83 / 197
ワッフルサンド
しおりを挟む(誉と希)
ワッフルサンドが食べたいというマレの希望を叶えるため西葛西に向かった。
私の家とマレの家の中間地点を集合場所にしていたので、そこから電車で一本、数分で着く。
渋谷にも専門店があるのでどちらが良いか尋ねたところ、移動時間が短い方が良いとのことだった。とにかくたくさん話したいらしい。
うん、いっぱい話そうね。マレ。
最寄りの駅からは数分掛からずに着けるそのお店は、店外におすすめやメニューの展示がたくさんあって、お店に入る前から「あ、これおいしそー」「これどんなんかなぁ?」なんて感じで盛り上がれて気分が上がった。
店内は落ち着いたカフェというよりは明るいケーキ屋さんみたいなイメージだ。
じっくり語らうというよりはにぎやかにおしゃべりするイメージだが、その明るさは今日の私たちにとっては良いもののように思えた。
ワッフルサンドを食べにきたのだが、ショーケースに並んでいるケーキを見ているとそちらも食べたくなる。
マレも色とりどりのケーキに目を輝かせている。気持ちも一層高揚しているようだった。
人気店なのでそれなりに混み合っていたが、待たされることなく席に通された。近くの席には四十代くらいの女性ふたり組と、私と同世代くらいの女性ふたり組。それぞれまあまあ通る声でおしゃべりに夢中だ。
騒がしさも、これくらいあった方が良い。
注文後程なくして営業されたのは、ワッフルサンドというよりはワッフルバーガーといった姿。
ふたりでシェアするからとフルサイズを頼んだら想像以上に大きくて、「食べきれるかなぁ」と困ったように言いながらも、マレは満面の笑顔で嬉しそうだった。
マレが嬉しそうだと私も嬉しい。
バレエダンサーは体重管理がかなり厳しい。
自ずと食事も厳しく管理される。
留学中は寮生活のマレは、完璧な食生活を得ていたはずだ。
欲のまま好きなものを好きなだけ食べてしまえば、その業の分だけあとで苦労するのは自分自身だ。
そこは気にしてあげるべきだと思うが、今日この場に関してで言えば、そういうのもすべて抜きにして、純粋に心を豊かにすることのみに特化して良いと思っていた。
今日はマレが溜めているものを、空っぽにするまで話すんだ。もしかしたら、数年分に及んで溜めたものを。
フルサイズのワッフルバーガーはかなりのボリュームだが、それでもその時間を埋めるパートナーとしては心許ない。
ほどほどのタイミングで、おなかに余裕があればパフェを追加しよう。
ここはフルーツを売りにしているから、フルーツも食べないともったいない。結構な金額になってしまいそうだが先日バイト先で大入り袋をもらえた。
中には一万円が入っていたから、それを使えば大丈夫。
1
あなたにおすすめの小説
スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
何かを諦めて。
代わりに得たもの。
色部誉にとってそれは、『サンバ』という音楽で使用する打楽器、『スルド』だった。
大学進学を機に入ったサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』で、入会早々に大きな企画を成功させた誉。
かつて、心血を注ぎ、寝食を忘れて取り組んでいたバレエの世界では、一度たりとも届くことのなかった栄光。
どれだけの人に支えられていても。
コンクールの舞台上ではひとり。
ひとりで戦い、他者を押し退け、限られた席に座る。
そのような世界には適性のなかった誉は、サンバの世界で知ることになる。
誉は多くの人に支えられていることを。
多くの人が、誉のやろうとしている企画を助けに来てくれた。
成功を収めた企画の発起人という栄誉を手に入れた誉。
誉の周りには、新たに人が集まってくる。
それは、誉の世界を広げるはずだ。
広がる世界が、良いか悪いかはともかくとして。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スルドの声(共鳴) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
日々を楽しく生きる。
望にとって、それはなによりも大切なこと。
大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。
それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。
向かうべき場所。
到着したい場所。
そこに向かって懸命に突き進んでいる者。
得るべきもの。
手に入れたいもの。
それに向かって必死に手を伸ばしている者。
全部自分の都合じゃん。
全部自分の欲得じゃん。
などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。
そういう対象がある者が羨ましかった。
望みを持たない望が、望みを得ていく物語。
スルドの声(共鳴2) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
何も持っていなかった。
夢も、目標も、目的も、志も。
柳沢望はそれで良いと思っていた。
人生は楽しむもの。
それは、何も持っていなくても、充分に得られるものだと思っていたし、事実楽しく生きてこられていた。
でも、熱中するものに出会ってしまった。
サンバで使う打楽器。
スルド。
重く低い音を打ち鳴らすその楽器が、望の日々に新たな彩りを与えた。
望は、かつて無かった、今は手元にある、やりたいことと、なんとなく見つけたなりたい自分。
それは、望みが持った初めての夢。
まだまだ小さな夢だけど、望はスルドと一緒に、その夢に向かってゆっくり歩き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
