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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
43)予感
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「エルシド様。騎士団長殿からのお手紙がきております」
「ああ。またウォルフの話しだろう」
団長はあれから合間を縫っては東の森に通い詰めになっている。己の守護獣を俺と同じように手懐けたいらしい。最初の頃はイブを一緒に連れて行きたがったが、俺が断固として反対した。
ユキにも会いたいらしいが俺が居ない時に勝手に屋敷にはいるなと忠告もしてある。
「ところでデニス。イブキの元に戻っておいてくれないか」
無断で出歩かない様にと言い聞かせてきたがどれだけ理解してくれたか不安は残る。
「いえ。最近妙な動きが出て来てますので、私はエルシド様の傍におります。イブ様の事はクラーク殿に全面警護をお願いしたので大事にはならぬかと」
そのクラークに任せておいた為に、イブは別邸を知ってしまった。わざとだろうな。俺がイブに汚い部分を見せずにおこうとしているのを良しとしなかったのだろう。あいつは有能だが俺と同等に癖がある。だからこそ俺の手元に入れ込んだのだがな。
「数日前にご自身が襲われかけたことをお忘れではないでしょうね」
そうなのだ。デニスが俺の警護を優先しだしたのはそのせいだった。王宮に向かう途中にて俺は刺客に襲われた。もちろん返り討ちにしてやったが誰の手先か尋ねる前に自害をしてしまった。
「忘れてはいないさ。いよいよ動き出したのかといった感じさ」
アーベルの即位式は三か月後だ。この辺りで第一王子の残党共が何かやらかしてくるとは思っていた。
「俺よりも警戒するのは王太子だろうさ」
「いいえ。向こうも気づいているはずです。すべてにおいての策略はエルシド様の案だと」
「俺がいなくなればあの王太子が弱体化すると思っているのか?」
むしろ反撃にでるだろうな。あいつも俺と同様に揉まれてきた身だ。そんなやわな奴ではない。
「やはり、俺が屋敷に居た方がお前も警護しやすいか?」
「はい。お考えがあって出歩かれているのでしょうが、危険な状況を招いていることはご存じですよね?」
「お前最近クラークに似て来たな!」
「ご自身を囮にするなんて滑稽すぎます」
「わかっているなら口を出すなよ」
「イブ様が悲しまれます」
「……善処する」
デニスがふいに剣を身構えた。いつの間にか部屋の隅に黒装束の男が居る。
「エルシド様」
「タフォスか。何かあったのか?」
タフォスは俺の影だ。学生時代に市井の不正を暴いていた時に知り合った仲間のひとりだ。その頃は家にも帰らず市井の高級娼館が俺の寝床だった。そこで寝物語にいろんな情報を得ていた。下級貴族たちの汚職や賄賂。自分が生きていた世界の闇の部分を知る事になった場所でもある。貴族に嫌気がさして賭け事で儲けた金は市井の皆で飲み食いしていた。一時はもう平民になっても良いとさえ思っていたものだ。
タフォスは当時、義賊として悪名高い貴族の屋敷に盗みに入っていた。俺とは共闘していたのだ。俺が命を救い、足を洗わせてからは俺のしもべとして働いてくれている。今は神官ハロルドとの連絡係として動いてくれているのだった。
「くく。神官長め、皇子に手を焼いてるみたいだな」
タフォスから受け取った手紙には皇子は自分の側近にハロルドを加えないと浄化に出ないと暴れたらしい。デニスにもハロルドからの手紙をみせる。
「皇子は神官長のいう事を聞かないようですね」
「そうらしいな。良いことだ」
イブと同じように他世界から来たせいか、この世界の歪さを感じ取り常識とされている事に対して疑問を持ってくれているのだろう。
更に手紙には皇子は神官長お抱えの魔導士モーガンの魔法具を使用していると書かれていた。
「タフォス。このモーガンの事を調べてくれ」
「かしこまりました」
さきほど受け取った団長からの手紙も確認してみる。ウォルフの事かと思っていたが、こちらも皇子の浄化の件だった。浄化の際には必ず皇子は怪しげな魔道具を使うとあった。
「ハロルドの報告と同じ内容だな」
団長が言うにはイブと同行時に現れた美しい浄化の仕方ではなく、瘴気だけが消えてしまうという。
瘴気だけが消えてしまうというのはどういう事なのだろうか?
