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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
36)ウォルフ sideイブキ
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馬車はここまでということで僕はまたエルシドの馬に相乗りさせてもらっている。
昨日の泉から少し離れた場所に小さな森があった。静かすぎる気がする。馬を降りるとユキが僕の懐から出て来てエルシドに向かってぱたぱたと飛び出した。団長の目がそれを凝視している。ほんの20~30センチほど飛んだだけだが、朝よりも上手に飛べてる様に思える。
「ユキが飛んでいる」
「鳥だから飛ぶだろうよ」
「だが、こんなにも小さいのだぞ!」
「小さくてもオウルだ。叡智の王を馬鹿にするんじゃないぞ」
「なぜエルシドにも慣れているのだ。お前の肩にも乗るなんて」
「慣れたらお前の肩にも乗るんじゃないのか?」
「ほんとか!慣れるまでエルシドの元に通い続ける」
「やめてくれ。お前はお前の仕事をしろ!」
二人のやりとりを聞いているだけで楽しくなる。喧嘩するほど仲が良いって言うけれど。この二人はいいコンビなんだな。
森の奥は薄暗かった。ここまで瘴気の影響が出ていたのかもしれない。そうか、この辺りに出ていた魔獣って瘴気に侵されたこの森の動物達だったのかもしれない。
グルル……。
唸り声だ。僕らに来るなと威嚇しているみたいだ。
「いるな」
団長さんが剣を抜くと辺りが明るくなった。きっと由緒ある代物なのだろう。
「団長、待て。様子を見るんだ」
「わかった。イブ、声をかけてみてくれ」
「僕らは悪い者じゃないよ。近づいてもいいかい?」
「ピィ!」
ユキの鳴き声に反応したようで警戒感が薄まった気がした。団長が鬱蒼とした枝を切り視界を広げると、そこには青い犬がいた。違う、これは狼だ。辺りには黒い死骸が散らばっている。
「……ウォルフだ」
「この子はこの森の主でしょうか?仲間を守るために魔獣と戦ったのかもしれません」
「瘴気にも少し侵されてるようだな」
後ろ足が少し黒ずんでいた。僕は迷わず駆け寄る。ウォルフはもう威嚇することもなかった。
「イブ、気を付けるんだぞ」
「わかっています。でも助けたいんだ」
いつのまにか僕らの周りには動物たちが集まってきていた。皆心配していたのだろう。
「キミは仲間を守るために戦ったんだね?偉いよ。本当に勇敢な戦士だ」
僕が撫でると目を細めた。だが傷がかなり深そうだ。どうしてここには手術道具がないんだ!悔しい。でも僕の未熟な腕ではこんなに酷い怪我は治せないかもしれない。
「イブ、昨日の事を思い出せ。皇子に教えた通りにやってみるんだ」
「昨日の?そうか、手に力を集めてみる!」
エルシドに言われた通りに。どうか治りますようにと願いを込めて僕はウォルフに手のひらを当て続けた。白い光が手の周りに現れる。傷がどんどん塞がっていく。同時に身体のチカラが吸い取られる感じがする。
「クゥン」
ウォルフが僕の手を舐める。くすぐったい。後ろ足の黒ずみも消えている。もう大丈夫かな?さっきは必死だったからわからなかったけど。ウォルフは綺麗な毛並みだった。
「もふもふだね。ふふ。いいこだ」
わしゃわしゃと顎の下や耳の後ろを撫でまわしてやる。ふわふわの尻尾が揺れているところを見ると気持ち良いんだな。とても賢そうな顔立ちだ。
団長さんが僕のすぐ隣にしゃがみこんだ。大きい体を丸める様にしてウォルフを見つめている。
「俺が触っても怖がらないだろうか」
「クゥ……」
ウォルフが、目の前でごろりと寝ころんだ。お腹を見せてくれるなんて。警戒を解いてくれている証だ。
「いいみたいですよ。優しく撫でてやってください」
「そ、そうか。では……」
団長さんは確かめる様にゆっくりと撫でていた。尻尾が揺れている。ウォルフと団長さんは相性が良いのかもしれない。
「ウォルフは俺の守護獣なのだ」
そういえば団長さんのミドルネームはウォルフだった。
「自分の守護獣に会えるのは稀なんだよ。一生かかっても会えない場合の方が多いのだ」
エルシドが後ろから僕の頭を撫でる。また子供扱いしているな。
「イブのおかげだ」
「僕は何もしていませんよ」
「動物を惹きつけ、癒やすこともできるなんて。これがイブのチカラだと俺は思うぞ」
「僕のチカラ?それってもふもふ達と仲良くなれるチカラってことでしょうか?あんまり強くなさそうですね」
「ははは。強さは俺がいるではないか!」
「そうだな。賢さは俺かな?」
「エルシド。自分で賢いと驕り高ぶる人間にロクな者はいないぞ」
「お前なあ、そこはそうだねでいいんじゃねえのか」
「ふふふ」
やっぱりこの二人のやり取りは面白い。それにエルシドが僕にもチカラがあると言ってくれた。
じゃあ、もう僕はモブじゃない?嬉しい。じんわりと胸に暖かいものが広がる。
帰路の途中でエルシドが頬を撫でてきた。
「疲れてはいないか?チカラを使うという事は体内の魔力を使うという事だ。休めば徐々に復活するが無理はいけない。使うたびに自然と身体が覚えていくようになるからな」
「はい。もう倒れるようにな事はしません」
「ああ。帰ったらクラークに相談して少しづつ練習すればいい」
「はい。やってみます」
「でもまあ、たまに倒れてくれてもかまわないんだがな」
魔力譲渡の事を言ってるんだな?自分の顔が熱くなっていくのがわかる。
「からかわないでください!」
くくく。と僕の耳元で笑う。もう、人の気も知らないで!
