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しょーちゃんの策
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私が大きな声を出してしまったケースでは、ルールを破ったのはケージくんだが、うまく躱せなかったどころか、大きな声で場の空気を壊してしまった私の粗相になる。
しょーちゃんと要さんも、「誉ちゃんのこと気に入っちゃった? えー、私はー?」「エロおやじみたいなケージくん見たくなーい」って感じで窘めと固まった場の空気の回復を同時に計るフォローに入ってくれた。
ここで「ごめんなさい」と言ってしまうだけだと、また場が冷えてしまうし、ケージくんに居心地の悪い思いをさせてしまう。
以前しょーちゃんが言っていたキャラ付けと言う点で言うなら、私の場合は男性慣れしていなく真面目という属性が良いだろうか。実際それに近しいのだから素をそのまま出せば良い。
「ごめんなさい、あんまり慣れてなくって……」
謝りつつも、照れ笑いをしながら本音を一言加えただけで、場は和やかなものに戻っていった。
ルール違反、言い換えればシンプルにセクハラ。そのような行為にそこまで配慮すべきかと言う感覚はあるも、郷に入ってはと言う考え方もあるし、その辺りも込みでの高時給で、望んでその場に居るのだと再度意識をすることで、自分を強く保つことができた。
さて、耐性、適正と言う点で、この仕事のもつ属性やリスクを捉えた場合、どう評価できるだろう。
触られるのは嫌だ。けど、耐えられなかと言われれば、正直それほどでもない。
触れられて驚いたのは事実だが、事実として驚いただけ。嫌悪の感情に起因してはいない。
驚きが強くて感じる間もなかったのかもしれないが。
いずれにしても、ある程度躱せるスキルが身に付きさえすればどうにかなりそうだ。ジョーをはじめ、余程のお客様に対してはお店としても毅然と対応してくれるそうだし。
それに。
「でも、ふたを開けてみれば結果オーライというか。あれくらいはミスの内に入らないし、その後の祥子の提案が良かった。私久し振りに祥子の喋ってる内容に深くうなずいたわ」
「ひどくない? 私いつも結構いい感じのこと言ってると思うんだけどなぁ」
しょーちゃんは小籠包を破り、中のスープを餃子のたれを入れるような小皿に集め、付けダレのようにして小籠包に付けて食べている。
斬新なことしてるなぁ。小籠包の醍醐味失われていない?
そんなちょっと変わっているところもあるしょーちゃんだけど、私のこれからのバイト生活を、大きく助けることになるであろうことをしてくれた。
「ね、見たでしょ? これ、見たまんまだからね? 誉ちゃんかわいいでしょ? 男慣れしてない感じとか、初々しくない? ねぇ、せっかくだからさぁ、誉ちゃんのことみんなで育てるってことにしない? 年齢的にも未だお酒飲めないんだから、みんなでじっくり育てて、お酒飲める年になるまでに立派な『Three ducks』レイディーにしよーよ」
言いながらしょーちゃんはささっと作った水割りをかき混ぜ、たーくんに渡す。
「お! おもしろそーだなぁ」面白いこと好きそうなたーくんがすぐに乗ってきた。
この場のボスであるたーくんが乗れば、場としては凡そその方向で進む。ただ、感覚としてケージくんも含めた全員が、しょーちゃんの案を好意的に捉えてくれているようにみえた。
各テーブルを巡回していたママがテーブルに戻ってきたときにも、その話題になった。
「あらぁ、それは悪いわよ。あくまでも皆様『お客様』で、私たちはもてなしの『プロ』でなくてはならないのだから」
と言いつつ、ママはたーくんの、お店の「身内」であろうとする心をくすぐった。案の定、「そんなこと気にする間柄じゃないだろー」と笑うたーくんに、すぐに自分の意見を翻し「そういうことなら、甘えちゃおうかなぁ」なんて言っていた。
気を良くしたたーくんは、勉強のためにママをテーブルに残して、私を連れて他のテーブルにあいさつ回りしてきたいというしょーちゃんに、「おー、行って来い行ってこい」と鷹揚に笑っていた。
しょーちゃんに連れられてあいさつ回りをしてきた私は、しょーちゃんの紹介によって、このお店全体で育てる「アイドル的なもの」として認知されることとなった。
