ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星

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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する

番外編 休暇をとろう* その4*

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「少し飲んでみるか?」
 エルシドが果樹酒をもってきた。水で少し薄めてくれたみたいだ。
「でもそれ、クラークさんのじゃないんですか?」
「俺たちと飲むつもりで持ってきたんだろう。少しぐらい減っても大丈夫さ」
 そう言うなり、エルシドは先に飲み始めた。本当に良いのかなあ。
「甘いな。飲みやすいぞ。ほら」
 手渡されて香りをかいでみる。確かにフルーティな香りがする。それに綺麗な赤茶色だ。ベリー系の果樹だろうか?クラークさんの手作りだ。美味しくないはずはない。

「いただきます」
 一口飲むと甘い香りが鼻から抜ける。甘酸っぱい味が喉を通るときに少し熱く感じるのはアルコールだからだろう。
「美味しい。飲みやすいしお酒じゃないみたい」
「くく。そうだろ?遠慮せずもっと飲め」
「はい。さすがはクラークさん。お酒もこんなに美味しくできるなんて」
「まあな。手先が器用な奴だからな」
 エルシドが褒めてたってクラークさんに伝えなきゃ。



「だからあ、ジゴロってなんなんですか!」
「酔うのが早いな。相変わらず酒が弱いな。絶対俺以外の前で飲むなよ」
「酔ってませんよ!ごまかさないでください。ジゴロってなんですか?」
「わかったって。お前に隠し事する気はねえよ。昔、何もかも嫌で家を飛び出していた時期があってな。その時にいろいろと市井を転々としていたことがあったんだ。その時の話しさ」
「それで?ジゴロってなんですか?」
「お前同じことばっかり聞いてるってわかってるのか?」

「だって肝心な事言ってくれないじゃないですか?女の人と住んでたんですか?」
「それはだなあ。そうといえばそうだし違うと言えば違うな」
「どっちなんですか!」
「ん~。娼館に住んでたんだ。勘違いするなよ。用心棒としてだからな」
「用心棒?」
「そうだ。女性ばかりの場所だからな。何人か用心棒がいたんだよ。その中の一人だったってだけさ」
 娼館ってつまりは、女の人とそういう事をする場所だよね?そこに住んでたの?

「うそだ!シドはかっこいいもの。絶対、女の人がほおっておかないじゃん!エルシドの浮気者ー!」
「何を言ってる。俺ほどお前を愛している者はいないというのに」
 隣に座るエルシドが僕の腰を引き寄せる。耳元で囁くなんてズルすぎる。にやにやした顔で嬉しそうにしているから絶対に僕をからかっているんだ。
 
「そ、そんな甘い言葉でごまかされないです」
「悲しいなあ。本心だというのに」
「もう!嘘つきっ。シドなんか!」
 逞しい腕の中でじたばたと暴れてみるが、僕が暴れるほど強く抱きしめてくる。悔しいけどエルシドから逃れそうにない。 

「イブ。俺がどれだけお前の事を愛しているかその体に教え込まないとだめみたいだな」
「……シド……」
 エルシドの手がシャツの隙間から入ってくる。背中を直に撫でまわされ、悩まし気に顔を寄せられると自然に身体から力抜けてしまう。間近で青い瞳に見つめられると胸が高まる。この美しくて蠱惑な目に翻弄され惑わせられてばかりだ。整いすぎた綺麗な顔立ちに思わず見惚れてると、銀髪がさらりと額にかかる。夜空にかかる月の精みたいだ。

 口づけを交わすと甘い吐息が出てしまう。エルシドにキスをされるのが気持ちイイ。他の事が考えれなくなってしまう。自分からも舌を絡めていくとエルシドが嬉しそうに目を細める。喜んでくれてると思うとこっちまで嬉しくなる。

