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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
19)ユキ
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「ピィ!」
我が屋敷に新しい客が増えた。それも結構騒がしい。
「ピィー。ピィ。ピィ―!」
俺の目の前で毛玉が跳ねている。雛鳥には違いないが親の種類がわからない。
クラークが用意した鳥かごには入らず専らイブや俺にへばりついている。イブによると産まれた最初に見たイブを親だと認識してはいるが何故か俺にも懐いているのだという。
心当たりはある。イブが魔力枯渇で意識を失っているときに俺の魔力を分け与えていたからな。きっと馴染んだ魔力が俺から感じられるのだろう。
「こら。仕事の邪魔をするな」
俺の元へは毎日大量の書類が舞い込む。書類の上で転がる毛玉をどけようとして手を止めた。一点を見つめていたからだ。
「なんだ?文字が理解できるのか?」
まさかな。だが大きな目で何かを見つめている姿が気になり、その書類を手元にたぐり寄せた。
「作物の被害報告?」
農家からの陳情だ。今年は天候もよく作物には影響はでてないはずだが?東の地域の生育が悪いのか?丸い目がじっと俺を見る。
「……瘴気が関係しているというのか?」
「…………」
馬鹿げているよな。毛玉相手に話しかけるなんて。でもこいつはイブのチカラで産まれた。可能性がないわけじゃない。ならば動いてみるか。
「デニス。騎士団長を呼べ、それと偵察隊に東の地域を調べる様に伝えてくれ」
「はっ。かしこまりました」
デニスが居なくなるとまたピィピィ鳴きだす。
「うるさいぞ。邪魔をするなら追い出すぞ」
「ピィ?」
ころころ転がった毛玉が机から落ち、ポスンッと俺の膝の上に乗る。そのまま目を閉じてしまったようだ。
「寝たのか?……なあ、お前ひょっとして」
ドアのノックと同時にイブキがワゴンを運んできた。
「お茶をお持ちしました」
手慣れた様子でカップに茶を注いでいく。ずいぶんと上達したものだ。
「イブ、あまり無理をするなよ」
「だいぶ動けるようになりました。それにリハビリしていかないと」
「リハビリ?」
「はい。少しずつ身体を動かして以前と同じ状態に戻していくことです」
「なるほど」
イブは神殿での判定から少し雰囲気が変わった。子供っぽさが少しずつ抜けてきた感じだ。少年から青年への過渡期なのだろうか。可愛らしさの中に精悍さも見えてきたようだ。
「ピィー!」
毛玉がぴょんぴょん跳ねてイブに近寄る。
「ユキ。やっぱりシドのところに居たんだね」
「ピィ」
「名前をつけたのか?」
「はい。この子は真っ白なのでユキと名付けました」
「ユキか。いい響きだな」
「シドの邪魔しちゃだめだよ。ユキおいで」
「ピィ」
イブキの手のひらに乗るとそのまま肩までよじ登る。イブキが名前を呼ぶたびに返事をしているところをみると自分の名前だと認識できているのか?
「では僕はこれで……」
どうも仕事以外では、イブキから避けられている気がする。前はもっと話しかけてきたのに。俺が何かしたのか?