昨日の泉から少し離れた場所に小さな森があった。静かすぎる気がする。馬を降りるとユキが僕の懐から出て来てエルシドに向かってぱたぱたと飛び出した。団長の目がそれを凝視している。ほんの20~30センチほど飛んだだけだが、朝よりも上手に飛べてる様に思える。
「ユキが飛んでいる」
「鳥だから飛ぶだろうよ」
「だが、こんなにも小さいのだぞ!」
「小さくてもオウルだ。叡智の王を馬鹿にするんじゃないぞ」
「なぜエルシドにも慣れているのだ。お前の肩にも乗るなんて」
「慣れたらお前の肩にも乗るんじゃないのか?」
「ほんとか!慣れるまでエルシドの元に通い続ける」
「やめてくれ。お前はお前の仕事をしろ!」
二人のやりとりを聞いているだけで楽しくなる。喧嘩するほど仲が良いって言うけれど。この二人はいいコンビなんだな。
森の奥は薄暗かった。ここまで瘴気の影響が出ていたのかもしれない。そうか、この辺りに出ていた魔獣って瘴気に侵されたこの森の動物達だったのかもしれない。
グルル……。
唸り声だ。僕らに来るなと威嚇しているみたいだ。
「いるな」
団長さんが剣を抜くと辺りが明るくなった。きっと由緒ある代物なのだろう。
「団長、待て。様子を見るんだ」
「わかった。イブ、声をかけてみてくれ」
「僕らは悪い者じゃないよ。近づいてもいいかい?」
「ピィ!」
ユキの鳴き声に反応したようで警戒感が薄まった気がした。団長が鬱蒼とした枝を切り視界を広げると、そこには青い犬がいた。違う、これは狼だ。辺りには黒い死骸が散らばっている。
「……ウォルフだ」
「この子はこの森の主でしょうか?仲間を守るために魔獣と戦ったのかもしれません」
「瘴気にも少し侵されてるようだな」
後ろ足が少し黒ずんでいた。僕は迷わず駆け寄る。ウォルフはもう威嚇することもなかった。
「イブ、気を付けるんだぞ」
「わかっています。でも助けたいんだ」
いつのまにか僕らの周りには動物たちが集まってきていた。皆心配していたのだろう。
「キミは仲間を守るために戦ったんだね?偉いよ。本当に勇敢な戦士だ」
僕が撫でると目を細めた。だが傷がかなり深そうだ。どうしてここには手術道具がないんだ!悔しい。でも僕の未熟な腕ではこんなに酷い怪我は治せないかもしれない。
「イブ、昨日の事を思い出せ。皇子に教えた通りにやってみるんだ」
「昨日の?そうか、手に力を集めてみる!」
エルシドに言われた通りに。どうか治りますようにと願いを込めて僕はウォルフに手のひらを当て続けた。白い光が手の周りに現れる。傷がどんどん塞がっていく。同時に身体のチカラが吸い取られる感じがする。
「クゥン」
ウォルフが僕の手を舐める。くすぐったい。後ろ足の黒ずみも消えている。もう大丈夫かな?さっきは必死だったからわからなかったけど。ウォルフは綺麗な毛並みだった。
「もふもふだね。ふふ。いいこだ」
わしゃわしゃと顎の下や耳の後ろを撫でまわしてやる。ふわふわの尻尾が揺れているところを見ると気持ち良いんだな。とても賢そうな顔立ちだ。
団長さんが僕のすぐ隣にしゃがみこんだ。大きい体を丸める様にしてウォルフを見つめている。
「俺が触っても怖がらないだろうか」
「クゥ……」
ウォルフが、目の前でごろりと寝ころんだ。お腹を見せてくれるなんて。警戒を解いてくれている証だ。
「いいみたいですよ。優しく撫でてやってください」
「そ、そうか。では……」
団長さんは確かめる様にゆっくりと撫でていた。尻尾が揺れている。ウォルフと団長さんは相性が良いのかもしれない。
「ウォルフは俺の守護獣なのだ」
そういえば団長さんのミドルネームはウォルフだった。
「自分の守護獣に会えるのは稀なんだよ。一生かかっても会えない場合の方が多いのだ」
エルシドが後ろから僕の頭を撫でる。また子供扱いしているな。
「イブのおかげだ」
「僕は何もしていませんよ」
「動物を惹きつけ、癒やすこともできるなんて。これがイブのチカラだと俺は思うぞ」
「僕のチカラ?それってもふもふ達と仲良くなれるチカラってことでしょうか?あんまり強くなさそうですね」
「ははは。強さは俺がいるではないか!」
「そうだな。賢さは俺かな?」
「エルシド。自分で賢いと驕り高ぶる人間にロクな者はいないぞ」
「お前なあ、そこはそうだねでいいんじゃねえのか」
「ふふふ」
やっぱりこの二人のやり取りは面白い。それにエルシドが僕にもチカラがあると言ってくれた。
じゃあ、もう僕はモブじゃない?嬉しい。じんわりと胸に暖かいものが広がる。
帰路の途中でエルシドが頬を撫でてきた。
「疲れてはいないか?チカラを使うという事は体内の魔力を使うという事だ。休めば徐々に復活するが無理はいけない。使うたびに自然と身体が覚えていくようになるからな」
「はい。もう倒れるようにな事はしません」
「ああ。帰ったらクラークに相談して少しづつ練習すればいい」
「はい。やってみます」
「でもまあ、たまに倒れてくれてもかまわないんだがな」
魔力譲渡の事を言ってるんだな?自分の顔が熱くなっていくのがわかる。
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