「せっかくだからソファじゃなくベットに行こうな」
 くったりと力が入らなくなった僕を横抱きにして、鼻歌混じりにエルシドが階段を上っていく。
「……シド?……嬉しいの?」
「嬉しいさ。俺に抱かれるのを期待してくれてるのがな」
 期待してるって?そりゃあするでしょ?ん?あれ?ベットの上?さっきまでソファに座っていたのに?次第に記憶が鮮明になっていく。

 エルシドの手が僕の股間に降りてくる。触られてすでに勃ち上がっている自分自身を思い知らされる。
「ぁん!……っ……あぁっ……シド」
 エルシドの手が動くと快感が走る。前も後ろも濡れた音をたてていた。
「や……シドぉ」
「可愛いなあ。俺の過去にまで妬いてくれるなんて。過去は過去だ。しがらみよりも俺にはお前という現実が大事だ。いや、俺をここに留まらせているのはイブキ。お前なんだ。お前の為なら俺はきっと贖罪さえもぶった斬るだろう」
「シド?何を言って?……んぁっ」
「ぼら。俺を受け入れてくれ」
 熱く硬いものが僕の中に挿入ってくる。ゆっくりとでも確実に己を主張しながら。
「ぁっ!……シドっ……んぁああ」

「俺がもうお前しか抱けないってのがわかるまで離すつもりはないからな」
 凄い殺し文句だ。明日の朝まで僕は生きているかな?




「お、おはようございます」
「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね」
 僕は今エルシドに抱かれてソファに座っている。足腰に力が入らないからだ。
「ひゃい!」
 まさか昨夜の僕の声聞こえた?エルシドが部屋に防音魔法をかけておいたって言ってたけど、大きな声をだしちゃった気もするし。クラークさん眠れなかったのかな?

「ほっほ。そうでしたか。それはよろしゅうございました」
「あ、あの。クラークさんは眠れましたか?」
「はい。温泉はいい湯加減でしたし、ヤッキーたちとも仲良くなれましてね、お土産をもらいました」
「おみやげ?」

 部屋の隅に目をやると透明の石が沢山転がっていた。
「ほ~お。水晶の原石じゃねえか。これだけあれば魔道具がかなり作れるぞ」
 エルシドが口の端だけをあげてクラークさんを見た。クラークさんの趣味は魔道具作りだ。
「ええ。私が作ったパイと交換いたしました」
「凄いですね!どうやって交渉したんですか?ヤッキーと会話ができるんですか?」
「いえいえ。私に動物の言葉はわかりませんよ」
「だったらなぜ」

「普通に人の言葉で話しかけただけですよ。後はユキが何か言ってくれたみたいですが」
 クラークさんの肩でユキがすました顔でいる。これは、褒めてもらいたいときの顔だな。
「ユキ、ありがとう。手助けしてくれたんだね。ユキは凄いね」

「ピィ!」

 ぱたぱたと僕の元まで飛んでくるとエルシドの頭の上にとまる。
「おい、俺になにか文句でも……ぁいててて」
 つんつんつんとエルシドの頭をくちばしでつつきまくる。
「わかった。わかったってば。昨夜はヤリすぎました。悪かったです!だがな、イブキをいじめたんじゃなくて可愛がっただけなんだぞ」

「ピィ?」

 ユキが僕を見てくる。本当か?といった感じだ。

「えっと、そ、そうかな?」

「まあ鳥にはちぃっとばかり、人間のいとなみが理解できないのかもしれないな」
「そんなことありませんよ。ユキ、腰が抜けるまで抱き続けるってのはヤリすぎで間違いないです。怒っても良いのですよ」
 クラークさんの言葉にユキが「ピィ」と返事をし、またエルシドをつつき回した。

「わかった。悪かったって。でも休暇の間ぐらい羽目をはずしてもいいじゃないか」
「そ、そうですね。休暇中だけなら」
 僕は恥ずかしくなってうつむいてしまう。

「はっはっは。仲睦まじきかな。ユキや。その辺でエルシド様を許してやってくださいな」

「ピィピ」
 
「さあ、朝ごはんにしましょうか」

 こうして休暇が終わるまで僕らはゆったりとした時間を過ごしたのだ。



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