30 / 99
・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
29)宿屋 sideイブキ
しおりを挟む
ファーストキスだったんだ。それなのに。いや、僕を助けようとしてくれた事には感謝している。相手がエルシドだった事もとても嬉しい。
エルシドを好きだと自覚してからは一緒に居るだけでテンションが上がる。かっこいいし優しいし頼りがいがある。日に日に好きという気持ちが大きくなるけれど、エルシドはそうじゃないのだろう。
キスされてるとわかった時は心臓が飛び出るかと思った。嬉しいのと恥ずかしいのと何故という疑問で頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだった。綺麗な青い瞳が僕の目の前にあって。エルシドの唇がしっとりと濡れていて。とっても艶っぽかった。
まさかエルシドも僕に好意を持ってくれてるのか?と期待しそうになった。でも……
彼は僕が魔力切れになるのを心配して自分の魔力を分けてくれていただけだったのだ。一瞬でも勘違いしそうになった自分が恥ずかしくってそこからはもう目が合わせられなくなってしまった。
身体がだるかったのはエルシドと一緒に出掛けられるというのが楽しみすぎて、昨夜はなかなか眠れなかったせいだ。そのまま瘴気の沼まで緊張しながらやって来た上に皇子との事があって一気に疲れが出てしまった。それをエルシドは魔力切れだと思い違いをしたのだろう。僕もはっきり言わなかったのが悪いんだけど。
エルシドとのキス。僕が寝込んでた時は毎日してくれていたのか。彼の唇が僕の……。
「ピィ!」
「わわわ!」
耳元で急に鳴き声がしてびっくりした。馬車の中での出来事を思い返していたのでユキが肩に登ってきているのに気付かなかった。
「ごめんごめん。起きたんだね?おはよう」
「ピィ?ピー?」
「ああ。ここかい?僕とユキの部屋だよ。今日は宿屋に泊まるんだ」
馬車が宿屋に着くまで結局二人とも無言のままだった。せっかくエルシドと二人っきりだったのに。何を言って良いのかわからなくなってしまったんだ。
それでも屋敷以外の場所で泊まるのは初めてで、ログハウス調の屋根が見えた時はワクワクした。僕が貴族が泊まる宿ではなく普通の宿屋に泊まりたいと希望したので、旅の宿のような場所を選んでくれたようだった。
魔道具らしい薄手のポンチョを羽織ると自動的に僕もエルシドも平民としか認識されなくなるらしい。
一階が食堂で二階が宿泊施設。僕とエルシドは隣同士の部屋だ。部屋にはシングルベットがひとつ。小さなテーブルとソファーがひとつ。ビジネスホテルくらいの広さと思えばいいのかな?でもこの世界にはテレビもスマホもない。
それで不便を感じるかと問われたらそうでもないと答えてしまう。デジタルや電動機器がない代わりに魔道具があるからだ。
「ピ!」
ユキがふるふると身体を震わすとふわりと浮いた。丸い体の左右からちょこっと羽のようなものが見え忙し気に動いている。
パタパタ……ぽて。ころん。
何今の?飛べるようになったってこと?今は転がっているけれど。
「凄いね!ユキ。飛べるんだね!」
「ピ!」
パタパタ……ぽて。
「ピィ?」
ユキが部屋の窓の方を見て首をかしげている。
「どうしたの?何が気になるの?」
窓辺に近寄るとリスもどきが見える。リスに似てるけど尻尾がふたつ生えている小動物だ。ふりふりと尻尾を振ってこちらを見ている。ユキが気になるのかもしれない。
エルシドを好きだと自覚してからは一緒に居るだけでテンションが上がる。かっこいいし優しいし頼りがいがある。日に日に好きという気持ちが大きくなるけれど、エルシドはそうじゃないのだろう。
キスされてるとわかった時は心臓が飛び出るかと思った。嬉しいのと恥ずかしいのと何故という疑問で頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだった。綺麗な青い瞳が僕の目の前にあって。エルシドの唇がしっとりと濡れていて。とっても艶っぽかった。
まさかエルシドも僕に好意を持ってくれてるのか?と期待しそうになった。でも……
彼は僕が魔力切れになるのを心配して自分の魔力を分けてくれていただけだったのだ。一瞬でも勘違いしそうになった自分が恥ずかしくってそこからはもう目が合わせられなくなってしまった。
身体がだるかったのはエルシドと一緒に出掛けられるというのが楽しみすぎて、昨夜はなかなか眠れなかったせいだ。そのまま瘴気の沼まで緊張しながらやって来た上に皇子との事があって一気に疲れが出てしまった。それをエルシドは魔力切れだと思い違いをしたのだろう。僕もはっきり言わなかったのが悪いんだけど。
エルシドとのキス。僕が寝込んでた時は毎日してくれていたのか。彼の唇が僕の……。
「ピィ!」
「わわわ!」
耳元で急に鳴き声がしてびっくりした。馬車の中での出来事を思い返していたのでユキが肩に登ってきているのに気付かなかった。
「ごめんごめん。起きたんだね?おはよう」
「ピィ?ピー?」
「ああ。ここかい?僕とユキの部屋だよ。今日は宿屋に泊まるんだ」
馬車が宿屋に着くまで結局二人とも無言のままだった。せっかくエルシドと二人っきりだったのに。何を言って良いのかわからなくなってしまったんだ。
それでも屋敷以外の場所で泊まるのは初めてで、ログハウス調の屋根が見えた時はワクワクした。僕が貴族が泊まる宿ではなく普通の宿屋に泊まりたいと希望したので、旅の宿のような場所を選んでくれたようだった。
魔道具らしい薄手のポンチョを羽織ると自動的に僕もエルシドも平民としか認識されなくなるらしい。
一階が食堂で二階が宿泊施設。僕とエルシドは隣同士の部屋だ。部屋にはシングルベットがひとつ。小さなテーブルとソファーがひとつ。ビジネスホテルくらいの広さと思えばいいのかな?でもこの世界にはテレビもスマホもない。
それで不便を感じるかと問われたらそうでもないと答えてしまう。デジタルや電動機器がない代わりに魔道具があるからだ。
「ピ!」
ユキがふるふると身体を震わすとふわりと浮いた。丸い体の左右からちょこっと羽のようなものが見え忙し気に動いている。
パタパタ……ぽて。ころん。
何今の?飛べるようになったってこと?今は転がっているけれど。
「凄いね!ユキ。飛べるんだね!」
「ピ!」
パタパタ……ぽて。
「ピィ?」
ユキが部屋の窓の方を見て首をかしげている。
「どうしたの?何が気になるの?」
窓辺に近寄るとリスもどきが見える。リスに似てるけど尻尾がふたつ生えている小動物だ。ふりふりと尻尾を振ってこちらを見ている。ユキが気になるのかもしれない。
377
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】あなたのいない、この異世界で。
Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」
最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。
そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。
亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。
「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」
ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。
彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。
悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。
※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。
ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる