ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星

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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する

38)小さなエルシド sideイブキ

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「ところでそれはなんだ?」
 それって僕の肩に乗っているユキの事だな?興味津々って感じだな。この子、動物が好きなのかな?

「オウルの雛だよ」
 
「すごい!イブキが飼っているのか?」
「そうなのかな?飼っているというより、友達みたいな感じかな?」

「オウルと友達になれるのか?」
「慣れたらラインフェルトとも友達になれると思うよ」

「本当か?ぼくの守護獣はオウルなのだ!」
 ああ、やっぱりエルシドの血縁なんだな。お子さんが居るなんて誰も教えてくれなかったのに。いや、僕が聞かなかったからかな。屋敷の皆は僕の問いかけには必ず答えてくれる。皆良い人だばかりだ。


「ピィーピィ」

「わあ。鳴くんだ。可愛いな」
 ユキの仕草を見て急に幼い口調になる。その方が年相応にみえる。笑顔が可愛い。

「ねえ、ラインフェルトの話し方って貴族の話し方なの?」
「そうだ。ぼくはブラッドフォード家の跡取りだからな」

「……そうなんだね」
「そうだ!ぼくは父様以上の男にならないといけないのだ!」
「そうか。頑張ってね」
 相手は自分よりも年下の男の子なのに。胸の奥がチリチリする。見れば見るほどエルシドそっくりだ。でもなぜ同じ屋敷に住まないのだろうか?奥さんはどこにいるのだろう?


「ピィ?」

「ふふ。今首をまげた?ぼくの顔をじっと見てるよ!」
 きっとユキは不思議なのだろう。エルシドが小さくなったと思っているのかもしれない。


 ぱたぱた……。

 ユキが僕から離れてラインフェルトの肩に乗る。初対面の人に自分から行くなんて珍しい。

「わああ。見てイブキ!僕の肩に乗ったよ!」
「……暴れないで。大人しくしていたらユキは乗っていてくれるよ」
「ユキって言う名前なの?おいでユキ。かわいいなあ」

「ピィ―ピピ―」

 ユキがこの子を気に入ったみたいだ。なんだか僕の手からこの子にすべてが移っていくようで怖くなった。喪失感なのか。嫉妬なのか。この小さな男の子はユキさえも魅了するのか?エルシドも可愛がっているのだろうか?

「ユキはまだ子供なのかな?」
「そうだね。僕が育ててるって感じかな?」

「そうなんだ……ユキは傍に育ててくれる人がいてくれていいね」

 え?そうか。この子、寄宿学校って言っていた。じゃあ親元であまり暮らしたことがないのかもしれない。横顔が寂しそうに見える。この表情。ときどきエルシドが見せる表情と似ている。


「友達に……なろうか?」
「本当に?いいの?」
「ああ。僕でよければ」
 思わず言ってしまっていた。なんだかほおっておけない気がしたからだ。

「ありがとう。イブキからは他の大人たちのような嫌な感じがしない。ユキもいるし友達になってくれて嬉しい」

 この子は貴族社会の中で生きているんだなと感じた。子供から取り込もうとする相手もいるのだろう。それを子供なりに敏感にかぎ取っているのかもしれない。



「坊ちゃま!どこですか?」
「ここだ!すぐに行く!」
 女性の声にラインフェルトが僕を雑草の奥に追いやる。

「どうしたの?」
「メイド長のドロレスだよ。見つかったら面倒だから今日はもう帰って!」

「わかった」
「あ、待って。……明日も来てくれる?」
「うん。じゃあこの時間に」
「うん。僕は明日迄ここにいるよ。明日また来てね」



 石畳を抜けるとクルトが半べそをかきながらやってきた。僕のことを探していたんだろう。 

「イブ!よかった。どこに行ってたんだよぉ」
「ごめん、ごめん。ちょっと迷子になっちゃってさ」

「もぉ!部屋を出る時はぼくを連れて行ってよ!エルシド様に怒られちゃう」
「わかった、わかった。ごめんよ」



 エルシドや屋敷の皆が僕に敷地内から出てはいけないって言っていたのはこういう事だったのだろうか。この屋敷の隣とラインフェルトの屋敷が繋がっているなんて。

 エルシドは結婚していないと聞いていたから側室の屋敷?なのか?子供もいるのに?貴族だから?……このもやもやした気持ちを誰に相談したらいいのだろうか?

「団長さん来ないかな」
 あれから団長さんは時間を見つけては東の森に通っているらしい。自分の守護獣がいるんだものな。僕やユキに会うよりはそちらに行ってしまうのだろう。

「ピィ?」
 ユキが心配そうに僕を覗き込む。

「大丈夫だよ。ちょっと考え事していただけ」

 本人に直接聞くべきだろうか。


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