【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
35 / 46

33 前途多難

しおりを挟む
「馬鹿な。私の服従コードが効いていないのか? 貴様が何かしたのだな?」
「そうだよ! 僕らは愛し合っているんだ!」
「愛だと? そんなもの不具合が起きる元になるだけだ。完璧なプログラムに無駄なものである」
「無駄じゃないよ。愛があるから人は生きていけるんだよ。貴方はなんのために生き続けているの?」
「私は……。この世界には私が必要だからだ。管理し統制をとり、秩序と……」
「そんなの人間でなくてもできるよね?」

「……無駄口ばかりほざく不穏分子め! 私が直接、成敗してくれる!」
 今のは言われたくないひとことだったのか。皇太子だったモノが僕に攻撃を仕掛けてきた。【ファイヤー】コードで炎の竜巻を僕に向け放つと、それを僕が【コード・ゼロ】で無効化する。隙を見ては腕が伸び、僕を殴ろうと襲い掛かってきた。
「させるか!」
 シュラウドが魔剣を振り下ろすと、今度は腕がばっさりと落ちる。先ほどと違い、シュラウドの剣にキレがある。
「ぐぉっ。私の腕が! まだこの体に馴染んでおらぬか。急いで修復しなければ」
 片手で壁の一部に触れると【転送ワープ】コードを発動させ、皇太子もどきはどこかに転送されてしまった。

「逃げ足が早すぎるよね。あれだけ偉そうなことを言っていたのに」
「別なところで、問題がでたんじゃねえか」
「敵の戦力を削げるのなら僕は嬉しいけど」
「とにかくあいつは中央塔に行ったはずだ」
「俺もそう思う」
「僕もそう思うけど、なんでオリジンはそんなに詳しいのさ」
「移動しながら聞いてくれ。グレーシュが心配だからな」
「わかった」
 僕はまた、シュラウドに抱きあげられたまま俊足で移動している。違うのは僕の手にリードが握られ、その先にシュラウドの首輪があることだ。なんだか大型犬の飼い主になった気がする。オリジンはステルス型ドローンを上手に乗り回している。

「若気の至りってやつでさ。俺はここのメインコンピューターに、ハッキングしたときに罠にはまっちまったんだ」
「命知らずだね。こんな混沌とした巣窟みたいな場所をハックするなんて」
「うははは。ルーン、お前やっぱり、技術志向だろ? この仕事が終わったら俺と組まないか?」
「ルーンに手を出すな」
「おっと。冗談だって。それで、ハッキングしたときに、皇帝の秘密を知ってしまったってわけ。もっと探ろうとした時に皇太子にバレちまって、追跡型の罠を仕掛けられたんだ。それはハックした相手を逆探知し、その体にコードを刻みこむって物騒な罠でさ、俺はそのコードで要求されていたんだ」
「皇太子に要求されていたっていうことは、情報を流してたって事なの?」
「ちょっと違う。等価交換だよ。俺が何かをするためには対価が必要となる。【約束】という形でね。俺はノンコードだったから、トラップがうまく作動しなくて、服従にならなかったんだ」
「さっき、契約破棄って言っていたけど、何を契約していたのさ」
「まず、ハッキング時に、俺が得た情報は口外しないこと、それと怒るなよ。お前とシュラウドをここに連れてくることさ。そのかわりに俺の契約コードを解除するはずだった」
 それで約束にこだわっていたのか。でもいったいどうやって連絡を取ってたんだろう。

「よし、この先が中央塔のはずだぜ」
 リードを少し引いて、僕の魔力を流す。シュラウドの温かい魔力が返事をするように応じる。
「ルーン。迷惑をかけてすまない」
「何言ってるのさ。僕の方こそ、うまくコード・ゼロを使えなくてごめんなさい」
 僕が中央塔に行きたい理由は、シュラウドを助けたいだけじゃない。コード・ゼロを使いこなせる魔力の増幅の仕方を知りたいんだ。すべてのコードを書き換える力を使うと、今の僕の器ではすぐに魔力が尽きてしまう。でも僕の魔力が尽きるとシュラウドを危険にさらしてしまうのだ。

「ルーン、この先には、皇帝がいる。また今度俺が操られる時があれば、俺の命を奪ってくれ」
「何言い出すんだよ! シュラウドがいなくちゃこの世界を変えたって意味がないだろ!」
「ルーン」
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

貧乏貴族は婿入りしたい!

おもちDX
BL
貧乏貴族でオメガのジューノは、高位貴族への婿入りが決まって喜んでいた。それなのに、直前に現れたアルファによって同意もなく番(つがい)にされてしまう。 ジューノは憎き番に向かって叫ぶしかない。 「ふざけんなぁぁぁ!」 安定した生活を手に入れたかっただけの婿入りは、いったいどうなる!? 不器用騎士アルファ×貧乏オメガ 別サイトにて日間1位、週間2位を記録した作品。 ゆるっとファンタジーでオメガバースも独自の解釈を含みます。深く考えずに楽しんでいただけると幸いです。 表紙イラストはpome村さん(X @pomemura_)に描いていただきました。

あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~

竜鳴躍
BL
―政略結婚の相手から虐げられ続けた主人公は、ずっと見守ってくれていた騎士と…― アミュレット=バイス=クローバーは大国の間に挟まれた小国の第二王子。 オオバコ王国とスズナ王国との勢力の調整弁になっているため、オオバコ王国の王太子への嫁入りが幼い頃に決められ、護衛のシュナイダーとともにオオバコ王国の王城で暮らしていた。 クローバー王国の王族は、男子でも出産する能力があるためだ。 しかし、婚約相手は小国と侮り、幼く丸々としていたアミュレットの容姿を蔑み、アミュレットは虐げられ。 ついには、シュナイダーと逃亡する。 実は、アミュレットには不思議な力があり、シュナイダーの正体は…。 <年齢設定>※当初、一部間違っていたので修正済み(2023.8.14) アミュレット 8歳→16歳→18歳予定 シュナイダー/ハピネス/ルシェル 18歳→26歳→28歳予定 アクセル   10歳→18歳→20歳予定 ブレーキ   6歳→14歳→16歳予定

婚約破棄されるなり5秒で王子にプロポーズされて溺愛されてます!?

野良猫のらん
BL
侯爵家次男のヴァン・ミストラルは貴族界で出来損ない扱いされている。 なぜならば精霊の国エスプリヒ王国では、貴族は多くの精霊からの加護を得ているのが普通だからだ。 ところが、ヴァンは風の精霊の加護しか持っていない。 とうとうそれを理由にヴァンは婚約破棄されてしまった。 だがその場で王太子ギュスターヴが現れ、なんとヴァンに婚約を申し出たのだった。 なんで!? 初対面なんですけど!?!?

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。 

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。 侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。 母が亡くなるまでは。 母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。 すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。 実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。 2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

処理中です...