スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら

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安息

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 要さんとしょーちゃんのおかげで、恐怖はだいぶ薄まった。
 その日はおしゃべりで心をほぐし、お風呂で身体を温め、ベッドにもなるリビングのソファでゆっくり休ませてもらった。マットは本職のベッドほどの寝心地は得にくくも、起きたら身体中が軋んでいるなんてこともなく、借りた毛布はふわふわで、恐怖体験直後の割には悪夢を見ることもなく、深く眠れたように思う。
 次の日の学校にも影響はなかった。


 しかし、根本的な問題は解決していない。


 あの部屋に帰るのは考えられない。
 昼間に荷物を取りに入ることくらいはできそうだが、住み続けるとなると心が拒絶してしまう。

 要さんは、幽霊は存在せず、怪異は科学的、物理的ななんらかの事象の見間違い等、もしくは心理的な思い込みや気のせいで説明できるとしたら、実質瑕疵のない物件に格安で住めるのは得ではないか? と説いてくれたし私も頭では理解しているのだが、怖いものは怖い。

 これまで心霊現象なんて見たことはないし、信じてもいなかったけれど、それとこれとは話が違うと思う。

 怖いものは怖いのだ。

 そのようなことを言うと、要さんも少し諦めたような顔をして、「将来科学が発達して、幽霊や心霊現象に、気のせいや思い込みといった受け手側の人間によるものとする説明とは別の、霊や魂の存在をなんらかの形で証明できるようになる可能性はある。一方で、心霊現象が『存在しない』ことを証明することは不可能だから」と、現時点では理屈に合わない私の精神的な嫌悪に同調を示すようになっていた。

「元はと言えば、私が余計なことを言ったせいだし」

 家賃の安さについて言及をし、わざわざ不動産会社の営業担当に尋ねたことも後悔していて、申し訳なかったと私に謝った。

 結果住めない、と言うより住みたくなくなってしまったけれど、事実が知れたことは良かったと思っている。
 事実を知らないまま住み続ける方が嫌だった。

「そう言ってもらえると、私も気が楽になるよ」

 要さんは困ったように微笑んだ。

 要さんも霊などは信じていないが、それでも今は証明できない超常的ななにかがもしあったとして、私があの部屋の住人たちのような末路を辿る可能性があったのだとしたら、その可能性はやはり減らすに越したことはないと言う考えになっていった。


「とは言え、現実問題、家はどうにかしないとですよね」

 いつまでも間借りしているわけにはいかない。
 今の家に住み続けるという選択肢を自ら外してしまったのだから、自ずと引っ越しをするしかないのだが。

「そのことなんだけどさ。祥子とも話してて」


 要さんは、秘密の宝物を特別に見せてくれようとしている少年のような顔をしていた。


 

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