
誰の目にも、
意思を共有する対等な二人として映っている。
「本日の協議は、
グラーツ公国が主導する」
アンクレイブの声が、場を支配する。
「そして」
一拍、置く。
「私は、すべての判断を、
妻と共有した上で下す」
ざわり。
代表の一人が、思わず問いかけた。
「それは、今後も?」
「今後も、だ」
迷いはない。
「彼女は、私の妻であり、
この国の未来を共に選ぶ相手だ」
それは、政治的宣言であり、
同時に――個人的な覚悟だった。
私は、静かに言葉を継ぐ。
「私も同様です」
会場を見渡す。
「この国に関する決断は、
すべて責任を持って受け止めます」
逃げない。
隠れない。
ただ、並び立つ。
協議は、驚くほど円滑に進んだ。
意見は交わされ、
対立は調整され、
最終的な合意が形成されていく。
(……これが、今の私たち)
役割ではない。
依存でもない。
選び続ける関係。
協議終了後。
控室で、私は息を吐いた。
「……覚悟を決めましたね」
アンクレイブに言うと、彼は静かに答える。
「ああ」
そして、少しだけ声を落とす。
「公でも、私でも」
視線が、真っ直ぐに向けられる。
「私は、君を選び続ける」
条件はない。
期限もない。
それは、宣言だった。
「……重いですね」
私は、苦笑混じりに言う。
「逃げ場がありません」
「用意する気はない」
即答。
だが、その表情は穏やかだった。
「共に立つ覚悟は、あるか」
私は、一歩前に出る。
「最初から、そのつもりです」
答えは、もう決まっていた。
溺愛。
それは、感情の暴走ではない。
選び続けるという、覚悟の名前だ。
そしてそれは――
最終話で、完全な形になる。
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