その日その場に居たお客様のみではあるが、ほとんどが常連客で、この設定はすぐに浸透するだろうとは要さんの見立てだ。
しょーちゃんと要さんも、「誉ちゃんのこと気に入っちゃった? えー、私はー?」「エロおやじみたいなケージくん見たくなーい」って感じで窘めと固まった場の空気の回復を同時に計るフォローに入ってくれた。
ここで「ごめんなさい」と言ってしまうだけだと、また場が冷えてしまうし、ケージくんに居心地の悪い思いをさせてしまう。
以前しょーちゃんが言っていたキャラ付けと言う点で言うなら、私の場合は男性慣れしていなく真面目という属性が良いだろうか。実際それに近しいのだから素をそのまま出せば良い。
「ごめんなさい、あんまり慣れてなくって……」
謝りつつも、照れ笑いをしながら本音を一言加えただけで、場は和やかなものに戻っていった。
ルール違反、言い換えればシンプルにセクハラ。そのような行為にそこまで配慮すべきかと言う感覚はあるも、郷に入ってはと言う考え方もあるし、その辺りも込みでの高時給で、望んでその場に居るのだと再度意識をすることで、自分を強く保つことができた。
さて、耐性、適正と言う点で、この仕事のもつ属性やリスクを捉えた場合、どう評価できるだろう。
触られるのは嫌だ。けど、耐えられなかと言われれば、正直それほどでもない。
触れられて驚いたのは事実だが、事実として驚いただけ。嫌悪の感情に起因してはいない。
驚きが強くて感じる間もなかったのかもしれないが。
いずれにしても、ある程度躱せるスキルが身に付きさえすればどうにかなりそうだ。ジョーをはじめ、余程のお客様に対してはお店としても毅然と対応してくれるそうだし。
それに。
「でも、ふたを開けてみれば結果オーライというか。あれくらいはミスの内に入らないし、その後の祥子の提案が良かった。私久し振りに祥子の喋ってる内容に深くうなずいたわ」
「ひどくない? 私いつも結構いい感じのこと言ってると思うんだけどなぁ」
しょーちゃんは小籠包を破り、中のスープを餃子のたれを入れるような小皿に集め、付けダレのようにして小籠包に付けて食べている。
斬新なことしてるなぁ。小籠包の醍醐味失われていない?
そんなちょっと変わっているところもあるしょーちゃんだけど、私のこれからのバイト生活を、大きく助けることになるであろうことをしてくれた。
「ね、見たでしょ? これ、見たまんまだからね? 誉ちゃんかわいいでしょ? 男慣れしてない感じとか、初々しくない? ねぇ、せっかくだからさぁ、誉ちゃんのことみんなで育てるってことにしない? 年齢的にも未だお酒飲めないんだから、みんなでじっくり育てて、お酒飲める年になるまでに立派な『Three ducks』レイディーにしよーよ」
言いながらしょーちゃんはささっと作った水割りをかき混ぜ、たーくんに渡す。
「お! おもしろそーだなぁ」面白いこと好きそうなたーくんがすぐに乗ってきた。
この場のボスであるたーくんが乗れば、場としては凡そその方向で進む。ただ、感覚としてケージくんも含めた全員が、しょーちゃんの案を好意的に捉えてくれているようにみえた。
各テーブルを巡回していたママがテーブルに戻ってきたときにも、その話題になった。
「あらぁ、それは悪いわよ。あくまでも皆様『お客様』で、私たちはもてなしの『プロ』でなくてはならないのだから」
と言いつつ、ママはたーくんの、お店の「身内」であろうとする心をくすぐった。案の定、「そんなこと気にする間柄じゃないだろー」と笑うたーくんに、すぐに自分の意見を翻し「そういうことなら、甘えちゃおうかなぁ」なんて言っていた。
気を良くしたたーくんは、勉強のためにママをテーブルに残して、私を連れて他のテーブルにあいさつ回りしてきたいというしょーちゃんに、「おー、行って来い行ってこい」と鷹揚に笑っていた。
しょーちゃんに連れられてあいさつ回りをしてきた私は、しょーちゃんの紹介によって、このお店全体で育てる「アイドル的なもの」として認知されることとなった。
その日その場に居たお客様のみではあるが、ほとんどが常連客で、この設定はすぐに浸透するだろうとは要さんの見立てだ。
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