ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星

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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する

59)光る人 sideイブキ

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 「一颯いぶき。ありがとう。あの子を守ってくれて。貴方にはあの子が必要。あの子の心を守るには貴方が必要なのです」

 優しい声がする。ぼんやりと白く光る人がいる。頭の中に語りかけてくるようだ。あなたはだれ?
 穏やかに笑う綺麗な人は少しだけエルシドに似ている気がする。エルシドのご先祖様なの?

 光る人がほほ笑みながら僕の頬を撫でた。この撫で方はエルシドにそっくりだ。

 「貴方がこちらに来てくれたのは運命の導きだったのでしょう。私はあの子が産まれた時から見ています。あの子は歴代の中でも最も力が強い。それなのにあの子の心は欠けてしまっているのです。そしてあの子の欠けているモノを持つ者が貴方なのです」

 あの子って誰の事?エルシドなの?白く光る背後に羽が見える。あなたはオウルなの?ブラッドフォード家を守護する女神様?

 「ユキはもう少し貴方の傍に居たいようです」
 
 ユキの事も知っているの?ユキは僕のたいせつな友達です。

 「ええ。卵を見つけてくれてありがとう。あの子達をよろしくね」


◇◆◇

 ざわざわと音が聞こえてくる。何かを運ぶ音。話し声。聞いたことがある声。意識が浮上していく。今のは夢だったのか?

「ケガ人はこちらへ。ええ。治癒に料金は必要ありませんよ」
「瘴気を浴びてしまった方はこちらに。俺が浄化します」

 そうだこれはハロルドとセイヤだ。僕は何か暖かいものに包まれている。この暖かさを僕は知っている。

「イブ?気がついたか?」
 ああ。一番聞きたい人の声だ。
「……シド。……大丈夫?」
 エルシドが無事でよかった。あの時咄嗟に口づけをした。魔力を譲渡できるなら、その作用を反転すれば僕の身体に瘴気を移すことができるのではと思ったのだ。

「お前というやつは……俺なんかよりも自分の身体の事を心配しろ!」
 力強く抱きしめられる。そうだ、この暖かさにずっと包まれていた。シドが僕を抱きしめていてくれたんだね。
「ごめんなさい。でもシドを助けたかったんだ」
「イブ。その気持ちは嬉しい。だがもう無茶な事はしないでくれ」
 それは出来ないよ。きっとまた同じような事があれば僕は自分よりもエルシドの事を優先してしまうだろう。

「ここは?」
「神殿の中だ。俺が想定したよりも被害が出てしまった。王宮から神殿にたどり着くまでにかなりの瘴気がばら撒かれたようだ」
 僕がいる場所からは青空が見えた。白亜の神殿は魔神のせいで一部崩れてしまっていた。

「ピィ」
 毛玉がエルシドの肩に乗っていた。あれ?確か大きくなっていたはずなのに?
「ユキはイブを浄化するとまた元の大きさになってしまったんだ」
「それって。僕を助けるためにチカラを使っちゃったからなの?」
「ピィピ」
 かまわないよって言ってるみたい。また手のひらに乗るくらいまで縮んでしまっていた。
「でもせっかく成鳥になれたのに。僕の為にごめんよユキ」
「ユキはこのくらいの大きさの方がいいさ。連れて歩きやすいだろ?」
「ピィ」
 ユキごめんね。ありがとう。


「……瘴気はなくなったの?モーガンはどうなったの?」
「消えてなくなったのさ。瘴気に飲まれてしまったのかもしれない」
 瘴気に侵されたから?人である事を手放してしまったから?何があったのかはわからない。彼のしたことに同情は出来ない。でもなんだか虚しい。

「イブ。お前が気にやむことはない」
 シドの手が僕の頬を撫でる。そうだ僕にはこの手があればいい。

「さようでございますよ。それより手伝っていただけますか?」
「クラークさん?来てくれたんですか」 
 美味しそうな匂いがする。クラークさんが食事を運んできてくれていた。皆休みなく動いていたはずだ。疲れている時には美味しいものを食べるのが一番だ。
「僕も手伝います……」

 立ち上がろうとする僕をエルシドが離さない。
「シド?」
「まだだ。イブは今まで気を失っていたんだ。もう少し俺とこうしていろ」
 心配してくれているんだね?抱きしめてくれるのは嬉しい。だけど皆が生ぬるい目で見ているのが恥ずかしい。
「も、もう動けますよ」
「クラーク。イブの分も持って来い」

「おやおや。赤ちゃん返りですか?」
「はあ?誰が赤ちゃんだと!」
「駄々をこねてる様にしか見えませんよ。イブ様の浄化はすでに終わっていると聞いております。ユキの浄化の後に皇子様にもハロルド様にも治癒を行ってもらったと。エルシド様がうるさく言うから厳重にされたと聞いておりますが?」

「え?そうなんですか?」
「…………余計な事は言うな」
「イブ様はそのまま休んでいらして結構ですよ。エルシド様、運んでもらえますよね?」
「くそ。ユキ、イブを守っていてくれ」

「ピィピ」
 ユキが僕の元にぱたぱたと飛んできた。いつの間にエルシドとユキの連携がうまく取れるようになったんだろう。

 その後、僕は初めてエルシドの給仕姿を見た。メイド用のエプロンを着せられて開き直ったエルシドは皆にスープとパンを配っていた。黙ってツンとしたエルシドは綺麗なおねえさんみたいだった。

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