「イブ。もう少しここに居てくれないか」
「……もう少しだけなら」
「ちょうど休憩しようかと思ってたのだ。茶を飲む間だけでも俺の相手をしてくれないか?」
「はい。そういうことなら」
どうやら嫌われてはいないようだ。イブは自分の分のお茶を淹れソファーに座る。
「茶を淹れるのが上手くなった。今日のは東洋の葉か?フルーティーな香りがするな」
「はい。香りづけに果物の皮を入れてあります」
「良い香りだ。仕事の合間の気分転換によさそうだ」
「……よかった」
ああ、やっと笑ってくれた。笑うと可愛らしさが倍増する。やはりイブキはこちらのほうがいい。
イブキを守るのは、計画のため――そう自分に言い聞かせてきた。だが、彼が倒れた瞬間、俺の胸を貫いたのは恐怖だった。こんな感情、俺には無縁のはずなのに。
我が屋敷に新しい客が増えた。それも結構騒がしい。
「ピィー。ピィ。ピィ―!」
俺の目の前で毛玉が跳ねている。雛鳥には違いないが親の種類がわからない。
クラークが用意した鳥かごには入らず専らイブや俺にへばりついている。イブによると産まれた最初に見たイブを親だと認識してはいるが何故か俺にも懐いているのだという。
心当たりはある。イブが魔力枯渇で意識を失っているときに俺の魔力を分け与えていたからな。きっと馴染んだ魔力が俺から感じられるのだろう。
「こら。仕事の邪魔をするな」
俺の元へは毎日大量の書類が舞い込む。書類の上で転がる毛玉をどけようとして手を止めた。一点を見つめていたからだ。
「なんだ?文字が理解できるのか?」
まさかな。だが大きな目で何かを見つめている姿が気になり、その書類を手元にたぐり寄せた。
「作物の被害報告?」
農家からの陳情だ。今年は天候もよく作物には影響はでてないはずだが?東の地域の生育が悪いのか?丸い目がじっと俺を見る。
「……瘴気が関係しているというのか?」
「…………」
馬鹿げているよな。毛玉相手に話しかけるなんて。でもこいつはイブのチカラで産まれた。可能性がないわけじゃない。ならば動いてみるか。
「デニス。騎士団長を呼べ、それと偵察隊に東の地域を調べる様に伝えてくれ」
「はっ。かしこまりました」
デニスが居なくなるとまたピィピィ鳴きだす。
「うるさいぞ。邪魔をするなら追い出すぞ」
「ピィ?」
ころころ転がった毛玉が机から落ち、ポスンッと俺の膝の上に乗る。そのまま目を閉じてしまったようだ。
「寝たのか?……なあ、お前ひょっとして」
ドアのノックと同時にイブキがワゴンを運んできた。
「お茶をお持ちしました」
手慣れた様子でカップに茶を注いでいく。ずいぶんと上達したものだ。
「イブ、あまり無理をするなよ」
「だいぶ動けるようになりました。それにリハビリしていかないと」
「リハビリ?」
「はい。少しずつ身体を動かして以前と同じ状態に戻していくことです」
「なるほど」
イブは神殿での判定から少し雰囲気が変わった。子供っぽさが少しずつ抜けてきた感じだ。少年から青年への過渡期なのだろうか。可愛らしさの中に精悍さも見えてきたようだ。
「ピィー!」
毛玉がぴょんぴょん跳ねてイブに近寄る。
「ユキ。やっぱりシドのところに居たんだね」
「ピィ」
「名前をつけたのか?」
「はい。この子は真っ白なのでユキと名付けました」
「ユキか。いい響きだな」
「シドの邪魔しちゃだめだよ。ユキおいで」
「ピィ」
イブキの手のひらに乗るとそのまま肩までよじ登る。イブキが名前を呼ぶたびに返事をしているところをみると自分の名前だと認識できているのか?
「では僕はこれで……」
どうも仕事以外では、イブキから避けられている気がする。前はもっと話しかけてきたのに。俺が何かしたのか?
「イブ。もう少しここに居てくれないか」
「……もう少しだけなら」
「ちょうど休憩しようかと思ってたのだ。茶を飲む間だけでも俺の相手をしてくれないか?」
「はい。そういうことなら」
どうやら嫌われてはいないようだ。イブは自分の分のお茶を淹れソファーに座る。
「茶を淹れるのが上手くなった。今日のは東洋の葉か?フルーティーな香りがするな」
「はい。香りづけに果物の皮を入れてあります」
「良い香りだ。仕事の合間の気分転換によさそうだ」
「……よかった」
ああ、やっと笑ってくれた。笑うと可愛らしさが倍増する。やはりイブキはこちらのほうがいい。
イブキを守るのは、計画のため――そう自分に言い聞かせてきた。だが、彼が倒れた瞬間、俺の胸を貫いたのは恐怖だった。こんな感情、俺には無縁のはずなのに。
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