「なるほど……。これは厄介な事になりそうだな」
俺の推測は正しかったのかもしれない。
「ああ。またウォルフの話しだろう」
団長はあれから合間を縫っては東の森に通い詰めになっている。己の守護獣を俺と同じように手懐けたいらしい。最初の頃はイブを一緒に連れて行きたがったが、俺が断固として反対した。
ユキにも会いたいらしいが俺が居ない時に勝手に屋敷にはいるなと忠告もしてある。
「ところでデニス。イブキの元に戻っておいてくれないか」
無断で出歩かない様にと言い聞かせてきたがどれだけ理解してくれたか不安は残る。
「いえ。最近妙な動きが出て来てますので、私はエルシド様の傍におります。イブ様の事はクラーク殿に全面警護をお願いしたので大事にはならぬかと」
そのクラークに任せておいた為に、イブは別邸を知ってしまった。わざとだろうな。俺がイブに汚い部分を見せずにおこうとしているのを良しとしなかったのだろう。あいつは有能だが俺と同等に癖がある。だからこそ俺の手元に入れ込んだのだがな。
「数日前にご自身が襲われかけたことをお忘れではないでしょうね」
そうなのだ。デニスが俺の警護を優先しだしたのはそのせいだった。王宮に向かう途中にて俺は刺客に襲われた。もちろん返り討ちにしてやったが誰の手先か尋ねる前に自害をしてしまった。
「忘れてはいないさ。いよいよ動き出したのかといった感じさ」
アーベルの即位式は三か月後だ。この辺りで第一王子の残党共が何かやらかしてくるとは思っていた。
「俺よりも警戒するのは王太子だろうさ」
「いいえ。向こうも気づいているはずです。すべてにおいての策略はエルシド様の案だと」
「俺がいなくなればあの王太子が弱体化すると思っているのか?」
むしろ反撃にでるだろうな。あいつも俺と同様に揉まれてきた身だ。そんなやわな奴ではない。
「やはり、俺が屋敷に居た方がお前も警護しやすいか?」
「はい。お考えがあって出歩かれているのでしょうが、危険な状況を招いていることはご存じですよね?」
「お前最近クラークに似て来たな!」
「ご自身を囮にするなんて滑稽すぎます」
「わかっているなら口を出すなよ」
「イブ様が悲しまれます」
「……善処する」
デニスがふいに剣を身構えた。いつの間にか部屋の隅に黒装束の男が居る。
「エルシド様」
「タフォスか。何かあったのか?」
タフォスは俺の影だ。学生時代に市井の不正を暴いていた時に知り合った仲間のひとりだ。その頃は家にも帰らず市井の高級娼館が俺の寝床だった。そこで寝物語にいろんな情報を得ていた。下級貴族たちの汚職や賄賂。自分が生きていた世界の闇の部分を知る事になった場所でもある。貴族に嫌気がさして賭け事で儲けた金は市井の皆で飲み食いしていた。一時はもう平民になっても良いとさえ思っていたものだ。
タフォスは当時、義賊として悪名高い貴族の屋敷に盗みに入っていた。俺とは共闘していたのだ。俺が命を救い、足を洗わせてからは俺のしもべとして働いてくれている。今は神官ハロルドとの連絡係として動いてくれているのだった。
「くく。神官長め、皇子に手を焼いてるみたいだな」
タフォスから受け取った手紙には皇子は自分の側近にハロルドを加えないと浄化に出ないと暴れたらしい。デニスにもハロルドからの手紙をみせる。
「皇子は神官長のいう事を聞かないようですね」
「そうらしいな。良いことだ」
イブと同じように他世界から来たせいか、この世界の歪さを感じ取り常識とされている事に対して疑問を持ってくれているのだろう。
更に手紙には皇子は神官長お抱えの魔導士モーガンの魔法具を使用していると書かれていた。
「タフォス。このモーガンの事を調べてくれ」
「かしこまりました」
さきほど受け取った団長からの手紙も確認してみる。ウォルフの事かと思っていたが、こちらも皇子の浄化の件だった。浄化の際には必ず皇子は怪しげな魔道具を使うとあった。
「ハロルドの報告と同じ内容だな」
団長が言うにはイブと同行時に現れた美しい浄化の仕方ではなく、瘴気だけが消えてしまうという。
瘴気だけが消えてしまうというのはどういう事なのだろうか?
「なるほど……。これは厄介な事になりそうだな」
俺の推測は正しかったのかもしれない。
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